EXILE

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 人気ダンスボーカルグループ・EXILEなどが所属する芸能事務所、LDHの驚愕の実態を、「週刊文春」(文藝春秋/7月21日号)が報じている。同誌によれば、役員ら所属タレントによる社員へのパワハラ行為が横行するほか、残業代未払いの超長時間労働が常態化し、新入社員が半年ほどで全員退職するほどの事態に陥っているという。

 LDHは同誌の取材に対し、「1カ月ほど前からコンプライアンス体制構築を専門とする弁護士に依頼して幹部に対する指導や研修を実施」したとしているが、上記が事実であれば、LDHは企業としてどのような責任を問われるのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。

●労働法上の問題

 今回、話題に挙がっている芸能事務所、LDHは「株式会社LDH」という法人ですので、「所属タレント」や「所属アーティスト」は別として、そこに勤務する方々はマネージャーも含め法律上の「労働者」となります。したがって、当然のことですが、残業が発生すれば残業代を払わなければなりませんし、命令することができる業務の内容にも限界があります。

 まず、残業代を払わなければ6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることもあり得ますし、月45時間を超える残業は、たとえ会社と従業員の間で残業に関する、いわゆる「36協定」を締結していたとしても原則として違法となります。

 かつて、大手家電量販店が残業代を支払わずに労働基準法違反で東京地検に書類送検されたこともありますし、残業代不払いは、単なる「お金」の問題だけで済まない場合もあります。

 次に、LDHは、あたかも「業務命令」のように私用雑用をおしつけたり、長時間の運転業務を行わせたりしているとのことです。

 そもそも、「業務命令」とは、「雇い主が業務遂行のために従業員に対して行う指示または命令」を意味します。しかし、雇い主であればどんな業務も命令できるわけではなく、「従業員がその労働力の使い方を雇い主に委ねたと考えることができる合理的な範囲を超える命令の場合、業務命令権の濫用となる」と考えられています。この場合、「業務命令」に逆らったからといって雇い主は懲戒処分を行うことはできません。

 今回、深夜に、そもそも「業務」とは無関係の私用雑用を行わせたり運転をさせたということであれば、従業員としては「私の労働力をそんなことに使うことを会社に委ねたことはありません」となり得るでしょうから、この点でも労働法上の問題が残ります。

●刑法上の問題も

 さらに、土下座強要、手術強要、大量の飲食の強要、丸刈り強要も行われていたと報じられていますが、これらは、単なる労働法上の問題を超えて刑法上の問題が生じます。

 すなわち、刑法は、生命や身体、自由、名誉、財産に害を加えることを告げながら、本来、行う必要もないことを強制することを「強要罪」として3年以下の懲役刑を設定しています。

「マネージャーに昇格させない」「生き残れない(この会社で勤務できない)」といった名誉(昇給・昇格を否定されるという意味で)や財産(職を失うという意味で)を害する発言をしながら、土下座や手術、過剰な飲食を強制することは、どう考えても「強要罪」が成立することとなります。

 この手の団体などは、「ワルさ」ぶって、それを“芸風”にしたり、社是にしたりして、それをあたかも“体育会系”“上下関係は絶対”などをうそぶいて「ファッション」のように自慢する風潮があるようですが、はっきりいって「暴力団事務所」と同じレベルです。私には「オレたちの団体は、暴力団事務所の上下関係をまねしています」としかみえません。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)