■連載/トモ星野のBike&Run快体進書

 世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」(以下ツール)が2016年7月2日(土)に開幕した。第103回大会となる今年は、ユネスコの世界遺産にも登録されているモン・サン・ミシェルから走り始める第1ステージから幕を開け、7月24日(日)までの日程でフランス全土(一部スペイン、アンドラ、スイスを走行)を舞台に、世界最高峰の熱い戦いが繰り広げられる。

 全21ステージで走る総距離は3519km。大会中盤から後半にかけてハードな山岳ステージが連続し、第12ステージには南フランスに位置する「魔の山(死の山)」と呼ばれるツール史上最高難度の山岳コース“モン・ヴァントゥ”が選手を待ち受ける。モン・ヴァントゥ山頂には灌木もほとんどないむき出しの石灰岩台地が広がる荒涼とした風景が広がり、総合優勝争いが激化することが予想される注目のステージだ。

 さらに、総合優勝が決まるパリ、シャン・ゼリゼ大通り凱旋2日前には1000m級の峠を何度も超え、ヨーロッパ最高峰のモン・ブラン(標高4810.4m)の麓に位置する標高1372mのサン・ジェルベ・モン・ブランにゴールする第19ステージが設定されているなど、最後の最後まで目が離せない。

 日本においては、有料スポーツ専用チェンネル「Jスポーツ」でライブ放映(午後9時前後〜深夜・早朝)され、ブリティッシュパブ「HUB」や「カラオケ パセラ」では同映像を見ながらお酒を楽しめる(放映に関しては各店舗に要確認)。さらに最近ではハイライト動画が様々なサイトに掲載されているので、これらで生の映像を楽しむのもおすすめだ。

モン・サン・ミッシェル
ツール・ド・フランス2016は観光地としても有名なモン・サン・ミッシェルから動き出す

◎さすがワイン大国フランス。ツール・ド・フランスには公式ワインがある!!

 多くのスポーツイベントと同様にツールにも協賛を受けた公式時計メーカーや飲料メーカー、食品メーカーなどがあるが、アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC)と呼ばれるワインに関する法律もあるワイン大国フランスが誇る大会だけあり、ツールには大会オープニングステージ公式ワインもあるのが興味深い。

これまでは(もちろん)フランス産が公式ワインに選ばれてきたが、2014年からチリ地震(2010年)の被災者を支援する意味を込めてチリの“コノスル社”のワインが公式ワインとして認められたという。

この“コノスル”ワインは、毎日畑へとペダルをこいでいくワーカーたちへの敬意と、自然のサイクルを基本とした葡萄づくりを表わすシンボルとして自転車をラベルに配した、手頃な価格帯で十分な飲み応えが人気のブランド。日本ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも販売されているので、比較的購入しやすいワインのひとつだ。公式ワインを片手にテレビ観戦すれば、さらに気分が盛り上げながら見ることができるだろう。

持続可能農法や有機栽培など環境にも配慮して造られる“コノスル”ワイン
持続可能農法や有機栽培など環境にも配慮して造られる“コノスル”ワイン

コノスル社のキャラバンPRカー
ツールでは選手たちが通過する前に沿道の観客を盛り上げるキャラバン隊が通過。コノスル社のキャラバンPRカー(2015年)は屋根にワインボトルが乗っている可愛いデザイン!

◎まだまだあるぞ! ツール・ド・フランス2016観戦を盛り上げるワイン

 世界有数のワイン生産国であるフランスは、全土で地域ごとに個性的なワインが造られている。ツール観戦しながら飲みたいワインを挙げればきりがないが、ここでは各コース近くで造られるワインを一気に紹介したいと思う。

■第3・4ステージ/レ・カーヴ・ド・ロワール

 緩やかなアップダウンが連続する第3ステージのゴール都市となるアンジェと、2016年大会最長距離となる237.5kmを走る第4ステージのスタート都市であるソミュールは、フランス中央部を東から西へと流れるロワール川流域西部に位置する。

この2都市近くで1951年に設立されたワイナリー“レ・カーヴ・ド・ロワール”では、鮮やかなピンク色が美しいフランスを代表とするロゼワイン“ロゼ・ダンジュー”が醸造されている。

レ・カーヴ・ド・ロワール“ロゼ・ダンジュー”
レ・カーヴ・ド・ロワール“ロゼ・ダンジュー”

