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●企業参加でより実践的な学びを!
恵比寿ガーデンプレイスに立地するサッポロホールディングスの本社。その1Fホールに50名以上の学生たちが集まった。この学生たちは國學院大學経済学部の2年生がほとんどを占める。彼らは「サッポロのCSR部門に配属された社員」という想定で、同社のCSV(会社の利益につながる社会貢献)を約2カ月間、考えてきた。そしてこの日、各チームが長期間にわたり練ってきたCSVについて最終報告会が行われ、グランプリが選出された。

○以前より協力関係を築く

この取り組みはサッポロホールディングスのCSR活動の一環だ。サッポロと國學院は、同じ東京・渋谷区に本拠を置き、距離的にも近い。過去にも「渋谷の大学生に聞くアルコール意識調査」を國學院大學とサッポロビールが共同で調査したり、「アルハラを防げ」と題した学生・教員向けのセミナーを共同で開催したりといった経緯がある。

そして今回、CSR活動で國學院とサッポロが手を組んだ。サッポロはこの活動を通じ社会貢献につなげられ、國學院は実際の企業と学生が触れる機会を創出することで、より実践的な“学びの場”を提供できる。両者の思惑が合致してスタートした取り組みといえよう。

では、具体的にどのような学習が行われたのだろうか。ズバリ、アクティブ・ラーニングだ。そもそも國學院はアクティブ・ラーニングに2014年から本格的に取り組み始めた。昨年はぐるなびと同様の取り組みを行ったという。

●経営陣も学生たちにプレゼンテーション
今回行われたのは、学生たちがチームに分かれ、“サッポロのCSV”をテーマにディスカッション、ディベートし、そしてその成果を発表するという、アクティブ・ラーニングではもっとも基本的といえる学習方法だ。こうした教育の場合、教授が研究すべき企業名を指定し、大学内でアクティブ・ラーニングを完結させることもできる。

だが、今回の取り組みでは実際にサッポロの社員がアクティブ・ラーニングの現場に入りレクチャー授業を行う。実際のサッポロの企業理念や事業内容、課題などに触れることで、より実践的な“思考”が求められる。5月9日にはサッポロインターナショナル 代表取締役社長 小松達也氏が、5月23日にはサッポロホールディングス 取締役 征矢真一氏が学生たちに説明を行うなど、熱のいれようが伝わってくる。

ちなみに課題は「食を通じて世界に『潤い』を - もっと日本をもっと世界へ“KANPAI PROJECT”への取り組みを考える」というもの。そのため、サッポロ製品を海外で展開する事業を手がけるサッポロインターナショナルの代表が出張った、というワケだ。

学生側にもメリットがあったようだ。学生の一人は「机上の空論ではなく、実際の事業として考えなくてはならないのが難しかったです」と前置きしながらも、「将来、企業に勤めた際、必ずこの経験が役立ちそう」と、目を輝かせた。國學院の経済学部は一学年600人規模というが、その中から100人以上が参加したというから、学生たちにこの取り組みが魅力的に映ったにちがいない。

さて、参加した学生のほとんどが2年生と前述した。つまり、来年に誕生日を迎えた学生からお酒が順次解禁されるということになる。近年、若者のお酒離れ、特にビール離れが指摘されている。だが、この取り組みに参加した学生ならば、お酒が解禁になった際、自然とサッポロの商品を手につかむのではないか。ある意味、この取り組み自体がサッポロのCSVになっているといえよう。

●早い段階で企業CSRをゼミに取り込んだ武蔵大学
一方、早い段階から企業CSRをゼミに採り入れてきたのが武蔵大学だ。山嵜哲哉学長は「確認はしていないので正確ではないが、おそらく本校が最初に企業CSRをゼミに組み入れたのではないか」と語る。企業CSRをゼミに活用する取り組みは今年で10回目となり、現在、ほかの多くの大学が武蔵大学の取り組みに注目している。

武蔵大学の場合、大きな特徴がある。それは、経済学部、人文学部、社会学部の3学部を横断したプロジェクトになっていること。「それぞれの学部が同じキャンパスにあるからこそできる取り組み」(山嵜学長)だという。

どういうことかというと、まず各学部で同じ企業を研究するが、経済・人文・社会でそれぞれ視点が異なってくる。この段階を「第1フェーズ」とする。続いて中間報告が行われ、その後、各学部がチームを組み改めて研究し直すのが「第2フェーズ」だ。それぞれ見識が異なっているので、この第2フェーズでのすり合わせが重要になってくる。

今年は日本アイ・ビー・エム、水上印刷、岡村製作所、ロート製薬がこの学部横断型プロジェクトに協力した。種村聡子 経済学部助教によると、「これまで50社以上の協力を得た。なるべく学生と接点がないB to Bの企業・事業を選択している」と、“ビジネスの視点”を養いやすいようにしている。

注目したいのは企業とのコミュニケーションの接点が多いこと。企業側のプレゼンや事業所見学のほかに専用SNSを用意。学生からの意見や質問に答える体制となっている。日本アイ・ビー・エム マーケティング&コミュニケーション 部長 小川愛氏によると「ほぼ毎日、何かしら学生からのリクエストがあり、それに応えてきた」と、学生の熱意を感じたそうだ。

徹底しているのが「CSR報告書」という形にまでまとめあげること。企業研究やプレゼンだけではなく、文章、レイアウト、キャッチコピー、章立てといった構成なども工夫しなくてはならない。

最終報告会でプレゼンを終了した学生の一人が感想を求められると、感極まってなかなか言葉にならない様子が強く印象に残った。「昨年このゼミを見学して“私も挑戦したい”という気持ちになり、やりきった」という言葉に“達成感”がこちらにも伝わってくるようだ。

(並木秀一)