『いつもうっすら黒歴史』(お肉おいしい/KADOKAWA)

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 友情、恋愛、部活、そして勉強。高校生活とはそういうものだと決めつけてはいないだろうか。ほぼ友達ができず、共学なのに男子とも接点なし。修学旅行のときは独り図書室通い。そんな「孤独感たっぷりの高校生活だって立派な青春だ」と教えてくれるのは、『いつもうっすら黒歴史』(お肉おいしい/KADOKAWA)だ。

 ちょっと変わったペンネームの著者の実体験を漫画と告白文で綴った、青春ノスタルジーコミックエッセイ。本書は、自虐的に語られながらも、それが自分の生き方だと著者は主張する。

■ブラックではなかった「黒歴史」

 高校生は、とかく群れを作りたがる。とくに女子は、グループで行動することで存在感と安心感を得ているようだ。グループの性格の違いから階級が生まれ、それがスクールカーストに発展するという。そして、カーストの底からも外れた自分は、疎外感に包まれる。

学校に居場所がない高校生は、大人が思っているよりもつらい思いをしていると思う(いじめられているわけじゃなくても)。

 閉塞感にさいなまれた著者は、その経験を「黒歴史」と表現するが、誰かをいじめたわけでもなく、刑事事件を起こしたのでもない。だから、「黒歴史」かもしれないが、決して「ブラック」ではないのだ。

■変わろうとしたが、自分は自分だと気がついた

 これではいけない、「自分を変えたい」と思って努力をしてみるものの、自分に合わない行動は、体が拒否反応を示す。朝は起きられず、教室にいると涙が出てくる。

 母親のすすめで、1週間学校を休んだことがきっかけで、「子供の時から自分は絵をかくのが好きだ」という原点に気づく。漫画家になりたい……。

 やっぱり自分そのままを愛されたいから、変わる必要もないと自分を取り戻した著者は、「学校の外に世界をつくる」ことにした。ありあまる時間で本を読み、インターネットに浸っていく。

 こうしてなんとか卒業して、東京の美大に進学した著者。やがて、漫画家になる夢は結実する。

■「話しかけるなオーラ」は自分が出していたことに気づく

 教室でお弁当を食べていると、クラスメイトの話声が聞こえてきた。

お肉さんてホント話しかけるなオーラ出てるよねー

 自分では出しているつもりはなかったが、周りの人はそう感じていたそうなのだ。卒業文集のアンケートの「ミステリアスな人」でも、40人いるクラスで31票を獲得して堂々の1位に…。著者が後にわかったのは、人に迷惑をかけることを恐れ、いつも人の顔色を窺ってばかりいた自分がいたということ。

 著者は、孤独の時間に本を読み、絵や文章を書き、インターネットに触れていた時間が、結果、漫画家になるのには必要だった。自分にとって普通の人生とは何なのかを考えさせられる1冊だ。

文=吉田裕美