南シナ海をめぐり、常設仲裁裁判所は中国の領有権主張を否定するフィリピンの言い分を全面的に認めた。それにもかかわらず、比政府は及び腰気味。中国が判決を受け入れるはずもなく、問題解決のめどは全く立たないままだ。資料写真。

写真拡大

2016年7月15日、南シナ海をめぐり、常設仲裁裁判所(PCA、オランダ・ハーグ)は12日、中国の領有権主張に異議を唱えるフィリピンの言い分に軍配を上げた。「全面勝訴」にもかかわらず、比政府の反応は及び腰気味。PCAに猛反発する中国が判決を受け入れるはずもなく、問題解決のめどが全く立たないためだ。

国連海洋法条約に基づく比側の仲裁申し立てを受けた今回の判決で、PCAは中国が歴史的権利と強調し、南シナ海での広範な領有権の根拠とした「九段線」について当初の予想に反して踏み込んで判断。「この海域を排他的に支配してきた証拠はない」と明確に否定した。

南沙(英語名・スプラトリー)諸島で中国が造成を進める7カ所の人工島に関しても、200カイリの排他的経済水域(EEZ)や大陸棚を構成する「島」ではないと判示。うち人工島3カ所は満潮時に海面下に沈む「低潮高地」で、12カイリの領海も認められないとした。

判決はまた、中国が実効支配するスカボロー礁(中国名・黄岩島)で比漁民の伝統的な権利を侵害していると指摘。さらに、人工島造成は付近のサンゴ礁に深刻な被害をもたらし、海洋法条約の環境保護義務に違反すると断じるなど、中国の主張はことごとく退けられた。

判決について、ヤサイ比外相は「この画期的な判断が南シナ海をめぐる問題の解決に向けて重要な役割を果たすと確信している」と歓迎。同時に「詳細を検討する」とも述べ、慎重な構えをのぞかせた。

中国は「判決は無効で拘束力もない」と猛反発。中国外務省の劉振民次官は13日の記者会見で、仲裁人(判事に相当)5人のうちの4人が当時、PCA所長だった柳井俊二・元駐米大使によって任命されたことに言及。「今回の仲裁裁判は、完全に柳井氏が操っており、仲裁裁判の過程においても影響を与えた」と、日本にも批判の矛先を向けた。

南シナ海問題について、6月末に就任したドゥテルテ比大統領は判決前、「われわれは西側諸国の同盟だ」として、アキノ前大統領の「対中強硬路線」の継承を示唆。その一方で、中国との対話重視や南シナ海での共同資源探査の可能性にも言及していた。

中国が呼び掛ける当事国間の直接対話に応じるにしても、国際的な“お墨付き”を得た以上、それが開始の前提になる。比外務省は14日、モンゴルで開催されるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、「判決を当事者が尊重する必要性を訴える」との声明を発表。ドゥテルテ大統領は中国との対話の糸口を探るため、ラモス元大統領に特使として訪中するよう依頼したことを明らかにした。

比メディアによると、仲裁申し立てを主導したアキノ前大統領は判決後、PCAの審理に尽力した関係者の名前を列挙し、「国の勝利だけでなく、全員の勝利だ」と称賛した。中国との安易な対話開始に早速、クギを刺した形だ。ドゥテルテ政権は国内的に盤石ではなく、議会などでは少数派。当面は突出を避け、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国などとも連携しながら、慎重に対応していく方針とみられる。(編集/日向)