やはり“家庭料理派”は健康だった!しかもパスタはダイエットの“敵”ではなかった!?

 食事後のドーナツやデザートは“別腹”という人も少なくないだろう。またハンバーガーやピザなど、ある程度カロリーが高いメニューでないと食べた気がしないという向きもいるだろう。そんな人々にとって朗報なのか悲報なのか、近い将来、高カロリー食品に対する食欲を簡単に抑制できる飲み薬が実現しそうなのだ。

■食欲を抑制し満腹感を早めるダイエット薬が登場

 インペリアル・カレッジ・ロンドンとグラスゴー大学の研究チームが開発したサプリメント剤「inulin-propionate ester」は、植物繊維の一種であるイヌリン(inulin)を原料にして作られたサプリメントで、服用すると腸内の大腸菌などからプロピオン酸を多量に分泌させる作用を持っている。

 では腸内でこのプロピオン酸が増えるとどうなるのか? 腸内でプロピオン酸が増えると、高カロリー食品に対する食欲が抑制されることが実験によって証明されたのである。

 プロピオン酸が増えるとどうして食欲が低下するのか、まだ詳しいメカニズムはわかっていないのだが、満腹感を感じる脳の部分にマイナスに作用して食欲が抑制されているのではないかということだ。もちろんイヌリンを直接摂取しても食欲を抑制する効果はあるのだが、それよりもこの新たに開発したinulin-propionate esterを服用したほうが、効き目が大きいことが実験でわかったのだ。

 実験は2種類行なわれた。まず最初の実験では参加者は、ミルクシェイクを2度飲むことになった。最初のミルクシェイクにはinulin-propionate esterが含まれており、一方にはイヌリンのみが含まれている。

 1杯のミルクシェイクを飲んだ後、参加者は脳の活動をMRIで計測されながら、さまざまな食べ物の写真を見せられた。結果は、inulin-propionate esterを摂取した状態では高カロリー食品の写真に対して食欲を司る脳の部分の活性が低くなったのである。つまり、inulin-propionate esterは単なるイヌリンよりも、食欲抑制効果が高いということになる。

やはり“家庭料理派”は健康だった!しかもパスタはダイエットの“敵”ではなかった!?
Gizmag」より

 続く実験では、再び同じ2つの条件下で、今度は実験参加者にミートソースのパスタを思う存分に食べてもらった。するとinulin-propionate esterを摂取したケースでは食べたパスタの量は約10%減少したということだ。inulin-propionate esterは食欲を抑制するだけでなく、早く満腹感を覚えるということにもなるのだ。

 1回の実験で使用したinulin-propionate esterは10グラムということだが、この量を服用することで腸内のプロピオン酸は2.5倍に増えたということだ。これと同じ効果を生むためには、単なるイヌリンを60グラム摂取しなければならない。ちなみにイギリス人の1日のイヌリン平均摂取量は15グラムに過ぎないという。

 また腸内細菌のプロピオン酸の生産量は個人差が大きく、このようなサプリメントを摂らずともプロピオン酸が多い人もいる。もちろんそうした人は比較的小食で痩身の傾向にある。まさに抗“食いしん坊”薬とも呼べそうなinulin-propionate esterだが、画期的なダイエット薬として近いうちに登場するのかどうか(一部から切実な!?)注目が集まっているようだ。

■“家庭料理派”は“外食派”よりも2型糖尿病のリスクが15%低い

 新開発のサプリメントで高カロリー、低栄養の“ジャンクフード”の誘惑を克服できるのだとすれば願ったり叶ったりだという向きも多そうだが、別の研究では外食(テイクアウト含む)のリスクがあらためて指摘されている。基本的に家で家庭料理を食べている人は、外食がメインの食生活の人よりも2型糖尿病になり難く痩身である傾向が最新の研究で浮き彫りになったのだ。

 米・ハーバード大学の研究チームが中年の男女10万人の日々の食事を記載した最大26年に及ぶビッグデータを分析して食事のスタイル、つまり“家庭料理派”であるか“外食派”であるかが健康に及ぼす影響を研究した。ちなみに調査対象の10万人は、調査開始時においては糖尿病の症状がない人々であったが、データをとり始めてから約9000人が糖尿病を発症している。

やはり“家庭料理派”は健康だった!しかもパスタはダイエットの“敵”ではなかった!?
Telegraph」より

 研究によれば、週に夕食を5〜7回家で食べる“家庭料理派”は、週に5日以上、夕食を外食で摂る“外食派”よりも2型糖尿病のリスクが15%低くなることが判明した。また“家庭料理派”は体重が平均より軽い傾向も明らかになったのだ。

