シングルファーザーの高校教師、公平と5歳の一人娘のつむぎ、そして女子高生の小鳥の3人がおいしい料理を作ってハフハフ食べるアニメ『甘々と稲妻』。先週放送の第2話「豚汁とみせあかり」を振り返ってみよう。


料理が苦手で、つむぎにおいしい料理を食べさせてあげられないことを気にしている公平。それでも今朝はロールパンにハムを挟んだり、目玉焼きを作ったりと奮闘中。つるっとハムだけ食べてみたり、目玉焼きにがっついたりと、つむぎの食べっぷりはジブリ感ある。

公平も冷凍食品ばかりだったお弁当に焼いたウィンナーを入れてみたりしてがんばってみた。料理ができる人からすれば「それだけかよ!」とツッコミを入れてみたくなるかもしれないが、まずはやってみることが重要なんですよ。

公平は教え子の小鳥から「私と、ご飯を作って食べませんか?」と切り出されて困惑中だったが、結局、つむぎと一緒に足を運んで食事を作ることにする。「つむぎ、それしたいなー!」「ねー!」と2人並んで可愛い顔を見せる小鳥は卑怯(だがすばらしい)だが、やっぱり父というのは子が喜ぶ顔を見せてくれるなら何だってしてしまうものなのです。

今夜のメニューは豚汁。最初は、豚汁とハンバーグとサラダとマッシュポテトを作ろうとしていたのだが、「食べ切れますかね?」と疑念を抱く公平に、小鳥は愕然。小鳥は胃袋ブラックホールガールなのだ。

下ごしらえに悪戦苦闘する公平。しかし、ここで意外なことが発覚する。なんと、小鳥は包丁が握れなかった! 料理研究家の母が不在がちの中、なんとか店(料理屋「恵」)のあかりを消したくないという気持ちで公平に声をかけていたのだ。

だが、公平はそれで気が楽になった様子。公平は公平で、つむぎに美味しいものを食べさせたいという一心で教え子の家庭に上がり込むことに罪悪感を持っていたからだ。利害がぴったり一致して笑顔になるのは、なんだか理系人間! って感じ。

結局、ハンバーグは時間切れで作れず、豚汁と白いごはんでいただきます! 食べたいときが美味しいとき。つむぎが豚汁をちゅるるっと啜って、ふはぁっと小さく息を吐きながら「おいひい……」とつぶやき、それを見た公平が、びくっとのけぞって、顔を赤らめながら「なんか、めちゃくちゃうれしいですね……」と声を漏らすのが今回のクライマックス。

つむぎの動きや声、公平のリアクションなど、このアニメ、なんだかすごくタイミングが良い。つむぎのシズル感や吐息とかもほんとに聞きやすいし、おいしそう。音響監督、さすがの仕事っぷりです。

幸福を開くパスワードは平凡なメニュー


公平が苦労して朝食を作っているシーンを見て、1979年の映画『クレイマー、クレイマー』を思い出した。ダスティン・ホフマン扮する父親が、息子のために朝食のフレンチトーストを慣れない手つきで作ろうとして黒こげにしてしまうシーンは、映画史に残る名シーンの一つだ。この映画はこの年のアカデミー賞作品賞を受賞している。ちなみに気になって調べてみたところ、『クレイマー、クレイマー』に登場する息子のビリーはつむぎと同じ5歳だった。

今回、父親が子どもに作ろうとしたのは朝食の目玉焼きと、晩ご飯の豚汁。目玉焼きは失敗したし、豚汁はおいしかったけど、本当は子どもが大好きなハンバーグも作りたかった。でも、大切なのはごはんを作る過程であったり、待ちながらかぐごはんの匂いだったりするわけで、たしかにおいしいに越したことはないけれど、スペシャルなレシピであったり、特別なメニューである必要はないわけだ。

みみめめMIMIの主題歌「晴レ晴レファンファーレ」の歌詞にあるとおり、「幸福を開くパスワードは 案外ほらね 隣り合わせの 平凡かも」ということなんだろう。ちなみに作詞を担当したユカは、この詞を書くとき父親に電話していろいろな話を聞いたのだとか。

つむぎにしてみれば、父親がじゅうじゅう焼いてくれるウィンナーの匂いが嬉しいわけで。それは『クレイマー、クレイマー』のフレンチトーストとまったく同じ。『甘々と稲妻』の登場人物たちは、ごはんを「作る」と必ず言っている。このアニメは「食べる」というより「作る」お話だということだ。

さて、今夜放送の第3話は「つむぎとおまたせのハンバーグ」。つむぎが絵に描いてまで待っていた待望のハンバーグ! 夜食の準備をしてオンエアを待ちましょう。
(大山くまお)