まず治療費の多寡について踏み絵を迫られる

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 なぜ歯医者絡みのトラブルや疑問がこんなに多いのか。背景には、「患者のためになる治療はカネにならない」という構造的欠陥がある。ジャーナリスト・岩澤倫彦氏が歯科業界の問題の元凶にして、最大のタブーである「値段」に斬り込む。

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 初診の歯科クリニックを訪ねると問診票の記入を求められるが、そこには必ずといっていいほど治療方針の意思確認の設問がある。

「保険診療の範囲内での治療を希望しますか」
「自費診療を含む最善の治療を希望しますか」

 実はこの設問が歯科クリニックにとって、治療費を多く払う患者か否か、最初に選別する手段になっていた。いわば「踏み絵」だ。いわゆる保険診療は、国の諮問機関(中央社会保険医療協議会)が全国一律の公定価格を定めている。

 銀歯の材質から歯の型取りまで、すべての治療内容が細かく「診療報酬点数」として規定され、たとえば「初診料」は234点。点数×10円を歯科クリニックが保険組合に請求し、歯科医の売り上げは2340円、患者の負担は700円となる(国民健康保険の3割負担の場合)。

 歯科関係者によると、一人あたりの診療点数が大きいクリニックには厚労省の指導医療官の厳しい指導があるという。表向きの目的は不正請求のチェックだが、実態としては医療費削減のための圧力だ。つまり、保険診療では売り上げを大きく伸ばせない。

 一方、自費診療は厚労省に関係なく各クリニックで自由に価格を設定可能なので、経営的には高額な治療費を請求できる自費診療の患者のほうが利益になる。日本の歯科診療は、「保険と自費」の二重構造で何とか維持されているが、それが歪みの元凶でもある。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号