「自分で食事を用意する人は食べ物に対する意識が高い傾向があります。一方、外食で済ませることが多い人は食事に対して受動的で、摂取した総カロリーを低く見積もりがちなのです」と語るのはハーバード大学パブリックヘルス校のクィ・スン氏だ。外食ではあまり自覚せずに必要以上のカロリーを摂りがちなるということだ。そして外食の最大のネックは、塩と砂糖の量をあまり調節できないまま体内に取り込んでしまう点であるという。また外食やファストフードは、健康に欠かせない微量栄養素(micronutrients)が不足しがちになる点も見過ごせない。

“外食派”よりも“家庭料理派”のほうがおおむね健康であるというのは、ある意味ではイメージ通りの結果といえるだろう。とはいえいくら家庭で食べるといっても、テイクアウトの料理や出来合いの惣菜、レトルト食品や冷凍食品などが多ければ外食と変らないため、もはや家庭料理とは呼べないものになる点には留意したい。

やはり“家庭料理派”は健康だった!しかもパスタはダイエットの“敵”ではなかった!?
Express」より

 そしてもちろん夕食だけでなく、時間が許すのなら昼休みに家に戻ってランチを摂ることも健康には有益であることがビッグデータから判明している。こればかりは個別的な条件によるもので誰もができることではないが、手間はかかるがお弁当の持参も有効な選択肢になるだろう。忙しいビジネスパーソンにとって食事は素早く手軽に摂れるにこしたことはないが、食事の“質”については常に意識的でいたいものだ。

■パスタが肥満を防止している!?

“家庭料理派”が健康なのはわかったが、具体的にどんなメニューを選べばよいのだろうか。パスタの国・イタリアで行なわれた最新の研究では、パスタの消費量が多い地域では健康的な痩身体型の人が多い傾向があると指摘している。炭水化物の代表メンバーでもあるパスタが、スリムな体型に関係があるというのはかなり意外な話ではないだろうか。

 イタリアの医学研究機関「IRCCS Istituto Neurologico Mediterraneo Neuromed」の研究チーム先頃、医学誌「Nutrition & Diabetes」で発表した論文によれば、国内2万3000人の成人の食習慣を調べたところ、パスタの消費量と健康的な体型(BMI)に相関関係があることがわかったという。パスタが肥満を防止しているかもしれないというのである。

やはり“家庭料理派”は健康だった!しかもパスタはダイエットの“敵”ではなかった!?
Independent」より

「食欲に応じてパスタを食べることは健康的な体型(BMI)につながり、細いウエスト、めりはりのあるボディ曲線に貢献しているのです」と、論文主筆のジョルジュ・ポウニス氏は「Independent」紙の取材に応えている。ご存知のように、現在流行中のダイエット法に「糖質制限ダイエット」や「低炭水化物ダイエット」などがあり、何かと炭水化物が目の敵(!?)にされている風潮が一部であるが、この研究はそれと真っ向から対立するものになるだろう。いったいどういうことなのか?

 今回の研究結果はあくまでもデータの分析でわかったことで、具体的にパスタのどんな要素が健康的なスリム体型に貢献しているのかについてはまだよくわかっていないようだ。しかしそのカギを握っているのが、イタリア地中海地方の健康的な食文化である「地中海ダイエット」にあるという。

 地元で獲れた新鮮な野菜や果物、魚介類、鶏肉などをバランスよく、かつ多品目食べる地中海地域の食文化はヨーロッパの中でも群を抜いて健康的であるとされ、実際に平均寿命が世界最高の地域であるといわれている。この地中海ダイエットの重要な食材としてのパスタもまた、健康な身体づくりの一端を担っているということだ。つまりパスタ単品での話ではなく、地中海ダイエットの中の1メニューとしてのパスタが、他の食材との相乗効果で健康な痩身ボディに寄与しているということのようだ。

 パスタを大量に食べ続けていればもちろん肥満に繋がることは間違いないと思われるが、バランスと栄養に優れた食事の一品としてパスタを食べることはむしろ推奨されているということだろうか。外食でプロの腕を楽しむのも良いが、健康のためにはぜひ家庭料理でもパスタを楽しみたいものだ。

文/仲田しんじ

フリーライター。海外ニュースからゲーム情報、アダルトネタまで守備範囲は広い。つい放置しがちなツイッターは @nakata66shinji