アダルト動画“募金”サイトも登場した今、ビッグデータから見る“アノ行為”

 人間とは、徒労の情熱である--。20世紀を代表するフランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルの言葉だ。サルトルに倣えば無駄な努力をするのは人間の本質でもあるということになるが、その中でも群を抜いて実益がなく、時には後悔すら抱いてしまう行為が“アレ”ではないだろうか。

■ソノ行為が社会の役に立つ!? アダルト動画“募金”サイト

 有意義に過ごすはずだった時間が、一時の気の迷いでついつい“熱中”してしまい、貴重な時間を失うことに加えて体力まで消耗し後悔することしきりの体験を、きっと多くの人が味わっているのではないだろうか。そう、マスターベーションだ。

 しでかしてしまった以上は取り返しのつかないこの不毛な行為が、せめて人の役に立つのならば後悔も徒労感も薄めることができるのかもしれない。そこでアダルト系コンテンツを閲覧することで簡単に募金ができるという、まったく新しいアダルト動画サイト「IJustCame.org」が6月初旬から立ち上げられている。確かに、アダルト動画を閲覧して行為に及んでも、それが僅かでも人の役に立つとなれば、虚しさは多少は和らぐのかもしれない。

「IJustCame.org」はスタンフォード大学を卒業したアダム・リー氏とジェイムス・クック氏によって考案された。システム面では“募金”は1日2回に制限(つまり動画観賞は1日2回まで)されており、その日最初の動画を観賞後、15分間以上経過しないと次の動画は観賞できないようになっているという。アダルト動画サイトではあるものの、ポルノの見すぎを抑制する工夫が凝らされているのである。

 寄付された募金(1ドル程度の小額募金のようだ)は、3分割されて3つのチャリティ組織へと届けられるという。その3つの団体は、前立腺がんと精巣がんの研究を推進する組織「Movember Foundation」、同じく子宮がんの研究推進・チャリティ組織「Ovarian Cancer Research Fund」、そして性的暴行による犠牲者を支援する組織「Joyful Heart Foundation」である。

アダルト動画“募金”サイトも登場した今、ビッグデータから見る“アノ行為”
Huffington Post」より

 これまでにも、リー氏とクック氏はインターネットビジネスを立ち上げようと何度も話し合いを続けてきたという。今回の案の前には、ひとりでランチを食べたくない人のために、ランチを一緒に食べる目的だけの出会い系サイトを考えていたらしい。しかし、この“チャリティアダルトサイト”のほうが見込みがあると2人は判断し、ひとまず「IJustCame.org」に集中して今回サービス開始に漕ぎつけたということだ。

 なかなか面白いアイディアで運営を開始したアダルト“募金”サイトだが、前途洋々というわけではないようだ。チャリティ先になっている3団体にしても、アダルトサイトからの募金提供を必ずしても歓迎しているわけでないようで、「Huffington Post」の記者が問い合わせたところ今のところ「IJustCame.org」に対する立場を明確にはしていないようだ。またミシガン州の投資コンサルタント、マイケル・モントゴメリー氏もまたこのサイトの活動には疑問を呈している。つまりサイト利用者にとっては、それがコンテンツ料金なのか募金なのかはわかりにくいため、最初のうちはともかく次第に信用が揺らいでくるのではないかということだ。確かによくよく考えると“誰得”なのかわからなくなってきそうでもある。

 はたしてスタンフォード大卒の英才2人が考えたこの試みはうまくいくのだろうか。昨今はアメリカやイギリスでもアダルトサイトへの規制が強まっているという話を聞くが、このように自由な発想でITビジネスに参入できること自体は肯定的に受け止めるべきではないだろうか。

■ビッグデータで見る好みのアダルト動画

 ではアダルト動画サイトなどで、人々はいったいどんな動画を好んで見ているのか? これに関する2015年に収集されたビッグデータ分析がYouTubeチャンネル「BuzzFeedYellow」の動画で紹介されている。

 なんといってもまず驚きなのは、1年間に人気どころのアダルトサイトへ、212億ものアクセスがあったということだ。これはネットにアクセス可能な人が平均して年に12回、アダルトサイトを訪れて動画を閲覧したことになるという。そしてアダルトサイト訪問者の24%は女性で、世界的な傾向として女性が見ているアダルト動画の主要ジャンルは、

