第51味 フィリピン
手腕未知数のフィリピン新大統領。経済政策、国内治安、南シナ海問題の行方は?

かつて新政権発足後、
汚職問題で基盤が揺らぎ
経済にも悪影響が…

5月9日に投開票が行なわれたフィリピン大統領選挙で、ダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏が圧勝し、6月30日には第16代フィリピン大統領として就任する予定です。
同氏は爛侫リピンのトランプ〞の異名を持ち、過激な発言や自由なパフォーマンスによって多くの支持を受けました。ただ、米国大統領選挙の共和党候補が確実となったドナルド・トランプ氏とは異なり、ドゥテル氏は中央政治での経験はありませんが、フィリピン南部のミンダナオ島のダバオ市長を長年務め、とりわけ治安改善において抜群の成果を挙げるなど、政治実績を有しています。
一地方の首長が政権与党を倒したわけですが、選挙に敗れたアキノ政権自体は、国際社会からの評判はおおむね良好でした。アジアでトップクラスの経済成長率(年平均で約6%)を達成させただけでなく、債務も減少、国債の格付けをS&Pでは「トリプルBマイナス」から「トリプルB」にランクアップ。政権支持率も歴代の中では高水準を維持してきました。
それにもかかわらず、ドゥテルテ氏が勝利した背景には、フィリピンの法律では、現職大統領の再選が禁じられていることに加え、貧富の格差の拡大や、首都マニラの交通渋滞、国内治安の悪化、汚職などが問題視され、これらの問題に対してズバッと斬るような物言いをする同氏への支持が既得権益への対抗馬として高まったためとされています。
同氏の選挙公約は、「凶悪犯罪や麻薬犯罪を半年でなくす。国中をダバオのようにする」というものです。
意外(?)な新政権の誕生で、今後のフィリピンの先行きに不透明感も高まりましたが、基本的には前政権の経済政策の路線を維持するものと思われます。その一方で、外交面では米国との同盟を重視し、対中国で強硬路線だったアキノ政権とは異なり、中国寄りの発言も多く、南シナ海のパワーバランスに影響を与える可能性が指摘されています。
また、同氏は71歳という高齢による健康問題に加え、ダバオ市長時代の強権的手法を警戒する声もあります。さらに、選挙期間中に資産隠しなどの疑惑が露呈し、一部議員から新大統領の弾劾手続きを進めるとの発言があったといわれています。
フィリピンでは、エストラーダ政権やアロヨ政権時代に汚職問題等によって政権基盤が揺らぎ、経済に悪影響を及ぼした過去があるため、新政権の船出を注意深く見ていく必要がありそうです。

楽天証券経済研究所
シニアマーケットアナリスト
土信田雅之
新光証券などを経て、2011年10月より現職。ネット証券隨一の中国マニアでテクニカルアナリスト。歴史も大好きで、お城巡りと古地図収集が趣味。