関連画像

写真拡大

掲示板に源氏名で悪口を書かれた!名誉毀損で訴えることはできますかーー。夜のお店で働いているという女性から、そんな質問が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。

投稿者によると、掲示板に源氏名で「ホスト狂い」などとウソを書かれたり、「胸だけあってよかったな」「馬面」と悪口を書かれることがあるそうです。投稿者は、「これは中傷にあたるのでしょうか?」と質問しています。

本名ではなく、水商売の「源氏名」で誹謗中傷を受けた場合でも、投稿者に対して何らかの責任を問うことはできるのでしょうか? 石井邦尚弁護士に聞きました。

 ●源氏名への誹謗中傷でも「名誉毀損」は成立しうる

ネット上の誹謗中傷等については、名誉毀損やプライバシー侵害、名誉感情侵害などの不法行為に基づく損害賠償や投稿削除などが問題となります。ここでは、民事上の問題に限定して説明します。

「源氏名」への誹謗中傷の場合、その源氏名から、本人が特定できるかどうかが問題です。一般的によくあるような源氏名で、具体的に誰のことを指しているのかわからないような投稿では、名誉毀損などは成立しません。

ただし、注意しなければならないのは、本人の実名などが特定できる必要はないことです。よくある源氏名であっても、例えば、「〜〜にある◯◯という店の▲▲さん」とお店が特定されれば、▲▲さん本人が特定されたと言えます。▲▲さんの実名がわからなくても構わないのです。このような場合、名誉毀損などが成立する可能性があります。

お店が特定されているなど、誰でも本人を特定できると言えるような場合はよいのですが、そうでない場合、どのような状況であれば本人が特定されていると言えるかどうかの判断は、簡単ではありません。

 ●一般人すべてが本人を特定できる必要はない

これについて、参考となる有名な判例として、「石に泳ぐ魚」という小説の中に描かれた作家と知人との交友関係などの記載について、その知人に対する名誉毀損やプライバシー侵害などが問題となった事案があります。

この事案では、小説の登場人物に実名は用いられておらず、また、その知人は著名人ではなく一般人でした。したがって、読者の多くは、その小説を読んでも、その知人を特定することはできません。しかし、判決では、小説の登場人物とその知人との属性を比較した上で、知人と面識がある人(日常的に接する人々だけでなく、幼いころからの知人らも含めて)は登場人物からその知人を特定できる(判決では「同定する」という表現が用いられています)とされました。

この判決を踏まえれば、源氏名への誹謗中傷の場合も、それを読んだ一般の人すべてが本人を特定できる必要はなく、もっと狭い範囲の人々が本人を特定できる場合でも、名誉毀損などは成立し得るといえます。

具体的にどの程度ならば特定できると言えるかは、ケースバイケースで判断するしかありませんが、例えば、源氏名への誹謗中傷と、店内の写真が一緒に掲載されていて、そのお店の常連であればすぐにお店を特定できる場合などは、お店の名前などを記載していなくても、その源氏名の本人を「特定できる」と評価される可能性が高いと思われます。

源氏名のように、本人の実名でない場合、誹謗中傷などの投稿をする人も、つい気が緩んで、過激なことを書いてしまうこともあるかもしれません。しかし、それにより法的な責任を負う可能性があること、そして何よりも相手を深く傷つけているかもしれないということを十分に考えて欲しいと思います。



【取材協力弁護士】
石井 邦尚(いしい・くにひさ)弁護士
1972年生まれ。専門は企業法務。小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられず、IT好きがこうじて、IT関連の法務を特に専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。東京大学法学部卒、コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒。ブログ「企業法務の基本形!IT法務の未来形!!」
事務所名:カクイ法律事務所
事務所URL:http://www.kakuilaw.jp