才能のある中学一年生投手の原田巧と、原田の投球に惚れこんだ同学年捕手、永倉豪。
今夜スタートするアニメ『バッテリー』(フジテレビ毎週木曜24時55分〜 今日は25時5分から)の主人公二人である。
同名の原作小説(あさのあつこ/全6巻)は、累計1000万部を超えるベストセラーであり、テレビドラマにもなった。コミック版は現在も『月刊Asuka』にて連載中(作画・柚庭 千景/最新刊8巻)。


成長期の投手と捕手といえば、究極のバディものである。
要求通りのコースに豪速球を投げ込むことができる原田。ピッチャーが打たれなければチームが負けることはない。だが、彼にとって野球は楽しむのではない、勝つためにやっている。
捕手が投手に振り回されるのは野球漫画のよくあるパターンではある。永倉もそうだ。試合に出られなくなるかもしれないのに、頑なに監督の言うことを聞こうとしない原田に腹を立てたり、彼のずば抜けた才能を実感して心をすり減らしたりもする。


野球初心者の達也の扱いに苦労した『タッチ』の孝太郎、ワンマンプレーに走る安仁屋にミットを投げつけた『ROOKIES』の若菜、チームメイトのエラーを怒鳴る吾郎に困惑し続けていた『MAJOR』の小森などなど。

『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ/2008年アニメ化)もそうだ。主人公三橋とバッテリーを組む阿部は永倉以上の配球オタク。相手バッターのルーティンワーク、前打席とのフォームの違いを見逃さない観察力を持つ。阿部は、これまでクセのある投手とバッテリーを組んできた。中学時代には豪速球ノーコン投手・榛名と、高校では泣き虫コントロール投手・三橋と。
『バッテリー』に引けをとらない捕手の心理描写のこまやかさ。そこから相方である投手の姿も立ち上がってくる。

『バッテリー』でいちばん気になるのは「周囲の人間と衝突が多い」ような投手と、永倉はうまくやっていけるのだろうかということ。『バッテリー』と『おおきく振りかぶって』──人気野球作品の登場人物を比べてみることが、ヒントになるかもしれない(どちらも女性作家作品だ)。表にしてみると以下のようになった。


原田は、三橋要素4割、榛名要素6割を混ぜ合わせた感じになる


三橋は球が遅いが、ストライクゾーンを9分割に自在に投げ分けられるという驚異的なコントロールを持った弱気ピッチャー(精密機械と言われたプロ野球選手・北別府学をもってしても4分割のコントロールだったらしい)。
中学では理事長の孫ということで特別待遇を受け、打たれてもボロ負け状態でもマウンドに立ち続けていた。
イジメに耐えられず、他県の高校へ。野球部に入ろうか悩んでいたところ、阿部と出会う。要所要所で弱気になりながらも、阿部のミットに首を振らずに要求通りに投げ込み続けていた。

中学の榛名は一日80球しか投げない。フォアボールで満塁のピンチを招いても制限に達したらマウンドを降りる男。高校時代にはサウスポーにして140km/h後半の速球を投げ、ワンマンチームでありながら甲子園常連校とそこそこの試合をする。阿部と出会う前のチームでは監督に酷使されて故障。性格がやさぐれていたことがあった。

コントロールのいい投手相手だと捕手は楽しい


キャッチャーの阿部は三橋に対してはなんとかしてあげたい、勝ちをつけてやりたいという気持ちで献身的に支え続けていく。榛名に対しては憎しみを持ちつつも、投手としてしっかり捕手に向き合ってほしいという気持ちでミットを構えていた。
これらの気持ちをトータルしたものが、永倉の捕手としての心情に近いものになるんじゃないだろうか。

数年前、プロ野球中継の実況席で、阪神タイガースの現一軍作戦兼バッテリーコーチを務めている矢野燿大が、「(現阪神投手)メッセンジャーはカーブ、ストレート、コントロールがいいのでキャッチャーをやっていて楽しい」と話していたことがある。
『バッテリー』の原田はまだ変化球を投げることはできない。しかし、キャッチャーにとっては楽しさを感じられる相手であるはず。
しかし、中学生は反抗期、思春期に差し掛かる年代。つい考えすぎてしまう。アニメでは、永倉はキャッチャーを楽しみ続けることができるのだろうか。原田と一緒に野球を楽しめる日が来るのだろうか。
(山川悠)