弁護士の給料半減! 年収200万〜300万も当たり前の悲惨な現実

写真拡大

■日本最難関資格、弁護士の悲惨な現実

最近、弁護士事務所のCMや広告をよく目にするようになりました。テレビでも、弁護士は報道番組だけでなく、バラエティー番組などにも頻繁に登場します。

司法試験は長年、日本の最難関ライセンスといわれ、それに合格した弁護士は、知的で華やかな職業に見えます。

ところが近年、その弁護士の年収が激減しています。

以下は、日本弁護士連合会が作成している「弁護士白書2015」で発表された、弁護士の収入と所得の推移です。収入は弁護士売り上げ、そこから経費を引いた所得は年収と捉えればいいでしょう。中央値とは、上から多い順に並べた際に、全体の真ん中になる人の値です。

所得の中央値を見ると、2006年の1200万円から、2014年には600万円と、キレイに半額になっています。

これは、あくまでアンケートに回答した人の値ですので、別のデータも見てみましょう。これは、国税庁が発表している、弁護士の申告所得情報から算定した、1人当たりの所得額です。概ね先ほどのグラフと同じ傾向を示していることが分かります。

700万円弱といえば、社員数1000人以上の大企業における、大卒・大学院卒者の平均年収とほぼ一致する水準です。1200万円といえば、同じく大企業の部長クラスの平均年収となります。2008年当時は大企業の部長並みだった年収が、わずか6年ほどの間に、全社員の平均水準くらいにまで下がったということになります。

平均で捉えると、まだ食べていける水準ではありますが、実際には数千万、あるいは億を稼ぐ人もいる業界です。反対に、年収200万円、300万円といった低所得者も少なくないのです。日本最難関の資格を合格してきたエリートとしては、心もとない実態と言えるでしょう。

■「需要と供給」のバランスに尽きる

では、なぜ弁護士は、儲からない職業になったのでしょうか?

答えは明らかで、弁護士の数が増えすぎたのです。

先述した「弁護士白書2015」では、表の数値も紹介されています。全国の弁護士人数は、2006年に比べて、2014年は実に約1.6倍にまで急増しています。これは、政府が進めた政策によるものです。

2002年に閣議決定された「司法制度改革推進計画」では、以下のような表現で、弁護士など法曹人口を増やす政策が決定されました。その政策の目玉が、法科大学院の創設による、司法試験合格者の拡大でした。裁判など法的需要の増加を見据えて、それに対応できる法律の専門家を増やそうとしたのです。

▼法曹人口の拡大
現在の法曹人口が、我が国社会の法的需要に十分に対応することができていない状況にあり、今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の大幅な増加が急務となっているということを踏まえ、司法試験の合格者の増加に直ちに着手することとし、後記の法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す。
※「司法制度改革推進計画」より

確かに、その後司法試験合格者は増え、弁護士数も急増したものの、思ったほど裁判や法律案件は増えなかった。その結果、表のように弁護士1人当たりの平均取扱事件数は減少し、収入減・所得減につながっているのです。

また、先ほどの所得データと併せて推測すると、実績のある弁護士さんの年収も幾分下がってはいるものの、おそらく最近合格した人たちの中に、圧倒的多数の貧乏弁護士が発生したのではないでしょうか。

しかし、このことは、弁護士さんや弁護士を目指した人にとっては不運だったかもしれませんが、多くの日本人にとっては、むしろ「幸運な見込み違い」といえるのではないでしょうか。アメリカのように、すぐに訴訟を起こす社会、弁護士が自己PR合戦を繰り広げる社会が、決して日本人が望む幸福な世の中だとは思えません。

弁護士ドットコムは、WEB上で法律相談や弁護士を探せるサービスです。一昨年末に東証マザーズに上場し、順調に業績も伸ばしています。この会社以外にも、弁護士事務所の販売促進を支援する、コンサルタント会社や広告代理店も出現しています。

さて、冒頭のテレビCMや広告。一部のPRが上手な法律事務所と、それを支援する周辺業者の象徴と言えるでしょう。その一方で、依頼者の立場になって真面目に取り組んでいるものの、自己PRに関心がなかったり、下手だったりして、貧困化している弁護士がいるのも事実です。それが競争社会といってしまえばそれまでですが、あまり行き過ぎると、結局は弁護士業界全体の信頼を失うのではないでしょうか。

(新経営サービス 常務取締役 人事戦略研究所所長 山口俊一=文)