病気なの? 20〜30代の女性に多い「対人恐怖症」

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執筆:Mocosuku編集部
監修:坂本 忍(医学博士)


「人と会うのが怖い」「大勢の前で話すなんてとんでもない」……誰もが少なからず抱くこうした不安も、度が過ぎれば病的なものになります。うまく話せない、顔が赤くなる、手が震える、大量の汗、そして、「緊張している」という自覚がさらなる緊張を呼ぶ悪循環に。10人に1〜2人はかかるといわれる対人恐怖症について調べてみました。

20〜30代の女性に多い対人恐怖症

人前で話したり、電話に出たり、他人と食事をしたりといったコミュニケーションに対する恐怖を、多くの人が10代後半〜20代前半までに経験します。それが大きな悩みとなって、日常生活に支障をきたすようになる人は20〜30代に多く見られ、とくに女性は男性の2倍といわれています。
この年代は就職や、結婚、出産と、自分をとりまく環境が大きく変化することも一因と考えられます。

社会不安障害と呼ばれる病気

対人恐怖症は、治療の対象となる病気なのでしょうか?

以前は、気持ちの問題、性格の問題として片付けられる傾向がありましたが、現在ではれっきとした病気として治療を受けることができます。人と会ったり話したりすることへの不安や恐れは「社会不安」のひとつです。対人恐怖症は「社会不安障害」とも呼ばれています。

社会不安障害の治療には心理療法と薬物療法があります。

心理療法では呼吸法やリラクゼーションを学び、緊張状態への対処法を身につけます。また、認知行動療法は、実際に恐怖を抱く場面を想定し、自分自身の物事のとらえ方を見直して考え方と行動を変化させる心理療法です。

薬物療法に関しては、副作用をともなう薬もあるため慎重に検討すべきでしょう。
例えば、うつ病治療に用いられるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)には震え、動悸、緊張といった社会不安障害の症状を抑える効果が期待できる一方、胃腸障害、不眠・焦燥、性機能障害といった副作用を伴うリスクがあります。

ソーシャルスキルを訓練する

対人恐怖症の改善のために自分自身でできることがあります。対人恐怖症は心の問題ではありますが、ソーシャルスキル(社交術)を身につけることで緩和できます。

社交的に振舞うためには、必ずしも社交的な性格である必要はありません。社交的な振る舞いの基本は、ある程度技術的に身につくからです。そのために訓練を行います。

笑顔の練習


鏡に向かってさまざまな表情を作ってみましょう。緊張してこわばった表情も作ってみます。こういう顔をしていたら相手も気まずいだろうな、と思うかもしれません。

次に、笑顔を作ります。最初は笑顔に自信が持てないかもしれませんが練習を続けます。そうしていると、他の人がどんな笑顔をしているのかが気になってきます。すると、他の人だってそんなにすごい笑顔をしてるわけではないことに気づき、すこし気持ちが楽になるかもしれません。

練習を続けていれば、いずれ自然に笑顔が出るようになるでしょう。

あいさつの練習


学校や職場で人と出会ったら、あいさつをしましょう。あいさつが大切ということは理解できていても、実行していないことは少なくありません。自信がなければ練習をします。
あいさつで相手との雰囲気が良くなることを経験できたら、あいさつすることへの恐怖はなくなっていくでしょう。


スポーツ選手はひとつの動作を何千回、何万回も練習し、本番で行うのは1回だけ、というのが当たり前です。笑顔やあいさつはスポーツではありません。しかし、それが苦手な人にとってはスポーツのように訓練する価値があります。

生活の中で不安を感じる機会は無数にある中、その内の何割かはただ練習が足りないだけかもしれないのです。


多くの人が対人恐怖症の傾向を持っています。強い不安や恐怖を感じる場面が予測できるときは、練習をしましょう。
自分ではどうしようもないときは医療機関を受診してください。対人恐怖症は病気として、治療の対象になります。


<参考>
対人恐怖症
http://www.fuanclinic.com/byouki/orange.htm