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三菱重工業(MHI)と千葉工業大学(千葉工大)は7月12日、防爆性能を持たせた災害対応ロボット「桜II号(防爆仕様)」を開発したと発表した。引火性ガスの中でも爆発を引き起こす危険性が小さいため、トンネル内での災害や石油化学プラントでの点検等に使える。日本国内で防爆認証(型式検定)を取得した移動ロボットは、これが初めてだという。

高度経済成長期以降に作られた社会インフラの老朽化が大きな問題になりつつある。トンネル内で大きな事故が起きた場合、ガソリンなど引火性ガスが充満している可能性があるため、すぐに入って内部の様子を確認することが難しい。もしガスが充満していたら、まず換気する必要があり、中に入るまで数日かかることもあった。

防爆性能を持たせたロボットならば、引火性ガスが充満している中でも、爆発などの2次災害を引き起こさずに活動できる。事故や災害では、対策を検討する上でも、状況を知ることがまず重要。防爆ロボットは現場に到着後、短時間の準備作業ですぐに投入できるので、内部の情報を速やかに収集することが可能だ。

爆発に耐える「耐爆」と混同しがちだが、「防爆」とは、自分自身が爆発の原因とならないようにすること。引火性ガスが充満している中で、火花や高熱は厳禁だ。そうした環境で活動するロボットには、特殊な技術が必要になる。

桜II号(防爆仕様)は、千葉工大が原子力分野向けに開発した「櫻弐號」をベースに、改良を行った。MHIは防爆仕様のロボットアームを開発した経験があり、その技術が活用されているという。大きさ(サブクローラ収納時)は710(L)×420(W)×540(H)mm、重さは60kg。櫻弐號と同様に、最大45度の階段でも昇降できる、高い走破性能を持つ。

桜II号(防爆仕様)では、モーターやコントローラなど、電気機器は全て「内圧容器」に格納。気圧を高めた窒素を封入しておくことで、周囲の引火性ガスが内部に侵入することを防ぐ。高圧を維持できるのは3〜4時間程度だが、バッテリ持続時間が2.5時間なので運用に問題は無い。内圧は常に監視しており、破損等で漏洩したときは電源を遮断する。

バッテリとなるリチウムイオン電池はさらに、頑丈なアルミ製の「耐圧防爆容器」に格納。内部のリチウムイオン電池がたとえ爆発したとしても、それによって周囲を引火させることがないようになっている。バッテリは耐圧防爆容器ごと交換する方式で、調査から戻ったロボットのバッテリを交換して、すぐに再出動することができる。

搭載カメラの映像を見ながらの遠隔操縦が可能。通信可能な距離は、無線で100m、有線で1km。防爆のために、通信ケーブルはメタル線から光ファイバーに変更した。また火花の発生を抑えるために、クローラには帯電しない導電性ゴムが採用されている。

大きなポイントは、水素ガスの防爆にも対応させたことだ。引火性ガスの中でも、水素ガスは引火性と拡散性が高く、防爆性能を持たせるのは技術的に難しかったが、これからの水素社会を見据え、チャレンジしたという。危険場所のランクは「ソーン1」に対応し、オイルタンク内部(ゾーン0)以外のほとんどの場所で使うことができる。

桜II号(防爆仕様)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」において開発された。これは2014年度に始まった4年間のプロジェクトで、今後は、桜II号(防爆仕様)に搭載できるロボットアームの開発や、自動走行化などに取り組み、用途拡大を目指すという。

(大塚実)