左から、山田美和氏(ジェトロ)、伊藤裕理氏(日立製作所)、富野岳士氏(ジャニック)、ジェームズ・ゴム氏(WBCSD)

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経済発展と環境保全を両立させる「持続可能な開発」を実現するために、2030年までの具体的な行動計画を盛り込んだ目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」が、国連持続可能な開発サミットで採択され、16年1月に発効した。

これを受け、SDGsが実際のビジネスの上で企業にはどのような影響が生じるかについて議論するワークショップが16年7月14日、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)、富士通、富士通総研の共催で、東京・汐留で開かれた。様々な企業やNGOなど、異なる立場でビジネスに関わる8人がパネルディスカッションに登壇した。

「市民との共通のゴールを持つ」

登壇者は、日本モンサントや日立製作所、イオンといった企業と、日本貿易振興機構(ジェトロ)、国際協力NGOセンター(ジャニック)、国連開発計画(UNDP)、さらにWBCSDも加えた国内外の組織から計8人。ディスカッションのテーマは、SDGsを前提にしたビジネスの「リスク」と「チャンス」だ。

SDGsは、17の目標とそれを細分化した169の行動計画から構成され、多岐に渡る。しかし、この日ディスカッションに登壇した8人は、SDGsの重要テーマは「人権の保護」だと一致し、議論は人権を軸に進んだ。

ジェトロの山田美和氏は、「ビジネスが人権に与えるマイナスの影響を減らしていく必要がある」とした。それには、ビジネスが現実社会や一般市民にどう捉えられるかという、受け手側の視点に立つことが重要だと続けた。

日立の伊藤裕理氏は「何をリスクとするかは企業ごとに違う」とした上で「一歩引いた視点で物事を俯瞰する姿勢が、すべての企業に求められる」と述べ、自社の利益だけを追求する時代ではないことを強調した。

ジャニックの富野岳士氏もこういった考え方に同調。一般市民、企業、NGOの三者のパートナーシップを仲立ちする立場として、「社会にどういった課題があるのかを、さまざまな立場の人に伝えていくことが自分たちの役割だ」と強調。関係を深めた上で、「市民との共通のゴールを持つ」ことが企業活動に求められると述べた。

「民間企業にしか果たせない人権保護」

UNDPの小原愛氏は、常に世界を見渡す立場から「SDGsの発効は、ビジネスが国際社会でどういう位置づけをもつか見直すための、良い機会になる」とした。雇用を生んだり、技術開発を進めたりといった活動を例に挙げ、「途上国支援や貧困救済には、民間企業にしか果たせない人権保護の役割がある」との認識を示した。

市民に近い立場から環境保全の取り組みを紹介したのは、イオンの金丸治子氏。小売業者として、リサイクルやリユースを直接消費者に訴え、限りある資源の有効利用につなげていることを報告した。

日本モンサントの佐々木幸枝氏も、「温暖化対策を重点的に進めている」と環境対策をアピール。土を耕すと土中の炭酸ガスが空気中に出るし、窒素を使用した肥料からも温室効果のあるガスが出るため、農業技術を開発するグローバル企業として、バイオテクノロジーの種子による不耕起栽培や、データサイエンスを用いた精密農法による効率的な窒素肥料の投入などの取り組みを進めていると述べた。

議論の最後に、WBCSDのフィリッポ・ベグリオ氏は「世界中に関連企業をもち、サプライチェーンも大きい日本企業が果たす役割は大きい。有意義な対話ができた」と総括した。