韓国の根深い問題となっている精神病院への強制入院。問題を是正するための改正精神保健法が来年度からの施行を控えているが、法の実効性について議論が巻き起こっている。

7月8日、ソウル市議会が開催した「改正精神保健法についての大討論会」でトブロ民主党のキム・ヘリョン議員は、改正精神保健法の内容を分析した結果、「精神障害者の治療に関して、精神障害者本人の意見は重要でなく、義務保護者と医療者の合意と確認さえあれば隔離治療が可能な状況」と問題点を指摘した。

韓国の平均入院日数は世界最高水準

同氏によると、韓国では2011年基準で精神医療機関の入院者用ベッドが8万床を超えているのだが、これは経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで日本の次に多い数だという。

さらに精神病患者の平均入院日数を見ると、OECD加盟国は平均10日〜35日だが、韓国は世界最高水準の251日となっているそうだ。

(参考記事:健康な人が“強制入院”させられる!? 韓国で精神病院の患者数が増加するワケ

また、「改正精神保健法に対する大討論会」に出席した大韓精神保健家族協会、韓国精神障害者協会なども、問題点を指摘している。関連分野の専門家たちが強制入院患者の人権保護のための裁判所判事の審査手続きが必要と意見を提示していたが、裁判所を通じた人権保護方案が漏れていたという。

要約すれば、改正精神保健法が精神疾患者の強制入院を根絶できるかどうか懸念されるということだろう。

警察による強制入院!?

問題点はまだある。

改正保健精神法では、保護者の同意なしに警察の要請によって精神疾患者を入院治療できるとされている。

改正案によると、警察は危険性が疑われる精神疾患者に対して精神科専門医に行政入院を要請することができ、専門医は市・郡・区庁長に入院を申請、市・郡・区庁長は再び専門医の診断を受け、精神疾患者を入院させることができるようになる。

もちろん、三段階にわたって2週間の診断期間を必要とするが、すでに警察による行政入院が行われている状況で、これを改正法案に“明示”する必要があったのかと問題視されている。公権力の濫用とともに、改正前よりも深刻な人権侵害が起きかねないという懸念だ。

昨年、国家人権委員会は「家族による精神病院の強制入院制度は憲法に違反する」という意見書を憲法裁判所に提出したことがある。

国家人権委員会は「精神保健法第24条1、2項の保護義務者2人の同意と医師1人の診断で、精神疾患者が望まないとしても6カ月間、強制的に入院させる制度は、患者の自己決定権と身体の自由を過度に制限する」という意見書を提出している。

精神病院への強制入院がひとつのイシューになっている韓国。精神保健法の改正案に対する論議は、当分収まりそうにない。

(文=S-KOREA編集部)