仕事中は、一日中ずっとパソコンに向かっているという人も少なくないはず。しかしそうなると必然的に、肩こりの症状も悪化していくものです。

そこで、肩こりの改善を願っている方にぜひお勧めしたいのが、『1日10分歩き方を変えるだけでしつこい肩こりが消える本』(宮腰圭著、サンマーク出版)。

とはいえタイトルを目にしただけでは、「1日たった10分でよくなるなんて、そんなことあるはずがない」と思っても無理はないかもしれません。しかも、驚くほどシンプルなメソッドを、1日わずか10分程度行うだけでいいというのですから。

しかし読み進めていくと、本書に展開されている考え方が理にかなっていることがわかります。

著者は、これまでに39,000人の体の悩みを解決してきた整体師。その活動プロセスにおいて、肩こりに悩む人を改善に導いてきたメソッドが、2006年の夏に考案されたという「こりとりウォーク」なのだそうです。

■両手首の向きを90度変えるだけ!

著者によれば、肩こりをゆるめ、根治に結びつけるスイッチ(肩ゆるスイッチ)の入れ方は驚くほどシンプル。

なにしろ、「両手首の向きを90度変えるだけ」だというのです。

つまり手のひらを正面にし、手の甲を後ろに向けた状態。そうして歩くだけで、内に巻いていた肩が自然に矯正され、内側に凹んでいた胸部が前方に突出。

自然と胸を張った状態になるため、猫背はもちろん、猫背によって引き起こされるストレートネックも改善されるということです。

■両手首の向きで肩こりが消える理由

手の甲が正面に向いてしまっていると、それだけで肘には内向きの回転がかかってしまうというのがその根拠。そうなると、肩にも内巻きの回転が加わってしまうというわけです。

事実、その場で両腕をだらんと下に垂らした状態で、手にひらが後ろになるように手首の向きを変えてみると、手首を回したとき、肘にも内向きの回転が加わることがわかります。しかも、そのとき同時に肩にも、少し内向きの動きが加わるというのです。

ちなみに静止している状態ではそれほど強い力はかからないものの、歩いている状態だとこの作用は顕著になるのだそうで、ここがポイント。

そこで、姿勢改善も含め、肩や背中のこりをとるには、静止している状態よりも動いている状態で治したほうが効果が出やすいということ。だから、この歩き方が効果的だというわけです。

肩よりも肘、肘よりも手首といったように、肩からの距離が離れれば離れるほど、4つの動き(遠心力・向心力・てこの原理・振り子の原理)は大きくなるもの。

いってみれば腕のつけ根から遠くにある場所ほど、内側に巻いていく作用も強まるということ。

だとすれば歩行時に、手のひらが正面になるように向きを変えて歩けば、内へ内へと回転する腕の動きが抑止されることになるでしょう。そして、それにともなって、内側に巻いてくる方の動きも抑制されるというわけです。

このことについては、通常の歩行をイメージするとわかりやすいようです。人が歩くとき、まず手を前に出すことで、腕に外側へ向かう「遠心力」が発生して肘が外方へ向かうことになります。

そして次に中心へ向かう「向心力」が発生し、肘と手首には内向きの回転がかかります。しかし、手のひらを正面にして歩くことで、その働きが抑制できるというのです。

■人体すべての骨格は連結している!

次に腕を後ろに降ったとき、手の甲が正面(手のひらが後ろ)に向いたままだと、あまり後ろに手を振れなくなるため、肩が内側に残ったままになるのだとか。

でも手のひらを正面位すれば、後ろに腕が振りやすくなり、肩を後ろまでしっかりと動かすことができるということ。そうすることで手首から肘、肘から肩へと、逆行的な外巻き方向への連鎖が発生するわけです。

肩からの距離が離れた場所ほど、回転や「てこの作用」が強まります。それを逆手に取ることで、外へ外へと回転していく力を、下から上に作用させる。これが、手のひらを正面へ向ける狙いだと著者は記しています。

重要なポイントは、人体すべての骨格は連結しているという事実。だからこそ、たった1ヶ所が改善されるだけでも、そこに関わる周囲に変化が生まれるということです。

著者はそれを「まるで『スイッチ』のように、オセロの黒が、白に変わる」と表現していますが、たしかにそんなニュアンスかもしれません。

ひとつの小さな変化が、その周囲の変化を誘するため、他の部分もどんどんよい方向に矯正されていくということです。

必要以上の方法論を絡めることなく、シンプルに徹しているからこそ、説得力は抜群。本書を参考にしながら1日10分のエクササイズを続ければ、肩こりが改善されるかもしれません。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※宮腰圭(2016)『1日10分歩き方を変えるだけでしつこい肩こりが消える本』サンマーク出版