82年、86年W杯それぞれの準決勝で、フランスを蹴散らしたのはドイツだった。勝者ではあるが悪役。可愛げのない強者だった。しかし今回、ドイツとフランスの関係は逆転した。

 試合を押していたのはドイツ。フランスはPKでラッキーにも先制。後半には、ダメ押しのゴールを奪い2−0で勝利したが、その2点目のシーンでは、ポグバにゴールライン際から決定的なラストパスを送られた。フィジカルにやられた恰好だった。80年代、フィジカルで勝ったフランスに、ドイツはフィジカルで屈した。その褐色のアフリカンパワーに。

 だが、そのアフリカンパワーはコンスタントではない。アフリカ勢がW杯でベスト4入りしたことは過去に一度もない。90年イアタリアW杯の開幕戦で、カメルーンがアルゼンチンを下した時、まもなくアフリカの時代が到来するだろうとメディアは伝えた。アフリカンパワーが世界を席巻すると予想したが、実際はそうなっていない。アフリカ系の選手は欧州サッカー界で、個人として存在感を発揮しているが、代表チームになると空回り。優勝しそうなチームには見えない。今回のフランスがそんな感じだった。フランス代表は、アフリカの代表チームに瓜二つ。優勝するチームには見えなかった。

 実際、決勝では、C・ロナウドがいなくなったポルトガルを下せなかった。開催国にもかかわらず。

 美しい美しくないの前に、格好悪かった。フランスが、アフリカ系のフィジカルを武器に、世界一の座に就くことはあるのか。あるいは、アフリカ系の代表がW杯ベスト4の壁を破ることが出来るのか。そのフィジカルなアクション。サッカーと完全に適合した能力には見えないのだ。