堅実女子のお悩みに弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。今回の相談者は、夫の暴力に悩む亜希子さん(32歳・保険会社勤務)です。

「出会った頃は優しかった夫が、結婚して一緒に生活するようになってから人格がガラッと変わってしまいました。結婚してから2年になります。

私たち夫婦は、私が借金を返すために働いていた居酒屋のバイトで知り会いました。10歳年上の夫はそこの店長で、フランチャイズ展開する居酒屋チェーンの社員で幹部候補と言われているほどデキる男性でバツイチです。

後輩や従業員の面倒見もよく、そのお店は常に売り上げトップ。彼の年収は800万円近くあり、仕事熱心で見た目もカッコいい。一流大学を出ていて言うことナシの男性でした。彼に憧れている人も多く、まさか私が彼と結婚できると思わなかったくらい、ハイスペック男子でした。結婚するときは、彼が借金の半額(エステのローン50万円)を返済してくれるなど、私に対して”守ってあげたい”といつも言ってくれる人だったんです。

それで、結婚して家賃を払わなくなくてよくなったので、私もバイトをやめて就職活動に本腰を入れ、保険会社に内定をもらいました。思えばその頃から夫の態度は変わっていたかもしれません。その後、会社員の仕事に集中し、夫に借りた50万円を全額返済しました。それからは、生活費の半額も私が負担するように申し出ています。

それなのに、私がしっかりするようになってから、夫が家で暴言を吐くようになりました。残業しているかどうかLINEで何度も問い合わせて来たり、休日に家事ができていないことを指摘したり、私が話しかけても無視したり……。私が夫婦関係に応じないと“オマエはバカ女のくせに何なんだよ”と壁を殴っていました。

挙句の果てには、実家に行ったときに、親に借金をバラしたり、元カレのことを親に告げたり、しつこく過去の忘れたいことを蒸し返したり、暴言や嫌がらせを行ないます。今では、ダンナの足音がするたびに、吐き気がして、不眠気味に……。離婚したいのですが、この場合は慰謝料を取れるのでしょうか。

そのためにはメモや録音が必須ですか」

柳原桑子先生のアンサーは……!?

妻に対して暴言を吐き続ける夫に対して、有利に離婚をすすめるためにはどうしたらいいのか、柳原桑子先生のアンサーは以下です。

暴力というと、一般的に殴る蹴るなどの身体に向けた物理的暴力を連想しますが、暴言や嫌がらせなども度を越せば精神的暴力となり、慰謝料の対象になります。
しかし、暴力があったとしても、相手が認めなければ、立証する必要があるため、記録化すべきです。
日記、録音、相手からのメールなど、証拠として残せそうなものを記録して、弁護士など専門家に相談してはいかがでしょうか。

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その後、亜希子さんはiPhoneの録音機能を使い、夫の暴言を記録。お金を貯めて別居の計画を立てています。

「暴力や暴言を吐くときもあれば、優しいときもある。ずっと一緒にいると離れられなくなりそうなので、なるべく早めに別居に踏み切ろうと思っています」と語っていました。

守ってあげたい女性が好き=自分より能力が劣る女性が好き……そういう男性は妻のキャリアアップの足を引っ張る傾向があるとか。



■賢人のまとめ
録音、相手からのメールなどを集め、専門家に相談するのが解決への近道です。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/