世界最古のガラス技法で制作された“お茶碗”が美しい

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古代メソポタミア文明に端を発する世界最古のガラス技法で制作された“パート・ド・ヴェール茶碗”が、うっとりと見惚れるほど美しいと話題を呼んでいる。

この茶碗を紹介しているのは、東京都墨田区の茶道具専門店『(有)菊池商店』で茶人として活躍する菊池 憲之さん(@kikuchinoriyuki)。

菊池 憲之

菊池 憲之

パート・ド・ヴェールは紀元前から伝わるガラス工芸の一種。

その技法は復活と断絶を繰り返し、数十年前までは“幻のガラス”といわれていたという。

今回はTwitterでお茶の世界に関する面白い情報を発信する菊池さんに、美しい抹茶碗や茶道具や茶道の奥深い世界と魅力について伺ってみた。

オリジナル商品として製造

――パート・ド・ヴェール茶碗や茶道具に関して教えてください。

30年程前、弊社の社長がガラス工芸の研究員と共に製造し、オリジナル商品として販売していたものです。現在は製造しておりません。

菊池 憲之

菊池 憲之

また、パート・ド・ヴェールの水指・茶入も同じ工房で製作されたもの。他に棗・蓋置も当店にございます。

菊池 憲之

菊池 憲之

私自身が催す茶会や茶事でもよく使用しております。

今月開催している「朝茶」という形式の茶事でも“パート・ド・ヴェール肩衝茶入”をはじめ、江戸切子の茶器など様々なガラス茶道具を使用し、参加者に大変ご好評を頂きました。

菊池 憲之

菊池 憲之

鉱物の茶碗は大変珍しい

―江戸切子の瑠璃被(るりきせ)義山平茶碗や縞瑪瑙(しまめのう)の茶碗なども紹介されています。ガラスや鉱物の抹茶碗は茶道具として一般的ですか?

鉱物の茶碗は大変珍しいですが、ガラスの茶碗は一般的にも多く用いられております。

菊池 憲之

菊池 憲之

ガラスは涼味を感じさせるため、夏の茶道具として使用されることが最も一般的ですね。

また、他にもクリスマス茶会などではロウソクに照らされたテーブル上でお点前をする際に、幻想的な光の演出を表現するために用いられたりします。

祖父の遺品に見守られて

―いちばん気に入っている茶碗や茶道具は?

茶碗としていちばん気に入っているものは、やはりパート・ド・ヴェール茶碗です。

菊池 憲之

菊池 憲之

現代アートにも通じる独創的な色と光の景色がある一方、侘び茶の創始者である“村田 珠光”が唱えた精神性「冷え・凍え・寂び・枯れ」にも適う趣を内包しているように思います。

また、茶道具としていちばん気に入っているのは、江戸指物の指物師だった祖父(作家名・菊池 春重)の遺作の“煙草盆(『本桑手付菊桐透煙草盆“ほんくわ てつき きくぎりすかし たばこぼん”』という名称の作品)”ですね。

菊池 憲之

菊池 憲之

祖父は、私が0歳の頃に亡くなったので記憶はないのですが、茶事で煙草盆を用いる度に祖父に見守られているように感じています。

そんな話を当店で個展を開いた作家さんにお話しましたら、わざわざ祖父の煙草盆に合わせて“火入”を作ってくださったこともありました。

静謐を感じさせる姿でお点前

―茶道というと静謐で優雅なイメージですが、体力が必要だそうですね。

茶道は茶席を設えてお客様をお招きするために、様々な準備が必要です。

茶道具を出し入れするのみならず、灰や炭を洗って干したり、掃除をしたり…。

菊池 憲之

菊池 憲之

また茶会や茶事が催される際には、茶席でお客様をおもてなししながらも、懐石料理や露地の設えなど様々な水屋作業は同時に行われています。

そのため、多くのことに細心の注意を払わなければなりません。

表面上には見えることのない作業をこなしながら、いざお茶をお出しするときには一切の疲労感を表に出さず“静謐を感じさせる姿”で美しいお点前をするためには、どうしても体力が必要ですね。

菊池 憲之

菊池 憲之

体力づくりのために走ったり散歩したりしますが、茶道の稽古を行う際にも少なからず水屋作業は行います。

また日々の家事手伝いも率先して行っていれば、茶道で必要な体力は自然と養われてまいります。

勝敗のない世界で成長する

―武道を嗜んでおられたそうですが、茶道にも役立っていますか?

「道は道に通じる」と言われるとおり、武道で培った経験は茶道でも大変役に立っております。

菊池 憲之

菊池 憲之

中でも特に長く合気道を嗜んでおりましたが、合気道も茶道も“勝敗のない世界”。

勝敗という物差しで比較されることがない分、自分自身の意志で技術や知識の向上に努めなければなかなか成長できない厳しい世界でもあります。

菊池 憲之

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それだけに、率先して学び、稽古に励む心持ちや継続して積み重ねていくことの大切さ。

また不安を堪えて一歩踏み出す気概など、合気道で学んだ様々なことは茶道の世界でも活かされております。

何気ない生活が面白く感じられる

―茶道の魅力を教えてください。

茶道の魅力は、日本のあらゆる伝統文化や伝統工芸が集約された総合文化であるということ。

ただ一碗のお茶を差し上げるために、様々な茶道具をはじめ、茶室という建築文化や露地という庭園文化にまで影響は及んでいます。

菊池 憲之

菊池 憲之

そうした伝統文化や伝統工芸というものが特別なものではなく、ごく普通の日常生活の中に驚くほど溢れているということを自然と教えてくれます。

だからこそ、日々の何気ない生活そのものが、実に面白いと感じられるようになりますね。

菊池 憲之

菊池 憲之

また、茶道具には何百年という時代を経て、今に伝わる名物も存在します。

歴史に名を残す茶人や武将が所持していた名物に触れるとき、時代を越えて繋がりを感じる喜びは茶道の世界ならではといえます。

菊池 憲之

菊池 憲之

今まで気にも留めなかった地元の神社仏閣や小さな史跡に至るまで面白味を感じられるようになり、四季折々の風物詩を心から楽しめるようになったのも茶道のおかげだと思います。

経験が無い方でも参加できる

美しい茶碗のみならず、知れば知るほど興味はつきない茶道の世界。

茶人として奥が深い茶道の世界をわかりやすく伝えてくれた菊池さん。

彼が勤務する『(有)菊池商店』では、定期的にイベントや講習会を開催しているという。

「季節の茶事」や「裏千家七事式勉強会」は茶道歴(5年〜10年程度)を必要とするが、「清友茶会」は茶道のご経験がない方でも楽しんで参加できるとのこと。

夏の暑い中、見目に涼やかな茶碗でゆったりとお茶を嗜みながら過ごす時間は格別のものだろう。

菊池 憲之

菊池 憲之

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