■第8ステージ/ジュランソン キュヴェ マリ ルイーズ

 距離19km・平均勾配7.4%の長いヒルクライムルートで標高2115mのコル・ドゥ・トゥールマレーを上り、その後も3つの峠を越えて距離184kmで獲得標高差4200mを走り抜ける第8ステージ。

スタート都市のポー近郊では、16世紀末〜17世紀初めのフランス国王アンリ4世にも愛されたと言われるデザートワイン“ジュランソン”が醸造されている。オーガニックにこだわって造られた“ジュランソン キュヴェ マリ ルイーズ”は、透明感のある黄金色が見た目にも美味しさを感じさせる逸品。

ジュランソン キュヴェ マリ ルイーズ
ジュランソン キュヴェ マリ ルイーズ

■第11ステージ/カバルデス キュヴェ エクスキーズ、ラ・ルヴィオール、ドメーヌ グティーヌ、テール・デ・シャルドン

 スペイン・アンドラとの国境をなすピレネー山脈と、スイスとの境に位置するアルプス山脈でのハードな山岳ステージの間をつなぐように南フランスの平坦基調のコースを走る第11ステージ。

 スタート都市であるカルカソンヌは、古代ローマ時代からの城塞が残り、ユネスコの世界遺産にも登録されている。この街近郊の丘陵地帯で造られているブドウで醸造されたワインが“カバルデス キュヴェ エクスキーズ”。この他にもコース近くでは、ミネルヴァワ“ラ・ルヴィオール”、サンシニアン“ドメーヌ グティーヌ”、ラングドッグ“カデ・ドック”など様々なタイプの赤ワインを楽しむことができる。

カバルデス キュヴェ エクスキーズ
カバルデス キュヴェ エクスキーズ

ラ・ルヴィオール
ラ・ルヴィオール

ドメーヌ グティーヌ
ドメーヌ グティーヌ

カデ・ドック
カデ・ドック

■第12ステージ/コスティエール ド ニーム、クロ・ドゥ・トゥリア・ヴァントゥ・ルージュ

 フランス革命記念日である7月14日(木)に開催される第12ステージ。前述した通り、ここは世界のトッププロ選手をも苦しめる距離15.7km、平均勾配8.8%のモン・ヴァントゥにゴールする注目のステージだ。

 コース途中の南方に位置するアルル近郊では、飲みやすい赤ワイン“コスティエール ド ニーム”を醸造。さらに、モン・ヴァントゥの麓で造られる 赤ワイン“クロ・ドゥ・トゥリア・ヴァントゥ・ルージュ”は、酵母、酵素、酸化防止剤を一切加えず、自然発酵という伝統的な醸造法を用いた逸品だ。

コスティエール ド ニーム
コスティエール ド ニーム

クロ・ドゥ・トゥリア・ヴァントゥ・ルージュ
クロ・ドゥ・トゥリア・ヴァントゥ・ルージュ

■第13ステージ/コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・レ・ベック・ファン・ルージュ

 距離37.5kmの個人タイムトライアルが行なわれる第13ステージ。スタート地点のブール・サン・タンデオルはローヌ川畔に位置し、その下流のエステザルク村では樹齢60年のグルナッシュと樹齢30年のシラーを使用した“コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・レ・ベック・ファン・ルージュ”が造られている。

コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・レ・ベック・ファン・ルージュ
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・レ・ベック・ファン・ルージュ

■第14ステージ/ボジョレー2015

 パリ凱旋まで残り1週間となった第14ステージ。平坦基調の208.5kmのこのステージでは、総合優勝のマイヨ・ジョーヌ(黄色ジャージ)と共に、スプリントでのポイント(つまりスプリントで誰がいちばん爆発力ある走りができるか)によるマイヨ・ヴェール(緑色ジャージ)の行方を左右する勝負が展開されることが予想される。

 ステージ後半で近郊を走行するフランス第2の都市リヨンの北方で造られているワインが“ボジョレー”。日本では11月第3木曜日に解禁する新酒のボジョレー・ヌーヴォーが有名だが、ゆっくり丁寧に造られた熟成タイプのボジョレーワインにも注目したい。

ボジョレー2015
ボジョレー2015

文/星野知大

ほしの・ともひろ。前進スポーツ案内人。1976年東京生まれ。自転車・ランニング・水泳を中心に、日本&世界の“前に進む”スポーツの大会プロデュース・MCとして飛び回るスポーツナビゲーター&ライター。2015年から日本最大の自転車ショー“サイクルモード”のMC兼ディレクターを務め、東京都三宅島の観光まちづくりアドバイザーにも就任した経験も持つ。