『地域×クリエイティブ×仕事 淡路島発ローカルをデザインする』
(服部滋樹・江副直樹、平松克啓、茂木綾子、やまぐちくにこ、西村佳哲、青木将幸、堀田裕介、中脇健児、鬼本英太郎、藤澤晶子 /学芸出版社)

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 田舎暮らしをしてみたい、あるいは都会から地元に帰ろうと思ってみても、「地方には仕事がない」。いかに政府が地方創生を声高に叫ぼうが、一般的にはこんなイメージが強いのではないだろうか。

 本書『地域×クリエイティブ×仕事 淡路島発ローカルをデザインする』(学芸出版社)は、淡路島での雇用創造プロジェクト「淡路はたらくカタチ研究島」に係わった人たちの手記をまとめたものだ。特徴は、プロジェクトが単に雇用創出を目的とせず、「はたらく」とは何か? から出発したところある。その結果でてきたものは、幾通りもの「はたらくカタチ」だった。

■考えるべきは幸福のカタチ

 スーパーバイザーを務めた江副直樹氏は、地域活性化の成功とは、そこに暮らす人々がそこに住むことに誇りを持てること、と結論づける。地域をどうすれば元気にできるか? をつきつめると、結局は住む人がどうしたいかが問われることになる。最後は幸福感の話につながる。どんな状態を幸福と思うのか。考えるべきは、幸福のカタチ。講座も、研究会も、商品開発も、イベントも、結局はそこへ至る道標に過ぎない、という。

■自分らしい仕事づくりをカタチにする

 中脇健児氏は自身の担当した研究会について、次の2つを大前提とした。島外向けの個性ではなく、島内向けの個性を磨くこと。続けていくための動機は「儲かる」「賑わう」ではなく「楽しい」であること。

 また青木将幸氏の研修の特徴は、参加者が自分の頭で考え、手を動かしてそれを書き、口を動かしてそれを発表し、耳を傾け他者の声を聞く機会が多い、という点にあるという。教えるよりも、参加者が持つ力を発揮する場づくりに努めたのだそうだ。

 だからこのプロジェクトから生まれたものは、こうした事業によくある地元の特産物を使った商品開発だけにとどまらない。

 淡路島で4代続く呉服店を営む新見久志さんは、長年押しとどめていた夢を実現させるべくオーダーメイド専門のブランドを立ち上げ、中山由佳里さんは神戸から淡路島に移住し、研修・人材事業を中心とした会社を立ち上げた。中山さんは、「はたらくカタチ」に正解なんてなく「くらし」と「はたらき」は白黒つけられるものではないと淡路島にいることで見えてきた、という。

■今必要なのは“意味ある仕事”を作り出すこと

 本書は「地域ブランディングの教科書」と銘打ってはいるが、地方に住む人たちにも都会に住む人たちにも改めて「はたらく」を問い直してくる熱量がある。

 講師として参加した西村佳哲氏の言葉は、はたらくことの根本を問う。

しかしどんなにはたらき方を変えて、はたらき方がどれだけ素敵なものになったとしても、仕事そのものがあまり意味を感じられないものだったら、世界は貧しくなっていくだけだ。(中略)少なくとも、はたらいている本人がその仕事の意味や価値を心から信じて、愛していなければ、はたらき方がどんなによくなったところで世界を生きている甲斐が感じられる場所にしてゆくことはできない。(中略)だから今必要なのは、はたらき方の見直しや改革ではないんじゃないかな。それ以前に“意味のある仕事”を作り出すことだと思う

 はたらくことが金銭的な享受のみならず他者との関係のうえに成り立ち、「はたらく」と「生きる」がつながっていて、はたらくことと幸福の追求がイコールと考えるのであれば、どこの場所に住もうとも本書で提示されている事柄は大いに参考になるだろう。

文=高橋輝実