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AWSを活用して、牛の管理を効率化するクラウド型ソリューションを提供するファームノート。現在、自社開発のセンサーを牛に取り付けてデータを分析するIoTサービスのリリースを予定している。今回、代表取締役の小林晋也氏に同社が手がけるIoTソリューションについて話を聞いた。

○センサーと人工知能による分析でより高度で精確な管理を実現

ファームノートは、酪農・畜産分野にフォーカスを絞り、牛の管理を効率化するシステムとしてAWSを活用したクラウド型ソリューション「Farmnote」を提供している。

現在の「Farmnote」はフリーミアム型のサービスで、飼育頭数が100頭以下の小規模農家は無料で利用できるが、それを超える規模の場合に1頭当たり40〜100円の月額料金がかかるという形式をとっている。1200の農家が利用しており、管理頭数は12万頭近く。これは日本全体で飼育される牛の3%にあたる数だ。

「Farmnote Color」と呼ばれる新サービスでは、自社開発のセンサーを牛の首に取り付ける。このセンサーは加速度センサーを内蔵し、牛の状態を取得するのだという。

牛が眠っているのか、活動しているのか、発情しているか、反芻がどのくらいあるのかなどをFarmnote Colorが判断し、ユーザーが所有しているスマートデバイスに通知する。それによって、無駄のない飼育管理が行えるようになるわけだ。

発情行動を取得するためのセンサーとしては、これまで万歩計のようなものが使われてきたが、足への取り付け自体が面倒であるとともに、取得できるデータも歩数しかなかった。また、サーバクライアント型のシステムであったため、牛の状態を確認するには、PCがある場所に戻らなければならなかった。

「Farmnote Colorではクラウド上に大量のデータを蓄積しますし、アルゴリズムもクラウド上にありますから、センサーを購入した後も常に最新のシステムを使うことができます。センサーのデータと入力する飼育データを組み合わせることで、さまざまな牛の兆候を推測できます」と小林氏。

取得したデータを分析するにあたって、牛の特徴も考慮される。数日間の行動データから動き回る癖があるかどうかなどを学習して、発情を検知する。より精度の高い判定が行えるわけだ。今後は、牛の病歴や治療歴といった過去のデータと、センターから取得されるデータを紐づけることで牛の状態を的確に判断することを目指すという。

「例えば、妊娠確定の判断をした後に、発情の兆候が出ていれば流産したのだとわかります。センサーからさまざまなデータを取得しようとするとセンサーが高額になってしまいますが、加速度センサーのデータと前後のデータを紐づけることでいろいろなことが見えてくるのです。シンプルなセンサーでも分析と組み合わせれば多くのものが見えてきます」と小林氏は展望を語った。

○当事者の需要を理解するためのファン獲得が成功のカギ

すでに多くのユーザーを獲得し、順調な展開を見せているファームノートだが、IoTビジネスを成功させる秘訣はどこにあるのだろうか。

この問いに、小林氏は「自分自身がお客さまを徹底的に理解すること」と答えた。「Farmnote」の場合は酪農家が実際に何を欲しているのか、何に困っているのかをわが事として理解できなければならない。しかし、小林氏自身は酪農家ではない。そこを補うのが「Farmnoteアンバサダー」の存在だ。

「第一にファンの獲得を掲げて、ユーザーを増やしてきました。私たちの経営において、最も重要なことがカスタマーサクセスです。開発も酪農家の皆さんとディスカッションすることで、お客さまの要望に合致したものを作ることができる。この会話なくして開発はうまくいかないと考えています。こうして協力してくださる皆さまが、Farmnoteアンバサダーです」と語る小林氏は、毎年、農業関係者とITベンチャー"ファームノートサミット"などを引き合わせるイベントを開催している。

「技術の開発は誰でもできることです。しかし、顧客にどれだけ入りこめるかは、信頼関係にかかっています。ビジネスでは、人間の信頼関係をどれだけ築けるかが競争力になるのです。その上にプロダクトが乗ってくると考えています。絶対ユーザーを裏切らなければ私たちが勝つと考えています」と小林氏は力強く語る。

最初の目標としてファン獲得を掲げ、次の1歩として考えていたセンサーによる新たな展開も実現した今、さらに先の展開としてファームノートが狙っているのはグローバルビジネスだ。牛1頭当たりの年間搾乳量は世界トップであるイスラエルが1万2000キログラムであるのに対して日本の平均は8000キログラム。この差を縮めて日本の酪農家の収益を伸ばしてゆくとともに、世界での展開も狙っている。

「最も市場が大きいのはアメリカですが、すでに管理システムもある程度使われています。一方、そうしたものが普及しておらず技術的にも低い水準にあるのが中国や東南アジアです。どちらにアプローチするかは検討中ですが、いろいろ考えています」と小林氏。

大量の牛をより手軽に効率的に管理したいという需要にも、センサーとクラウド分析による的確な判断で牛の最適な管理を実現できる「Farmnote」だけに、今後の活躍が期待できそうだ。

(エースラッシュ)