『AMY エイミー』 (C)Nick Shymansky Photo by Nick Shymansky

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『AMY エイミー』

5年前、27歳の若さで亡くなった天才シンガー、エイミー・ワインハウスの半生を追い、今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝いた『AMY エイミー』が、ようやく公開される。

巨大なビーハイブ・ヘアと濃いアイメイク、落書きのようなタトゥー。そんなパンクな外見からは想像できない、ジャズやソウルの影響の濃い歌声はトニー・ベネットやミック・ジャガーにも絶賛され、2008年のグラミー賞で5冠を達成した。だが、音楽に興味のない人々にとっては、チンピラ風情の夫とドラッグにはまってトラブルまみれのお騒がせバカップルという印象しか残せていない。この映画はそんな負の部分も、アーティストとしての栄光もすべて含めて成り立った壮絶な生涯を描いている。

オープニングは1998年、14歳の少女エイミーが親友の誕生日を祝って歌うホームビデオの映像。すでに本格的な歌声にダイアモンドの原石を見る思いだ。10代でレコード会社と契約し、駆け出しアーティストとして音楽活動に勤しむエイミーは明るく、女友だちとふざけ合う普通のティーンエイジャーでもあった。同時に妥協しない真摯なミュージシャンでもあり、両親との複雑な関係や恋愛にのめり込むエモーショナルな女性。恐ろしいほど正直で素直で、それゆえに彼女の作る歌はまるで自伝のようでもある。身を削るように、という表現がこれほど当てはまるものなのか。作中に登場する楽曲の数々はその時々の恋愛や心模様が投影された歌詞が沁みる。

監督のアシフ・カパディアはドキュメンタリー『アイルトン・セナ〜音速の彼方へ』などを手がけ、英国アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞と最優秀編集賞をW受賞している。彼はエイミーの家族や幼なじみ、スタッフ、彼女の才能を高く評価したミュージシャンたちに取材を行い、彼らの証言と貴重なプライベート映像で作品を構成している。希望に満ちたピチピチの女の子が突然訪れた名声に戸惑い、アルコールやドラッグ、一緒に堕落してくれる男に依存し、坂道を転げ落ちるように破滅していく様子が手に取るようにわかるのは、プライベートの映像や写真が豊富に提供されているからなのだが、こんな一瞬をわざわざカメラに収めるような人物を彼女は大切にしていたのか、と思いたくなるような場面もある。

どんなに荒れた生活を送っても、音楽と接する時だけは純粋に戻る。憧れのトニー・ベネットとレコーディングする時など、本当に少女のような表情になる。音楽だけは、いつも彼女を幸せにする。そして彼女の音楽への献身ぶりにも胸を打たれる。やがて、それさえも叶わない状況になっていくのは見ているのもつらい。

自らを傷めつけるエイミーを見かねて、救いの手を差し伸べようとする友人たちもいた。それでも、こういう風に生きることしかできなかった。比類なき才能に恵まれた女性が名声のもたらすダークサイドに呑み込まれていく悲劇が、素晴らしい音楽を生み出すという皮肉な奇跡。あまりにもドラマティックな生涯に打ちのめされるのと同時に、猛烈に彼女の残した歌を聴きたくなる。2011年7月23日の急逝から5年。残ったのはパパラッチによって広められた醜態ではなく、彼女の音楽なのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)

『AMY エイミー』は7月16日より全国公開。掲載

冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。

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