行列の待ち時間は「方程式」で推定できる

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 観光地の駅や駐車場、有名テーマパーク、大型商業施設、口コミサイトで評価の高い飲食店……、これからの夏休みシーズンになると決まって話題にのぼるのが、あちこちにできる「行列」の長さと待ち時間だ。

 行列を人気のバロメーターと考えるのはいいが、1時間以上も並んだ割にはたいして満足感を得られなかった──なんてケースはよくある話。

 そもそも日本人は、どのくらいの待ち時間ならばイライラせずに並べるのか。過去に時計メーカーのシチズンホールディングスが20代〜50代のビジネスパーソンを対象に行ったネット調査(2013年4月実施)は興味深い。

 その結果を見ると、例えば飲食店では、日常のランチタイム時の空席待ちは「10分」と答えた人が32.0%でトップ。その他、1分、3分、5分など10分以内と合わせると7割を超えた。また、オーダーした料理が運ばれてくるまでの時間も、4割近くの人が「10分」でイライラすると答えている。

 一方、人気飲食店の入店待ちは、約7割の人が「30分」(39.0%)、もしくは「1時間」(29.5%)と回答した。また、テーマパークの人気アトラクションでも「1時間」(33.5%)、「1時間以上」(57.3%)は覚悟していると答えている。

 果たして日本人はせっかちなのか、それとも辛抱強いのか。ニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏はこう話す。

「行列にも種類があって、ワクワクするような楽しいことを待つために長時間並ぶのは苦痛ではありません。しかし、病院など嫌なことを待つときや、限られた時間しかなく急いでいるとき、また、炎天下の行列など待つ環境が厳しい場合はイライラ感と苦痛が募って、並ぶのを諦める人が多いのです」

 そこで、誰もが思うのは「いったい何分待てばいいのか?」という時間予測だろう。行列の最後尾に予め待ち時間を表示している場所も増えたが、何も情報がないときは、並んでいる人数と先頭の進み具合を見ながら、自分で推定するしかない。だが、行列によっては、1列ではなく“つづら折り”になっていたり、途中で列が分断されて先頭の状況が把握しにくかったりすることもある。

 そんな時に役立つのが「リトルの法則」と呼ばれる“方程式”だ。

 これは1961年に米国マサチューセッツ工科大学のジョン・リトル教授が発表したもので、列の長さが常に変わらないという条件付きで、【待ち時間(分)=行列の総人数÷1分間の到着人数】で割り出すことができる。つまり、先頭の進み具合が見えなくても、1分の間に自分の後ろに並んだ人数をカウントしておけば、待ち時間が分かる。

 この方程式に当てはめると、冒頭で記した「行列の長さが人気のバロメーター」という定説が怪しくなってくる。前出の篠原氏が解説する。

「例えば、2つのハンバーガーショップがあり、A店は12人の客が並んでいて毎分4人が行列に加わっています。そして、B店は10人の客待ちに対して毎分5人が列に加わっていたとします。

 単純に行列の長さだけ見ればA店のほうが流行っているように思いますが、待ち時間はA店が12÷4=3分、B店が10÷5=2分。販売効率から考えて客の人気ぶりを比べると、B店のほうが繁盛していることになるのです」

 確かに意地の悪いことを言えば、行列の長さは店の“さじ加減”ひとつで、いかようにもコントロールできる。調理作業をゆっくり行えば行列はどんどん伸びるし、ラーメン店などの中には、1人ずつ入店させずに店内の客がすべて食べ終わってから総入れ替えする店もある。

「もちろん、サービスの戦略上どうしても回転率が悪くなってしまう店はあるでしょう。しかし、敢えて行列が絶えないようにコントロールする店があるとしたら、そんな噂はすぐに広がってしまいますし、長い目で見れば店の評判や売り上げを落とす結果に繋がってしまいます」(篠原氏)

 今年の夏、「長蛇の列」に並んでイライラを感じたら、リトルの法則でも思い出し、待ち時間や人気の理由を冷静に検証してみてはいかがだろう。