1〜3月期に四半期ベースとしては過去30年間で最高の値上がり率となった金価格。一時1300ドル突破を見て、その後も1200ドル半ばで推移している。経験則から相応の調整局面が想定されながらも、目立った押し目を見せなかった背後にあるものは?
再参入の著名ファンドも
新規資金が大量流入。
厚みを増す金市場

年始から上昇トレンドを維持し注目度が増している金市場。ドル建て金価格は、5月2日に一時、昨年1月以来の1300ドルを突破するところまで買われた。しかし、さすがにこの水準は維持できずに反落。その後は、1250ドル近辺を維持し、5月末は1200ドル台前半を推移している。
5月中旬に世界的な金の広報・調査機関であるWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)が1〜3月期の需要統計を発表したが、その内容は欧米投資マネーの存在を浮き彫りにした。世界の金の総需要は1290トンで前年同期比21%増となった。内容は宝飾需要が482トンで同19%減。対して投資需要が倍増以上の620トンで同122%増。中央銀行など公的購入は109トンとこちらは同3%減となった。急増した投資需要の中でも特筆すべきはETF(上場投信)の残高増で、364トン。前年同期の26トンが急増した。
ETFに関してはこの連載でも最大銘柄の「SPDRゴールド・シェア」を取り上げてきたが、その3月末時点の大量保有者の実態が明らかとなる。これはSEC(米国証券取引委員会)への四半期ごとの機関投資家の持ち分報告から割り出すが、欧米の投資会社やヘッジファンドが再取得や新規取得と大挙して保有に乗り出していることが判明。2009年3月末以来ずっと筆頭保有者となっていたポールソン&カンパニーは持ち分を減らし15トンで4位に転落。投資会社のブラックロックがトップに急浮上した。2位はバンク・オブ・アメリカ、3位はファースト・イーグルとなった。
SECへの届け出で話題を呼んだのは、著名投資家のジョージ・ソロスのファンドがいったんはすべて売却していた金の持ち分を今回再取得していたこと。また、かつてソロスの右腕として知られたスタンレー・ドラッケンミラーが、自己運用のファンドの多くを金に傾けていると発言したことも関心を集めた。
一方、ニューヨークCOMEX(商品取引所)の先物取引でもファンドの買い意欲は旺盛で、5月3日時点でのネットの買い建てが過去最高枚数(オプションを除く)を突破することになった。具体的に重量換算すると845トンというもの。これだけ買い越し量が膨らむと、経験則では反落は避けられず、早晩そういうタイミングがやって来ると思われる。しかし、その押し目が浅くなる可能性をETFへの資金流入が示している。資金流入量でも市場参加者の面でも金市場は厚みを増しているといえるだろう。

マーケット・
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インスティチュート代表
亀井幸一郎
中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、
金の国際広報・調査機関であるWGCを経て独立し、2002年より現職。
市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。