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タクシーの初乗り運賃をめぐり、国が上限と下限を定めた「公定幅運賃」は違法だとして、大阪のタクシー会社が、国に運賃変更命令などの行政処分をおこなわないよう求めた訴訟で、国側敗訴とした高裁判決がこのほど確定した。

国は2014年、タクシー業者間の過当競争を避けるため、地域ごとに「公定幅運賃」を導入。これに従わない業者には、運賃変更命令などを出せるようにしていた。原告の「寿タクシー」(大阪府)の営業区域では、中型車の公定幅運賃が「660〜680円」に設定されていたが、報道によると、同社は下限よりも安い初乗り510円で営業していた。

大阪高裁は6月中旬、「従来の制度で認可されていた事業者の経営実態を考慮せず、国が下限額を設定したのは裁量権の逸脱にあたる」という判断を示した。国と会社の双方が期限の7月1日までに上告しなかったため、国側の敗訴が確定した。

同じような訴訟は、大阪や福岡などで全国で6件あり、寿タクシーの一審をふくむ3件の地裁判決で国側が敗訴していた。どうして、このような状況になっているのだろうか。そして、規制はどうあるべきなのか。行政訴訟にくわしい湯川二朗弁護士に聞いた。

●「きわめて当たり前のことが判断されたにすぎない」

「公定幅運賃制度とは、たとえば、中型車の初乗り運賃『660円〜680円』と指定されると、タクシー業者はその範囲内の運賃でないと営業できないという制度です。

公定幅運賃が導入される前は、一定の範囲内の運賃であれば、自動的に運賃が認可されました。また、その範囲を下回っていても、運輸局長の審査を受ければ、運賃認可がされるという制度が運用されていました(自動認可運賃)」

今回の判決は、どういうものだったのだろうか。

「寿タクシーの場合、自動認可運賃の下で、一定の範囲を下回るワンコイン、つまり、初乗り『500円』で認可されていました。ところが、公定幅運賃制度の下では、それまで営業できていたのに、営業できなくなってしまします。

判決は、この点をとらえて、その地域にこれまで下限割れ運賃で営業していたタクシー業者がある場合、その運賃や経営実態なども考慮して、公定幅運賃を定めるべきだったのに国は怠ったというロジックを示しました。

ですから、寿タクシーの事件でも、別の格安タクシー会社『ワンコインドーム』(大阪)の事件でも、判決で、公定幅運賃制度が憲法違反かどうかということや、初乗り運賃『660円〜680円』と定めることなど、特定の地域について公定幅運賃を定めることが否定されたわけではありません。

『その業者がこれまで適法に認可を受けて営業をしていたのに、たまたまできなくなるのはおかしい』という、きわめて当たり前のことが判断されたにすぎません。

その意味で、どうして国はここまで裁判を争うのか、業者いじめではないか、というのが、国側敗訴の理由でしょう」

●「昔ながらの規制手法しかないというのはおかしい」

国土交通省は、大阪や京都など全国11地域で、運賃の下限を引き下げる方針を示している。今後、国の規制はどうあるべきだろうか。

「消費者の立場からすると、タクシー運賃は安いほうがありがたいです。

しかし、運賃を安くした結果、運転者が過労に陥ったり、安全問題が生じたり、悪質・劣悪な業者が出てくるのでは困ります。

問われているのは、消費者の利便や業者の利益、運転者の労働安全衛生、交通の安全などの調整をどう図るかということです。

『国が決める公定幅運賃の幅でなければ営業を認めない』という、昔ながらの規制手法しかないというのはおかしいと思います。

もっと、ウインウインの目的達成手段があるのではないか−−。役所も、議員も、タクシー業界も、消費者も一緒になって、その手段を探っていくべきだと思います」

湯川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
湯川 二朗(ゆかわ・じろう)弁護士
京都出身。東京で弁護士を開業した後、福井に移り、さらに京都に戻って地元で弁護士をやっています。土地区画整理法、廃棄物処理法関係等行政訴訟を多く扱っています。全国各地からご相談ご依頼を受けて、県外に行くことが多いです。
事務所名:湯川法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/kyoto/a_26100/g_26104/l_123648/