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●創業以来、もっともエキサイティングな日
ソフトバンクグループの代表取締役社長である孫正義氏は7月18日、ロンドンで会見を開き、同日付で発表したARM買収に関する説明を行い、将来的にARMがグループの中核事業となるという展望を語った。

冒頭同氏は、「今回の買収の件は私が10年来考えてきた案件であり、いよいよその時がやってきた。ソフトバンクの創業以来、今日がもっともエキサイティングな日であると思っている」と、半導体分野への進出が長年の夢であったことを語ったほか、「その分野で世界一、これからの人類の歴史の中で、もっとも重要な産業となるであろう分野に戦略的な一手を打てた」と、今後の産業発展に半導体が重要であることを強調。半導体そのものも40年ほど前の1976年、ソフトバンク創業前の19歳の時、科学雑誌に載っていた半導体の回路図を見たとき、「両手両足の指がジーンと震えて、涙が止まらなくなった。感動する映画や音楽と聴いたときのような感覚がやってきた。なぜかというと、これはついに人類が自らの手で、人類の頭脳を超えるであろうものを生み出した。これが将来、もっと進化したときに、人類の未来に与える影響はいかばかりのものであろうかと。怖さと感激と興奮により、一瞬で涙が止まらなくなった」と初めて知った時を回顧する。

買収内容はすでに発表された通りであるが、買収に係る費用である約3.3兆円(約240億ポンド)は、基本的に手元と調達した資金による現金で、自社株式を用いた調達は一切行わない。また、取引条件としては1株当たり1700ペンスとなるが、ARM取締役会も全会一致でこれを指示し、株主へ推奨するとしている。

この買収スケジュールだが、買収にかかる書面の公表が今後数週間以内に実施され、その後の数週間で裁判所および株主の承認、ならびに各種の認可・承認申請がなされた後に完了となる予定で、孫氏によれば、「全体のプロセスは数カ月程度。半年や1年はかからない」という。

●半導体が支えるIoTへのパラダイムシフト
今回の会見で孫氏が繰り返し語っていたことが、ARMの技術がIoT時代のカギとなるものであり、現在がIoT時代に向けたパラダイムシフトのタイミングであるということ。「PCがインターネットにつながり、モバイルインターネットとなり、その次がIoT。すべてのものがインターネットにつながる。人類史上、もっとも大きなパラダイムシフトになると信じているからこそ投資を行う」。とはいえ、ARMの業績は現状、2016年第1四半期で3億9800万ドル、2015年通期で約15億ドル(約1800億円)であり、3兆3000億円という買収金額との差は大きい。この点について同氏は、「差が大きい、というのは過去の結果の数字と比べて見てであり、これから得られるARMの数字。5〜10年後を見れば、非常に安く買えたと理解してもらえると思う」と持論を披露。2020年にはARMのIP技術が適用されるチップの数は現状の4〜5倍に伸びるとみており、IoTの進展を背景にありとあらゆる機器が潜在市場になるとの見方を示した。

また、ARMがソフトバンクの傘下の非公開企業になることにより、ARMから離れる顧客がいるのではないか、という危惧については、「ソフトバンクは今まで半導体チップを買ってもいないし、使用してもいない。チップメーカーと競合するものではなく、完全な中立な立場だと思っている」と、ソフトバンクがARMに与える影響は基本的にないとするほか、「今回の買収により、上場廃止となるが、これにより、数年先に向けた開発投資を株主の意向を気にせずに積極的に行っていくことができるようになる」とし、今後5年間で英国における雇用を2倍に増やすほか、全世界の開発エンジニアの増員も進めていくことで、中立的な立場でチップメーカー、そしてそれを使う機器メーカーに向けて多くの新技術の提供に貢献していけるようになるとする。さらに経営陣についても、「優秀な人たちが揃っており、変える必要はないと思っており、今の経営陣に継続してもらいたい」という希望を示し、最終的には自身がどのようなポジションに落ち着くのかもまだ決定していないものの、少なくとも中長期的な戦略に関わってサポートをしていきたいと思っているとした。

今後、買収が完了すればARMは上場廃止となるが、1300を超す同社のパートナー企業は維持されることとなり、孫氏の言葉を借りれば、こうしたエコシステムを基盤に、中立性を維持しつつ、イノベーションへの投資をさらに加速していくこととなる。「ソフトバンクとARMは次にやってくるもっとも大きなパラダイムシフトに力を併せて挑戦していく」と同氏は力強く宣言しており、将来、ARMの半導体設計事業をソフトバンクグループの中核事業に育てていきたいという意気込みを示していた。

(小林行雄)