■連載/石黒謙吾のLOVEビール
〜語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話〜

 ビールが好き、もっと知りたい&楽しみたい。でも、マニア向けのものは結構、とは言っても当たり前の話は知ってる。そんな、粋でイケてるビールファンに贈る、なんでもありの読み物です。語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話をお楽しみください。


 これだけビールが好きと言い続け飲み続けているのでよく意外と言われるのだが、僕は「冷たい飲み物」をまったく飲まない、あ、ビールと、「酒後酒」である香ばしい麦焼酎を飲む時のチェイサーである炭酸以外ね。

 家の冷蔵庫にストックされている飲み物はビールと炭酸とヤクルト400だけ。コーヒーは通年ホットオンリーだし、お店では冷たいものをオーダーしない。カフェで水が出てくると氷を空いた皿に出したりすることも。

 最初は、「身体を冷やしたらいいことがひとつもない」という<健康オタク>的側面からそうしていたのだけど、長年続けていていろいろと気付きがあった。

 たまに、会合などでいきがかり上、冷たいものを飲まざるを得ないことがあると、<冷たいものを飲むと舌が麻痺して味覚が鈍る>ということを体感。料理サイドも飲み物サイドもせっかく美味しいものを口にしても、舌が麻痺したようでいまひとつの味に。

 という話しから翻って、<ビールも冷やし過ぎ注意!>と言いたい。

「やっぱビールはキンキンに冷えてないとね!」などという前時代的な発言を耳にすると、日本のビール民度は、まだまだ<戦後からの脱却>を果たしてないなと(笑)。

 僕が初めて「ぬるいビール」もいけるじゃないかと思ったのは27歳。初めての海外がフィリピンで、雑誌の仕事で1週間ほどいた。ここで毎日、「サンミゲル」を飲んでいたのだけど、地元の人は、ごく普通に、常温で飲んでいた(冷蔵庫がない家もあったりもしたしね)。最初は<まずい>と思ったけど、これが不思議にだんだんと慣れてくるというか、<お! 意外といけるじゃない!>となってくる。人間、慣れに弱いものなのだ。だから逆から見れば、<ビールは冷えるもの>とすり込まれていて、そう慣れているだけとも言える。

 僕はその後、ベルギービールに本格的にハマり、ビールの味わいによって、適切な温度があることを知っていく。長くなるので、著書『ベルギービール大全』から記事を特別に転載。

●ビールの色と適温について

ビールの色と適温について

 これはあくまで目安だが、基本はこのように、<色とボディ>を基準に考えればいい。たとえば、<濃い色のスタウトはぬるくても美味しそう>とか考えればわかりやすいだろう。逆に、アサヒスパードライなどは冷やさないと、というのも想像できるかと。

 共著者の三輪一記さんとこの本を書いたのが10年前。そして、その後、さらに、僕なりに<飲み勉強>しつつ、温度については考えることも多くなった。

 という流れもありつつ、今ここに、高らかに提言する!

「苦いビールはぬるめで! 常温でもオッケー」

 そしてまたまた造語として、甘党ならぬ「苦党」(にがとう)! ホッピーなビール大好きな人たちはこう自称しようじゃないか。ちなみに僕は、ビール以外でも、ピーマンもゴーヤもセロリもカカオも大好き。苦党への入党資格はじゅうぶんかと。

 苦いビールと書いたけど、甘味が強いものも、酸味が強いもの、どれもぬるくて美味しいと思う。ぬる党の僕は特殊かもしれないが、最近は、カインズの「黄金」などライト系も常温でおいしくなってきた。

 みなさんも、少しずつ、ぬるいビールに慣れていって、より、その銘柄の味わいの微妙な美味しさを感知していってほしい。それが日本のビール民度アップにつながるはず。

 今回、ぬるめについて書きたくなったのは、以下のビールを常温で飲んでみたら、かなりよかったから。常温は一般的には誰もやらないだろうけど(笑)、冷やしすぎないということはぜひ実践してほしい。たとえば、冷蔵庫から出してしばらくしてから開けるとか、野菜室に入れるようにするなど。

 僕としては、小さなビール専用冷蔵庫をいくつか購入して、それぞれで温度を分けて適応した銘柄を入れておくのが夢。その前に置けるスペースの問題だが……。

 では、今回のインプレッションに。

連載15回の記事『ビール民度アップへの入口として注目!「メジャー系クラフト」とは?』で紹介したのがこれ。

●「サントリー クラフトセレクト」シリーズ

 その第二弾が2種登場したので飲んでみた。

サントリー 香り彩るビール セゾン

■サントリー 香り彩るビール セゾン
(度数5.5% 350ml)

サブタイトル的コピーに<トロピカル香るセゾン>と。たしかに、ファーストインプレッションはひとことで「華やか!」。フルーティでさわやかなアロマの強さは特筆もの。ベルギービールにおけるセゾンという印象で口にしたが、もっとライトで、メジャー系のピルスナーに慣れた人でも入りやすいスムースな飲み口。セゾンは農作業中の飲み物というイメージから離れた<都会のセゾン>という印象。

サントリー 香り彩るビール ビターエール

■サントリー 香り彩るビール ビターエール
(度数5.5% 350ml)

こちらのコピーは<キリッと清々しく香るビターエール>ときて、なるほどの苦味。僕のような苦党にはやや物足りなく感じるが、こちらも、メジャー系に慣れている、苦党入党用にはちょうどいいところ。ボディはミディアム。最初、飲んでいてぬるくなるとホッピーさが立ってきたので、ならばと、2回目は常温でいったらかなりいい感じだった!

★今日のビール川柳★
舌肥えて ビールは温度に だまされず

文・写真/石黒謙吾(いしぐろ・けんご)

著述家・編集者・分類王。日本ビアジャーナリスト協会・副会長、日本ベルギービールプロフェッショナル協会・理事。映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』はじめ、『2択思考』『図解でユカイ』『ダジャレヌーヴォー』『エア新書』『分類脳で地アタマが良くなる』『ベルギービール大全』など幅広いジャンルで著書多数。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『読む餃子』(パラダイス山元)など200冊以上。twitter: @ishiguro_kengo、facebook:石黒謙吾、blog:イシブログケンゴ

■連載/石黒謙吾のLOVEビール
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