フォトストーリー:アラブの砂漠に建つはずだったユートピア「マスダール・シティ」

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アブダビ近郊にゼロ・カーボン都市「マスダール・シティ」を建設するという計画は、発表から10年が経ったいま、わずか5パーセントしか完成していない。その街に魅せられたあるフランスの写真家が、空虚さのなかにある奇妙な美しさをとらえている。

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2/16マスダール・シティへ向かう道の途中にある広告板。
PHOTOGRAPH BY ETIENNE MALAPERT

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3/16マスダール・シティにあるソーラータワー。
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4/16マスダール・シティの外縁には、約8万8,000枚のソーラーパネルが並んでいる。
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5/16マスダール・インスティテュートの地下には、自動運転の個人用高速輸送システムの駅が設置されている(開通はまだしていない)。利用される予定の白いポッドが見える。
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6/16マスダール・インスティテュートの図書館「ナレッジセンター」からの眺め。
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7/16マスダール・インスティテュートの渉外担当スタッフであるタハラ氏。
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8/16砂嵐の中の建設現場。
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9/16マスダール・インスティテュートの建物。
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10/16マスダール・インスティテュートのラボ。
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11/16マスダール・インスティテュートに掲げられたポスター。
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12/16マスダール・シティは、アラブ首長国連邦の首都アブダビから約17km、アブダビ国際空港の近くで建設中。写真は、アブダビにあるゲート付きのヴィラ(高級住宅)。
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13/16アブダビ近郊の砂漠。
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14/16マスダール・シティ近くの建設風景。
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15/16マスダール・シティの植栽には、乾燥に強い植物が利用されている。植物の世話をする職員たち。
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16/16強烈な日差しを避け、日陰で休む職員。
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アラブ首長国連邦(UAE)は10年前、220億ドルをかけてゼロ・カーボン都市「マスダール・シティ」を建設するという計画に着手した。太陽エネルギーを使い、風力で建物を冷却し、移動手段は自動車を使わないという都市を、首都アブダビ近郊に建設するという計画だ。

しかし、世界初の持続可能な都市の建設には、予想をはるかに超える困難が待ち受けていた。これまでに建設されたのは、マスダール・シティのうちわずか5パーセントだ。

フランスの写真家、エティエンヌ・マラペールは、ドキュメンタリー写真シリーズ「City of Possibilities」(可能性の街)で、歩みの遅いこのユートピアを紹介している。

マラペールの魅惑的な写真は、太陽を浴びるソーラーパネルの列や、狭い通りに沿って建つ未来的な高層建築、日陰で体を休める労働者の姿などを写している。

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世界的に有名な英国の建築会社フォスター・アンド・パートナーズが2007年に、マスダール・シティの建設計画を発表した。歴史的なアラブ建築の要素と、持続可能なテクノロジーを組み合わせたデザインだ。

人口4万の都市に電力を供給できるおよそ8万8,000枚のソーラーパネル、日陰を多くするために意識的に狭くした通りに風を送る高さ約45mのウィンドタワー。広さ2.3平方マイル(約6平方km)のマスダール・シティでは、自動車の代わりに、自動運転の個人用高速輸送システムの白いポッドで移動する計画だった。

だが、リーマンショックと金融危機が起こり、基本計画が修正された。完成時期は2015年から30年に延期され、「ゼロ・カーボン」ではなく「ロー・カーボン」で十分だとする内容に変更された。また交通手段のポッドは、建設された2カ所の駅と計画中の駅1つを除いて廃止となり、代わりにもっと平凡な大量輸送機関が採用された。

これまでに建てられた建物は、わずか12ほど。そのひとつ「マスダール・インスティテュート」には287人が住んでおり、全員が大学院生だ。

マスダール・シティ全体では約5,000人が働いており、インキュベーター・ビルディングには370社がオフィスを構える。スタッフたちはオーガニック食品店で買い物をし、コーヒーショップでくつろぐ。

マラペールは、2014年10月に「グリーンな都市」についての本を読んでいたとき、マスダール・シティに関する知識を得た。都市の基本にある考え方と未来的な美しさに魅せられたマラペールは、すぐさま飛行機を予約してマスダール・シティに行き、10日間かけて街を探索した。そして15年3月に再び訪問し、20日間を過ごした。

マラペールは街を歩き回った。都市の景観に目を見はり、建設現場の労働者とおしゃべりし、マスダール・インスティテュートを訪ね、不思議なポッドに乗ってみたという。大判カメラで撮った彼の写真は、寂しく空虚なこの街の様子をとらえている。「まるでゴーストタウンにいるようでした」とマラペールは語る。

「マスダール・シティが空っぽで、死んだように見えるのは本当です。わたしの風景写真や、生きた人たちのいない建築物の中で、その空虚さが意識的に強調されているのです」