落ち込んだときに「食べ放題」のお店に入るのはやめた方がよいようだ。

 近年、感情的な食行動のリスクに関する研究報告が増えている。米セント・ボナベンチャー大学の研究者らは、学生ボランティア154人(男性56人、女性98人)を対象に、気分と食行動との関連を調べた。

 学生たちの平均年齢は19.7歳でBMI(体格指数)の平均は「やや肥満気味」の26.1だった。ちなみに、日本の基準ではBMI25以上は「肥満」に相当する。参加者はうつ病評価尺度の質問に回答し、80人が正常、74人が軽〜中等度のうつ病と評価された。

 感情と食行動との関連を調べるため、参加者には「一番の親友が結婚して遠くに行ってしまった」「誰もあなたの誕生日を覚えていない」などの「悲しい話」を、さらに日をおいて、今度は「ニュートラルな話」を読んでもらった。例えば「朝起きて、服を着替えて朝ごはんを食べる」など、日常的な風景描写を集めた小話だ。

 2パターンの小話を読んだ後、参加者は静かな部屋に用意されたビュッフェの席に着き、満腹になるまで食べるように勧められた。

 ビュッフェに用意されていた食物は、低カロリーの果物や野菜と、高カロリーのカップケーキやクッキーなどのスナックである。

 その結果、肥満でうつ病と評価された参加者は「ニュートラルな話」と比較し、「悲しい話」を読んだ後のカロリー摂取量が有意に高かった。低カロリーのヘルシーフードを避けたのではなく、さらに高カロリーのスナックに手が伸びたためで、負の感情は「より甘くて高カロリーの食べ物」を求めるスイッチを押すらしい。

 研究者は「悲しみ」に突き動かされる食行動が、うつ病や体重に及ぼすリスクを強調している。

 日本でも「食べて飲んで憂さ晴らし」はおなじみの光景。時折ならよいとして、あまりに抑うつ感が強いときは「食べ放題・飲み放題」を避け、普段のごはんをゆっくり噛みしめよう。

 適切な食行動は自信と自己効力感を高める、というエビデンス(科学的根拠)もあるのだから。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)