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東京工業大学(東工大)は7月12日、巨大なオートファジー始動装置がオートファジーの初期過程に働く仕組みを解明したと発表した。

同成果は、東京工業大学 大隅良典栄誉教授、山本林特任助教(研究当時、現在は東京大学大学院 医学系研究科講師)、微生物化学研究会(微化研) 野田展生主席研究員、藤岡優子研究員らの研究グループによるもので、7月11日付の米国科学誌「Developmental Cell」オンライン版に掲載された。

オートファジー(自食作用)は、飢餓により誘導される細胞内分解メカニズムで、酵母や植物細胞ではオートファゴソームと呼ばれる脂質二重膜の袋内に、細胞質成分や細胞小器官を取り込み、液胞へと輸送した後に膜融合し、液胞内部の分解酵素によってそれらを分解するという仕組みになっている。

特に、出芽酵母においては、Atg1複合体(Atg1、Atg13、Atg17、Atg29、Atg31の5つのタンパク質からなる複合体)がオートファジーの始動の鍵を握っていると考えられているが、オートファジーが始動するためには、同複合体の形成だけでは不十分であり、それが多数集まって巨大なオートファジー始動装置を形成することが必要であることも示唆されている。しかし、その形成メカニズムはこれまで不明となっていた。

今回、同研究グループは、Atg1複合体の構成因子のうち、Atg13に着目。Atg13の大部分の領域が、特定の立体構造を持たない揺れ動くひものような形状を取ること、そしてひも状の構造のなかに2カ所、Atg17に結合する領域が存在することを明らかにした。

さらに、Atg13とAtg17の間の相互作用様式をX線結晶構造解析法で詳細に調べた結果、Atg13上に存在する2カ所のAtg17結合領域は、Atg17上の互いに遠く離れた部位に結合する構造であったことから、Atg13は、同一のAtg17に結合しているのではなく、2つのAtg17をつなぎ留めるような形で結合していることがわかった。また、Atg1複合体の大きさを詳細に調べたところ、Atg13によってAtg1複合体同士がつなぎ留められ、巨大複合体を形成することが明らかとなった。

また、Atg17への結合領域を欠損させたAtg13変異体を導入すると、酵母内でのオートファジー始動装置の形成も失われたことから、Atg13によってAtg1複合体同士がつなぎ留められて形成された巨大複合体は、細胞内のオートファジー始動装置として必須であることもわかった。

では、Atg13を介して形成された巨大複合体は、どのようにしてオートファジーを始動させるのだろうか。同研究グループは、出芽酵母を用いて解析し、Atg13を介した巨大複合体形成は、オートファゴソームの最初の膜材料であると考えられているAtg9小胞のリクルート、Atg1のリン酸化、Atg9のリン酸化に必須であることを明らかにした。すなわち、オートファジー始動装置は、Atg9小胞をリクルートすることで最初の膜構造の形成を促進するとともに、オートファジーに関わる因子をリン酸化することで、オートファゴソーム形成過程を進めていることが示唆されたといえる。

大隅名誉教授は、今回の成果について「オートファジーの研究を長年やっているが、構造生物学に基づいた仕事は、本年亡くなられた北海道大学の稲垣(冬彦)先生と、野田先生との共同研究として15年くらい続けてきた。その研究の延長上にあるものが今回の研究で、オートファジーの研究のなかでも大事な意味をもっている」とコメント。また、野田主席研究員は、「オートファジーを特徴付けている過程がオートファゴソーム。その初期過程が明らかになったというのは非常に重要」と説明しており、オートファージーの全容解明に向けた基盤的知見になるものと考えられる。

(周藤瞳美)