SOURCE1●政財官
買い余力20兆円!
需給主導の上昇相場へ

伊勢志摩サミットも無事にこなし、通常国会が閉幕、安倍首相が消費税増税の見送りを発表した6月1日夜。某外資系証券の日本株担当者と海外顧客との間で、こんなやりとりがあった。
「日本は増税できないほど景気が悪いのか」(海外客)
「景気はよくも悪くもない。増税見送りは7月の参院選とその後の政局安定化が狙いだろう」(証券会社)
「日本株の買い手は誰になるのか」(海外客)
「参院選後も国内勢の買いが続き、日銀と公的年金、自社株買いで20兆円を超える資金が市場に入ってくる可能性がある」(証券会社)
古くから「株価は半年先を読む」といわれる。来年4月に消費税増税を実施すれば今秋には増税後の消費不況を先取りして株価が崩れる可能性が強かった。そんなリスクを安倍首相は政治判断で回避したのだ。
消費税増税というマイナス要因が片づいた後の市場関係者の次の関心は、誰がどのような理由で日本株を買い、それはどのくらいの規模なのかである。東京株式市場の主力プレーヤーは海外投資家。証券会社のディーリングを除く全売買注文の6割が海外勢の取引だ。
海外勢は今年1〜3月に5兆円規模の大幅売り越しに動いたが、4月は買い越しに転じるなど売りのピークは通過した。米国の景気や金融政策の先行き不透明感から、大幅な買い越しは期待しにくいが、売りが収まるだけで市場内のバランスはかなり改善する。
海外勢の売りが終息したところに、巨額マネーが流れ込めば、相場全体が大きく切り上がる可能性が出てくる。最大の買い手と目されるのが上場企業の自社株口座。昨年は約5兆円と史上最高の自社株買いが実施され、今年は3月期決算発表が出そろった5月20日段階で、すでに4兆円の買い付け枠が設定された。
上場企業の増配が相次いだが、それでも内部留保の膨張傾向は止まらない。企業の抱えるキャッシュは過去最高水準にあり、通年では約7兆円が自社株買いに充てられるとみられる。
公的年金の買い付け余力も大きい。昨年12月末の公的年金の運用残高に占める株式の割合は23%だった。
しかし、日銀が1月にマイナス金利政策の導入を発表して以来、高い利息の付く債券の価格が高騰したため、相対的に株式の保有割合は20%程度に低下している。株式は運用ルールとして定めた目標保有比率である25%に、あと9兆円ほど足りない計算になり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は今後、段階的に株式の買い付けを進めていくことになる。
日銀も重要な買い手だ。日銀は4月以降、ETFの購入枠を年3・3兆円としている。日銀のETF保有高は推計10兆円弱と、東証1部時価総額のまだ2%。今後の追加金融緩和で、購入枠を6兆円程度に拡大するとの観測が強く、実現すれば自社株口座や公的年金と並ぶ有力な買い手となる。
自社株口座や公的年金の買い、日銀によるETF買いと、今後見込まれる3つの資金流入ルートはいずれも政策によるものだ。しかも、7月の参院選が終わった後も株高政策は続く。底流にあるのは「安倍首相続投」である。首相周辺では昨年年初から、自民党総裁の任期延長論が公然と語られている。安倍首相の総裁就任は2012年12月だった。党の内規に従えば、任期は最大で2期6年なので、安倍氏は再来年9月に総裁の座を退き、自動的に首相の座も明け渡すことになる。
しかし最近は、総裁任期を3期9年に延長する方向へ自民党内が傾いている。任期が延びれば、自ら招致した東京五輪を首相として迎えられるとあって、安倍氏自らも乗り気だという。世論調査で安倍内閣の支持率が自民党支持率を上回っていることを考えれば、「安倍氏の後任は安倍氏」が自民党全体の利益にもなる。
任期延長を実現するうえで、唯一かつ最大の不確定要因が株価だろう。だからこそ、参院選以降も株高政策の継続が濃厚になってくる。新規資金枠は20兆円。株式市場では「需給に勝る材料なし」といわれる。