満腹御礼 ご当地肉グルメの旅 今治が誇るファストフード「今治やきとり」と「せんざんき」

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全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。

今回は愛媛県今治市にやってきました。

今治といえば全国的に有名なのは、やはり「タオル」ですね。国内でのタオル生産量は全国1位。その品質の高さから、贈答品としても人気です。また、今治市は2005年の町村合併以降、国内最大の海事産業(海運業/造船業/舶用工業)都市としても、世界的に名を馳せています。

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“今治で働く人の多くがタオル産業か海事産業に携わっている”と言われるほど、この2つは今治市を支える大事な産業となっています。

JR今治駅。ファミリーに人気の「アンパンマン列車」の停車駅でもあります。 JR今治駅。ファミリーに人気の「アンパンマン列車」の停車駅でもあります。

駅中には名産のタオルが展示されていました。 駅中には名産のタオルが展示されていました。

ご当地キャラの「バリィさん」も人気です。 ご当地キャラの「バリィさん」も人気です。

そんな今治で最も愛されている肉料理は「やきとり」だとか。しかも、この今治では一風変わったやきとりがポピュラーだということです。一体どんなものなのでしょうか?

早速お店に向かってみましょう。今回お邪魔したのは、今治にたくさんあるやきとり店の中でも地元で評判の「まる屋」さんです。今治駅から少し歩いた住宅街にあります。

こちらがまる屋さん。オレンジ色の看板が目印です。 こちらがまる屋さん。オレンジ色の看板が目印です。

カウンターとテーブル席が設けられた店内。女性やお子様連れも大歓迎とのこと。 カウンターとテーブル席が設けられた店内。女性やお子様連れも大歓迎とのこと。

店内に入ると、明るい笑顔で「いらっしゃい」と店主の徳永圭子さんが迎えてくれました。今治やきとりに関して聞いてみましょう。

徳永さん「今治やきとりの特徴は、“串に刺さっていない”ということでしょうね。串に挿して炭火で焼くスタイルとは違い、『鉄板』で鶏肉を焼きます。このスタイルを考案したのは、同じ今治の『五味鳥』というやきとり店です。そのご主人が大阪に行った際に、鉄板でレンコンを焼いている様を見て思いついたと言われています。また、昔から造船業が盛んだった今治では、鉄板が身近にあって手に入りやすかったことも定着した理由でしょうね」

なるほど。しかし、なぜ鉄板で焼くやきとりがここまで定着したのでしょうか?

徳永さん「今治の人の多くは造船業やタオル産業に関わっています。職人気質でせっかちな方が多く、串に刺したやきとりを焼いていると時間がかかってしまい、中には怒ってしまう人もいました。それに比べて鉄板で焼くスタイルは素早く調理できて、入店したお客さんの元にすぐ料理を届けられるので、次第に人気が出て、定着していったんです。老舗と呼ばれるような店のなかには、入店してきたお客さんの人数を数え、注文される前にもう焼き始めて、お客さんが席に着き一息ついたらもう料理を出す、これぐらいでないと常連さんは満足しないという話もあるぐらいです」

そんなにせっかちな今治の人も満足するやきとりを注文してみましょう! 今回は、人気メニューのひとつ「皮ねぎ」を作ってもらいました。料理は息子の越智さんが担当しています。

鶏肉は愛媛県産のものを使用しています。皮といっても正肉も少し混ざっています。 鶏肉は愛媛県産のものを使用しています。皮といっても正肉も少し混ざっています。

油を敷いた熱した鉄板で焼いていきます。 油を敷いた熱した鉄板で焼いていきます。

越智さん「今治やきとりは、ただ鉄板で焼き続けるだけではないんです。“おもし”を肉の上に乗せ、鉄板に押しつけながら焼いていきます」

こちらが今治やきとりには欠かせないおもしです! こちらが今治やきとりには欠かせないおもしです!

越智さん「このおもしを乗せることで、肉に含まれる水分が蒸気となって吹き出し、“蒸し”の状態になります。さらに肉から出た脂で“揚げ”の状態にもなり、押し付ける圧力も加わってより早く火が通り、料理を手早く仕上げることができるんです。そして、全体を焼いて重しを乗せる工程を何度か繰り返すことによって、余分な脂が落ちてよりカリッと美味しく焼けます」

さらに壁面にも押し付け、余分な油を落とします。 さらに壁面にも押し付け、余分な油を落とします。

ネギもおもしを乗せてプレスしながら焼いていきます。 ネギもおもしを乗せてプレスしながら焼いていきます。

ネギと肉を合わせ、全体を炒めて塩コショウで味付けしていきます。 ネギと肉を合わせ、全体を炒めて塩コショウで味付けしていきます。

皮ネギ380円。

そして香ばしい匂いを漂わせながら「皮ネギ」が完成しました!

