台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたシャープから、人材が他社へ流出している。経営コンサルタントの大前研一氏が、再生をはかるシャープの懸念材料である人材流出について、今後、どのように払しょくされる可能性があるかを解説する。

 * * *
 シャープの人材が他社へ流出していることが懸念材料に挙げられる。とりわけ日本電産には、2014年に元社長の片山幹雄氏が副会長に就任して以来、元副社長の大西徹夫氏、元常務執行役員の広部俊彦氏、元執行役員の毛利雅之氏らが相次ぎ入社した。日本電産の永守重信会長兼社長は、シャープの部長級の採用が100人以上に達したことを明らかにし、さらに「希望があれば300人ぐらいは採用したい」と語っている。

 もし鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長が人材流出に本気で対処しようと思えば、日本電産を丸ごと買収するという“ウルトラC”もあると思う。売上高約16兆円の鴻海にとって、同約1兆1800億円の日本電産を呑み込むことは、さほど難しくないからだ。

 そうすれば、鴻海は製造からブランド、素材、部品、機械、研究開発まで一気通貫で揃った正真正銘の日本企業になることができる。製造拠点の中国と研究開発拠点の日本を気楽な台湾からオペレーションするのだから、これほど理想的な企業形態はないだろう。

 一部マスコミでは、郭会長と永守会長兼社長は「昵懇(じっこん)の仲」だから、鴻海と日本電産がシャープを挟んで手を組み、EV(電気自動車)の開発・製造に進出する可能性も取り沙汰されている。これは、ともに貪欲に成長を追い求める郭会長と永守会長兼社長の性格を踏まえると、「なきにしもあらず」ではあると思う。

 このように考えてくると、ジリ貧になっている他の家電メーカーを尻目に、いったん「負けた」と思われたシャープが最後には勝ち組になっているかもしれない。ラオックスと同じく「最初に外資に買われてよかった」という皮肉な結末は、十分あり得るのだ。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号