・レズビアン
・男性同士のゲイ
・巨根

 であるということだ。一方、男性の世界的な好みのジャンルは、

・10代
・巨根
・黒人

 である。年齢層別では、やはり若い18〜24歳がもっとも多く31.3%で、25〜34歳と35〜54歳は同じでそれぞれ28.2%ということだ。つまり幅広く18歳から50代半ばまでにとって、アダルトサイトはメジャーな娯楽コンテンツなのである。

アダルト動画“募金”サイトも登場した今、ビッグデータから見る“アノ行為”
「BuzzFeedYellow」より

◎動画はコチラ

 さらに以下が、年齢層別の人気ジャンルだ。

※18〜34歳
・レズビアン
・10代
・義母

※35〜44歳
・黒人
・レズビアン
・人妻熟女

※55〜64歳
・人妻熟女
・マッサージ物
・黒人

※65歳以上
・義母と息子
・おばさん
・マッサージ物

 続いて、国別の好みも浮き彫りになっている。

※アメリカ
・義母
・2次元
・レズビアン

※イギリス
・レズビアン
・潮吹き
・義母

※インド
・インド人
・兄の嫁
・インド人女優

 意外やグローバルな好みとしては、義母や熟女などの成熟した女性の人気が高そうである。一方でもし日本のデータがあるとすれば、やはり2次元や若年女性の人気が高いのかもしれない。

■“オナ禁”主義者が増加中!?

 ネットの普及でアダルトコンテンツが格段に身近になったこともあり、現代に生きる我々はついついマスターベーションをしてしまう機会が増えているのかもしれない(!?)。

 時間が許す限りにおいてはセックスであれ、マスターベーションであれ、適度に楽しみたいと考える人は少なくないと思うが、昨今は単に宗教上の理由からなどではなく、マスターベーションを忌避する動きもあるようだ。いわゆる“オナ禁”、英語では“Nofap”と呼ばれるムーブメントだ。

 2011年にウェブ開発者、アレクサンダー・ロードス氏によって提唱された“Nofap”は、自慰行為を謹慎する主義である。きっかけとなったのはアメリカ国立衛生研究所が行なった研究で、男性が7日間マスターベーションを自慰行為を慎むと、テストステロンのレベルが45.7%上昇すると指摘されたことだ。

 それまでは1日に10回もマスターベーションをすることもあったというロードス氏だが、考えを改めて“オナ禁”をはじめてテストステロンのレベルがあがったことで、ウェブ開発の仕事で集中力が増して活力が生まれ、生産性が大幅に向上したということだ。このロードス氏の実体験に多くの人が賛同して彼に倣い「Nofap」が設立されたのである。最初の賛同者は50人ほどだったというが、今では15万7000人を抱える一大勢力(!?)となっている。ちなみにNofapの“fap”は男性のマスターベーションで鳴り響く音の擬音語である。

アダルト動画“募金”サイトも登場した今、ビッグデータから見る“アノ行為”
Upvoted」より

 まさに現代の“禁欲主義者”ともいえるNofapの面々だが、これに追い風となる研究もその後発表されることになった。2013年に発表されたケンブリッジ大学の研究で、ポルノ好きの脳の活動は、アルコール中毒や薬物依存症に近いものであることが指摘されたのだ。こうして“オナ禁派”がますます説得力を持ちはじめたのだ。

 しかしながら最新の研究では、男性の場合、定期的なマスターベーションが前立腺がんのリスクを低減しているという報告もある。またマスターベーションは女性の健康にとってもきわめて有効であるという研究も相次いで発表されている。

アダルト動画“募金”サイトも登場した今、ビッグデータから見る“アノ行為”
Metro」より

“オナ禁”がいいのか、それとも健康のために定期的なマスターベーションが欠かせないのか、議論が紛糾する事態を迎えているのかもしれないが、いずれにせよ極端に走ってしまっては事の本質を見誤うかもかもしれない。“オナ禁”側の言い分は、身体的、医学的なものというよりも、マスターベーション依存症からの脱却法という側面もありそうだ。主義主張と、医学的な健康法はあくまでも分けて考えなくてならないだろう。今後の研究と議論の深まりにも注目していきたい。

文/仲田しんじ

フリーライター。海外ニュースからゲーム情報、アダルトネタまで守備範囲は広い。つい放置しがちなツイッターは @nakata66shinji