■連載/ペットゥモロー通信

Dr.林のわんこの処方箋

わんこの入手方法〈拾った場合の注意点〉

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犬でも猫でも、生まれたばかりだと、ただの毛むくじゃらのネズミのような感じなので、動物の赤ちゃんを見たことがない人だったら、犬と猫を間違えてしまうかもしれない。大抵は大きさとか鳴き方で分かるのだが、小型犬の赤ちゃんだったら、見た目は猫とたいして変わらないので、要注意です。もし不安だったら、お腹の所を見て下さい。もし、おへそと肛門の間におちんちんがあったら、それは間違いなく男の子のワンちゃんです。

ちなみに猫ちゃんのおちんちんは肛門の近くにあるんです。玉たまは、生まれたての頃は、まだお腹の中にあって、生後、徐々に肛門近くの袋の中に下りてくるのですが猫は生後間もなくだったら、オスメスの見分けがなかなかつきません。肛門と陰部の距離で見分けるんですが、心配だったらお近くの動物病院へどうぞ。

もし、犬と猫を間違えて飼っていたら、気付いたときのショックが大きい、というよりも色々困ったことが出てくる。例を挙げると、食事の問題。生まれてすぐに母親から離された動物は、当然、母乳を飲めない訳だから、人間の手でミルクをあげないといけない。牛乳で育てようと思われる方も多いと思うが、牛乳には、乳糖と呼ばれる糖分が入っていて、大抵のワンちゃん猫ちゃんはそれを栄養分として分解して利用することができず、下痢をしてしまう。

その事実は、成長しても変わらないし、牛乳を温めたり、薄めたりしても変わらないので、要注意である。時々、乳糖を分解できる子もいるが、やめておいたほうが無難である。子犬や子猫が下痢をすると、急激に脱水状態になり、下手をすると死んでしまうこともあるからである。では、どうすれば良いか?含まれる乳糖が少ない牛乳を与える。う〜ん、そんな牛乳も市販されているが、一番良いのは、ペットショップなどで売っている犬猫用の液体ミルクか粉ミルクである。

それらをお湯で溶いて、人肌程度まで冷して、哺乳びん(当然、犬猫用)で与える。最初はうまく飲めない子もいるので、うまくいかないならスポイトなどで与える。これを2〜3時間おきに行うのです。1日くらいならまだいいけど、それが離乳するまで続くのです。少なくとも2〜3週間はかかるので、それまでは、栄養ドリンク片手に、目を血走らせながら頑張るしかないですね。

ミルクには犬用猫用がある

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一人でやるのは大変だけど、家族とか友達に協力してもらえれば、頑張れると思います。このミルクにはちゃんと犬用、猫用の区別があります。赤ちゃん用だから、どちらにしろ栄養タップリの飲み物なんじゃないの?と思われるかもしれないが、微妙に成分が異なっているのです。

犬と猫が要求する栄養分で、一番大きな違いは、タンパク質です。ワンちゃんは雑食性の強い肉食、猫ちゃんは純粋な肉食、ということで、猫ちゃんのほうがワンちゃんよりも2倍近く、多くのタンパク質を必要とするのです。

だから、犬に猫用ミルクをあげるのはまだ良いけれど猫に犬用ミルクをあげるのはちょっと問題があるのです。犬用ミルクにはタウリンも入っていないし、猫に犬用ミルクを与えると栄養不足、ミネラル不足になってしまうのです。

このように、動物を拾った時は、その後育てるのも大変だけれど、まずは生きていてもらうことが先決。捨てられてから時間が経っていると、子犬の場合、かなり衰弱している可能性があるのです。ミルクを飲んでいないというのもあるし、子犬だと体温調節を上手くできないので、低体温のショック状態にあることもある。だから保護したらなるべく早く、ペットヒーターやカイロなどで保温してあげないといけないけれど、やはりすぐに動物病院に連れて行くべきでしょう。

また、病気の管理も大変である。まずは伝染病。赤ちゃんは当然だが、成犬でもワクチンをうっていなければ、伝染病にかかる可能性も高いので、早めにワクチン接種を行った方が良いでしょう。また、すでに伝染病にかかっている可能性もあるので、きちんと健康診断してから、できれば保護して1週間くらい何か変わった症状がないことを確認してから、ワクチンをうったほうが良いでしょう。

ノア動物病院では、子犬のワクチン接種は、生後2ヶ月目で1回、その後、1ヶ月おきに合計3回を推奨しています(2016年現在)。ワクチンは病院によって打つタイミングが違うので近所の動物病院で確認してください。

寄生虫に注意

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あとは、外部寄生虫、及び、消化管内寄生虫に注意しましょう。外部寄生虫としては、耳ダニ、ノミ、マダニ、疥癬、また、虫ではないが皮膚にカビの感染などが見られることがあります。消化管内寄生虫としては、回虫、鉤虫、鞭虫、条虫、コクシジウムなどが見られることがあり、いずれも動物病院での身体検査、皮膚をひっかいてとれた物を顕微鏡でみる検査、糞便検査などで、分かる場合が多いので、保護した後は、なるべく早めに健康診断を受けた方が良いでしょう。

その子の親がかかっていた病気や、成犬だったらその子の生活環境など、分からないことだらけなので、動物病院でも、電話相談だけだとあまりアドバイスできないことが多いのですが、連れて行けばそれなりの検査はできるのです。

例えば、河原に生後半年位のワンちゃんが捨てられていたとしましょう。保護した後、軟便が続いている。それだけの情報では、動物病院も何の病気なのか分からないし、病気かどうかも分からないのです。ただのストレスかもしれないですが、病院に連れて行って糞便検査をしたら、マンソン裂頭条虫の虫卵が出る、ということもあるのです。

これは、カエルやヘビを食べるもしくは接触することでうつることの多い、消化管内寄生虫の一種。何が感染しているかわかれば、駆虫薬を出すこともできるし、その子が今まで、河原でカエルとかを食べて生きてきた、ということも分かるんです。確かに動物病院に行くとお金がかかるというイメージはあると思いますが、検査しないとわからない病気もあるので、気軽に相談してみてください。

教訓:

一、生まれたばかりの犬の世話は手間と時間を惜しまない!
二、拾った場合は、子犬でも成犬でも、早めに健康診断を受けるべし!
三、拾った場合は、特に寄生虫に注意すべし!

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文/林 文明(はやしふみあき)

1988年北里大学獣医学修士課程修了。1998年コロラド州立大附属獣医学教育病院に留学し、欧米の先進動物医療を学ぶ。現在は、山梨・東京・ベトナムで5つの動物病院を経営。獣医師、日本動物医療コンシェルジュ協会代表理事。
日本動物医療コンシェルジュ協会
http://www.jamca.gr.jp/
ノア動物病院
http://www.noah-vet.co.jp/

 

記事提供/ペットゥモロー http://petomorrow.jp/