日本を代表するヒーロー『ウルトラマン』の放送開始から今年でちょうど50年。『ウルトラマン』の放送が始まる1週間前に行われた前夜祭イベントの日である7月10日を「ウルトラマンの日」と定め、さまざまなイベントや特別番組が催された。


そんな中、7月9日より始まったのが新シリーズ『ウルトラマンオーブ』である。まさしく『ウルトラマン』50周年を記念するシリーズなのだが、これが意外にも遊び心満載の意欲作だった!

主人公は『渡り鳥』+マカロニ・ウエスタン!


まず、ウルトラマンオーブに変身する主人公、クレナイ ガイ(石黒英雄)が “さすらいのヒーロー” だというところが懐かしくて新しい。

ガイはテンガロンハットをかぶってズタ袋をかつぎ、ハーモニカを吹きながら馬車ならぬ冷凍車(!)の荷台に乗って街に現れる。「ああ、この男は風来坊なんだな」とひと目でわかる最高の登場シーンだ。冷凍車というところが、パターン通りというよりパターンの斜め上である。体中に霜降りてるし。

どこからともなく現れて、どこからともなく去っていく。陽気でキザでちょっととぼけていて、悪には滅法強いけど後ろ姿はどこか寂しげな一匹狼の風来坊。さすらいのヒーローは、長年に渡って世界中で愛されてきたヒーロー像の一つの形である。

代表的なのが、ギターを持った“マイトガイ”アキラが見知らぬ土地にやってきて悪党どもを叩きのめす小林旭主演の「渡り鳥」シリーズ。クリント・イーストウッド主演のマカロニ・ウエスタン、中村敦夫主演の『木枯し紋次郎』もさすらいのヒーローだった。

子ども向けヒーローでも、『ウルトラセブン』のモロボシダンはウルトラ警備隊に入る前は快活な風来坊だったし、『仮面ライダー』シリーズは「ロンリー仮面ライダー」という挿入曲があるように一匹狼であることが強調されていた(『仮面ライダーストロンガー』は日本全国を旅しながら戦っていた)。究極は「渡り鳥」シリーズのパロディだった『快傑ズバット』である。

従来は防衛隊の一員であることが多かった『ウルトラマン』シリーズの主人公だが、クレナイ ガイは組織に所属していない。そもそもクレナイ ガイという名前自体、“マイトガイ”と真っ赤に燃える夕陽のイメージをかけあわせた遊び心あふれるネーミングだ。

第1話のサブタイトルは「夕陽の風来坊」だからそのものズバリ。『赤い夕陽の渡り鳥』であり、『夕陽のガンマン』である。さすらいのヒーローには、熱い気持ちと寂しさを表す真っ赤な夕陽がよく似合う。

怪獣を追いかけるのは防衛隊じゃなくMMR!


『ウルトラマン』シリーズには必ず地球を怪獣や宇宙人の侵略から守る防衛隊が登場するが、『ウルトラマンオーブ』には防衛隊は存在こそするがほとんど登場しない。その代わりに活躍するのが、「SSP」の3人組である。

「SSP」とは「Something Search People」の略。世界中のミステリーと怪奇現象を愛する少年少女たち……って、要するに「MMR」のようなもの。夢見がちな少女の夢野ナオミ(松浦雅)、行動派の早見ジェッタ(高橋直人)、マッドサイエンティスト風の松戸シン(ねりお弘晃)とネーミングもいちいちキャラクター通り。彼らの主な活動はウェブサイトの運営であり、ちゃんと SSPのサイトも公開されている。放送前後にはチェックしておこう。

『ウルトラマン』シリーズでは、未熟な若者が防衛隊の一員として戦っていくうちに成長していくというストーリーが多い。『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹や『ウルトラマンレオ』のおおとりゲンが代表である。その役割は、たぶんこのSSPの3人が負うことになるのだろう。犠牲者が多数出ている中、怪獣が現れると無邪気に喜ぶ彼らが今後どのような成長をしていくのかに注目したい。

一方、さすらいのヒーローは完成された人格であることが多い。いろいろな土地に現れて、事件を解決して去っていくのだから、物語の中でいちいち成長する時間がないからだ。その分、さまざまな過去や心の傷を背負った大人(アニキ)として描かれる。クレナイ ガイにも複雑な過去がありそうだ。

寸分の隙もない二枚目だけど目のあたりにあまり表情がない石黒英雄は、まさに完成されたアニキ。成長途上の若者を表現するときは、目のあたりに思いっきり力を入れるものだが、石黒はスーッとした芝居をしている。『仮面ライダー響鬼』の細川茂樹が醸し出していたアニキ感にも通じるところがある。ちなみに『ウルトラマンオーブ』の主題歌を歌っているのはアニキこと水木一郎。歌手活動45周年を迎えた水木だが、今回が初めての『ウルトラマン』シリーズの主題歌となった。

「俺の名はオーブ。闇を照らして悪を討つ」と怪獣に向かって見栄を切り、ナオミたちに「どうせ地球は丸いんだ。またそのうちどっかで会えるだろう。あばよ!」と告げて夕陽に向かって去っていく。ガイの爽快なキャラクターとイカしたセリフは『ウルトラマンオーブ』の大きな見どころの一つになるはずだ。テレビの前の子どもたちも、問答無用でカッコいいお兄さんのヒーローに憧れると思う。

シリーズ構成と脚本を務める中野貴雄は、「最近のライダーはちっともロンリーでもさすらいのヒーローでなくなったので、その空いてる席をいただきました」「21世紀のこの世の中に『天下御免の風来坊』放浪のヒーローを復活させようというのですよ」とコメントしている。
また、メイン監督の田口清隆は、「『もっと上』ではなく『斜め上』に行ってしまえ!と舵を切りまして、<迷ったら遊べ>をスローガンにしました。“いつも通り”よりも“思いついちゃった面白い方”を選択せよ、という宣言です」とコメントを発している。

確信犯のスタッフたちによって生み出される天下御免の痛快ヒーロー、それが『ウルトラマンオーブ』だ。ああ、オーブと特撮に触れようと思ったのに文字数がオーバーしちゃったよ。まずは本日放送の第2話「土塊の魔王」をチェック! 最新話はYouTubeの円谷プロ公式チャンネルで配信中なので見逃した人も安心めされ。
(大山くまお)