皮の部分は、余分な脂が抜けているのでカリッとした感触です。噛んでいると、だんだんと皮特有のプリッという食感も出てきて、ずっと噛んでいたい欲求に駆られます。これはお酒がよく進みそうですね! ネギの名脇役ぶりも見逃せません。香ばしく焼かれたネギと皮の相性は抜群で、ネギ特有の風味が皮の甘い脂の味をより引き立ててくれます。

ひと口食べればあと引くうまさ。 ひと口食べればあと引くうまさ。

やきとりといえば、味付は「タレ」と「塩」の2種類が一般的です。今治やきとりの多くの店では、「タレ」が一般的だそうです。ただし、焼くときにタレを絡めるのではなく、皿に盛り付けた後にタレを回しかけるのが今治流。まる屋さんでは、お客さんに味付けを選んで欲しいとのことからテーブルにタレの入ったボトルが置かれています。塩コショウ味のままでも十分おいしいですが、タレ味も箸が進みそうですね!

テーブル備え付けのタレをまわしかけます。 テーブル備え付けのタレをまわしかけます。

タレをかけると、がらりと味は変わりました。タレ自体は一般的なやきとりのタレより甘みが強い印象です。塩コショウ味のさっぱりから、コクの強いまろやかな味になりました。タレで照りが増したやきとりはビジュアルもいっそう魅力的になりますね。

タレ味を堪能したところでもう一品がやってきました。こちらも人気メニューのひとつ「せせり」です。

せせり380円。 せせり380円。

せせりは鶏の首の部分のお肉。他の店では細かく切られていること多いなか、まる屋さんでは切らずにそのままの形で焼いています。なかなかせせりの本当の形を見ることはないので、このビジュアルに驚きますね!

この特徴的な形はなかなか見ることができません。 この特徴的な形はなかなか見ることができません。

せせりの肉には、プリッと歯を押し返す弾力があります。脂も鶏もも肉より多いので、鶏の味もしっかり感じることができます。そして細かく切っていない分、食べていてとても満足感がありますね。

これだけおいしいせせりですが、一番人気が「皮」なのはなぜなのでしょうか?

徳永さん「昔は工場に屋根がないことも多かったので、悪天候になると早く仕事が終わることがありました。そうなると夕方前の早い時間から一杯、今治やきとりをつまみにお酒を飲むことが多かったんです。夕方前ということは、晩御飯前ですからあまりお腹にたまるものは食べたくない。そこであまりお腹にたまらず、酒との相性も良い『皮』が人気になったと言われています」

独特のスタイルの誕生も、人気のメニューも地元の産業と密接な関係にあったんですね。

そして、やきとりのシメとして食べられることが多い、もうひとつのご当地肉グルメも注文してみました。今治の多くのやきとり店で提供しているのが、この「せんざんき」です!

せんざんき500円。1辛(+50円)、2辛(+100円)、3辛(+150円)と辛さも選べます。 せんざんき500円。1辛(+50円)、2辛(+100円)、3辛(+150円)と辛さも選べます。

せんざんきとは「鶏のから揚げ」のこと。しかし、特定の部位だけではなく、鶏の様々な部位の肉を使って揚げた今治のご当地グルメのひとつです。骨付のまま揚げることも多いのですが、まる屋さんでは食べやすいようにと骨なしで揚げています。

サクサクに揚げられた、しっかりと下味の付いた大ぶりのお肉にかぶりつけばジューシーな肉汁が口の中いっぱいに広がりますね。「やきとり」からの「せんざんき」。同じ鶏肉料理でも、一緒に味わってさらにおいしいコンビでした!

まる屋の皆さん。左/店主の徳永圭子さん 中/越智 輝さん 右/越智さんの奥さんの恵さん まる屋の皆さん。左/店主の徳永圭子さん 中/越智 輝さん 右/越智さんの奥さんの恵さん

地元の産業と密接に関係して生まれた今治やきとりは、地元の人にいかにおいしいものを、早く届けるかということを考え発展してきた、地元愛にあふれた肉料理でした。

今治では8月6日・7日に「めちゃくちゃ、いっぱい、おもいっきり」という意味の言葉「おんまく」と名付けられた市民祭りが催され、7月30日には今治港に新しい交流施設、みなと交流センター「はーばりー」もオープンします。おいしいやきとりと楽しいイベント。夏の予定が決まっていなければ今治への旅も候補に入れてみてください!

それでは満腹御礼、今回もごちそうさまでした!

店舗情報

●まる屋
住所:愛媛県今治市旭町4-3-32
電話:0898-32-3638
営業時間:17:30〜23:00、日曜定休

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。