『脳外科医マーシュの告白』

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 イギリスを代表する脳神経外科医ヘンリー・マーシュが、自らの失敗も醜態もさらけ出し、赤裸々につづった『脳外科医マーシュの告白』が2016年6月25日(土)に発売された。医療現場の恐怖、いらだち、葛藤、志、夢、希望…。これまで誰も書けなかった「医師の本音」が詰まった傑作だ。

「自分自身の失敗について、ここまであからさまに語った作家を他に知らない。本書はあふれるまでの情熱に満ちた、とてつもなく率直な名作だ」

インデペンデント紙

「赤裸々! 痛快! 誰もが知っておくべき医療の真実」

作家・久坂部羊

「このような本をどうしてこれまで誰も記さなかったのだろう。驚くべき脳神経外科医のストーリーを、深い洞察と自己疑念をまじえ、きわめて繊細かつシンプルに語っていて、すばらしい作品だ」

オブザーバー紙

 イギリスで各賞を受賞し、世界18カ国で出版されたベストセラー。25の病状とその治療について医療現場に起こったことを、臨場感あふれる短編小説のような筆致で、鮮やかに描き出している。ここでは、世界が魅了された同書の魅力を詳しく紹介していこう。

マーシュの人間性 〜失敗も、醜態も、隠さず告白〜

「医療事故」「訴訟」のニュースが騒がしい昨今、医療者はミスを認めないのが「常識」だが、マーシュは違う。同書では、訳者が「ここまで正直になっていいものか、と読んでいて心配になった」ほど、過去の医療ミス、うまくいかなかった手術を赤裸々に告白している。

 そして、外科医は皆、心の中に「手術の失敗で、命を落とした患者さんたちの墓地」を持っていると、マーシュは語る。失敗を認め、謝罪しつつも、「医師はそうした経験を経て成長していかなければならない」のだとも。脳外科医は、スーパーマンでも、精密機械でもない。悩める一人の人間なのだと、改めて考えさせられる。

マーシュの文学性 〜マーシュならではの表現力〜

同書の魅力のひとつは、良質の短編集のような読み応えだ。25の章は、一章ごとに実際の症例や手術の様子、患者さんとの交流が描かれ、同時に医師としての胸の内も吐露される。各章ごとに独立した短編小説のような味わい深さ。作家イアン・マキューアンも「痛々しいまでに正直……傑作としか言いようがない」と推薦の言葉を寄せるほど。

マーシュの専門性 〜脳外科医ならではの手術シーン〜

さまざまな名場面のなかでも、手術シーンは、出色だ。

脳はゼリーのような物質でできているため、吸引器は脳神経外科医がよく使う器具のひとつだ。私は手術用顕微鏡をのぞき込み、白くやわらかい脳組織の深部へと吸引器をそろそろと下し、腫瘍を探しはじめる。いま、吸引器が思考そのもののなかへと分け入っていると思うと、実にふしぎな感じがする。感情、理性、記憶、夢、内省といったものがすべて、このゼリー状の物質でなりたっているのだから

本書より

 訳者も「マーシュ医師が脳の手術場面を描いたくだりは執刀医ならではの臨場感にあふれており、そこには、これまで文学作品ではあまり描かれてこなかった未知の宇宙が広がっている」と、その味わい深さを評している。

 ひとりの医師の回想を通して、脳神経外科という一般には想像しえない世界と、生死をめぐる深い洞察が伝わってくる。“医療ノンフィクション”という名にふさわしい一冊だ。

■『脳外科医マーシュの告白』

著:ヘンリー・マーシュ

翻訳:栗木さつき

発売日:2016年6月25日(土)

出版社:NHK出版

※掲載内容は変更になる場合があります。