スカンジナヴィアが「スタートアップ天国」となった理由

写真拡大

高い資金調達力をもち、着々と利益をあげるスタートアップが多いスカンジナヴィア。なぜこの地域では、新しいビジネスが芽を出しやすいのか。その理由は、スカンジナヴィア諸国が、スタートアップが速く成長するための土壌を、何年も前から準備していたことにあるという。

「スカンジナヴィアが「スタートアップ天国」となった理由」の写真・リンク付きの記事はこちら

農業をするには理想的ではないかもしれない。しかし、アイデアの種をまいて資金を収穫するなら、スカンジナヴィアはヨーロッパで最も肥沃な土地である。

そう主張するのは、Startup Europe Partnership。EUがこの旧大陸のスタートアップのエコシステムを発達させるためにつくったプラットフォームだ。彼らは、2016年6月2日にレポート「Northern Lights: Ict scaleups in the Nordics(北極光:北欧諸国におけるICTスケールアップ)」を発表した。

これは、北欧5カ国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド)の、ICTの分野における「スケールアップ企業」、つまり自社のビジネスモデルを大きく確立し、年間売り上げ高100万ユーロに到達したスタートアップ企業を対象に行われた調査だ。

イタリアのアルベルト・オネッティ率いるグループの研究から明らかになったのは、ヨーロッパのイノヴェイションの心臓はスカンジナヴィアで脈打っているという。

今回のレポートで調査対象となった規模のイノヴェイティヴな企業は、スカンジナヴィア地域に430社ある。これは、フランスとドイツの413社よりも多く、イタリア、スペイン、ポルトガルの218社の2倍だ。

レポートの発表に付された注釈には、「北欧諸国では、平均して国民10万人あたり1.6社のスケールアップ企業が登記されている。これはイギリスの2.5倍、欧州大陸諸国の6倍、南部の国々の9倍である」とある。

ランキング首位に立つのはスウェーデンで、149社のスケールアップ企業がある。フィンランド(126社)とデンマーク(96社)がこれに続く。ノルウェー(44社)とアイスランド(15社)はその下だ。

RELATED

高い資金調達力

企業数だけではない。スカンジナヴィアのスケールアップ企業の強さは、資金を引き寄せる力にもある。

2015年だけで、これらの企業は約65億ドルの資金調達に成功した。その84パーセントは、スタートアップ企業への融資を専門とするヴェンチャーキャピタルからのもので、残りは株式市場で調達された。

その総額は英国企業が集めた110億ドルや、フランスやドイツの企業に融資された97億ドルより少ない。それでも、国民総生産と比較してみてみると、このデータは目を引くものだ。

北欧諸国がスケールアップ企業の支援にあてた資金は、国民総生産の0.5パーセントに相当する。イギリスでは0.42パーセントで、ベルリンやパリでは0.15パーセント以下だ。南ヨーロッパではなんと0.06パーセントに留まっている。

最大の資金調達者は、11億ドルを集めたメディア分野だ。その大部分は、音楽ストリーミングを専門とするスウェーデンのプラットフォーム、Spotifyによって達成された。

もっとも景気がいい業界はデジタルゲームだ。Startup Europe Partnershipが調査したスケールアップ企業は40社で、全体で9億ドルの融資を獲得した。そのなかでは、「キャンディクラッシュ」を生んだスウェーデンのKing.comや「クラッシュ・オブ・クラン」を開発したフィンランドのSupercellが頂点に立っている。

さらに、デンマークのZendeskのような、ソフトウェア開発のスケールアップ企業は70ある。しかし、この分野で集められた資金は6億ドル以下だ。

そのほかで興味深い分野は、25社で7億ドルを獲得した金融分野と、36社で6億ドルを集めたハードウェア製造だ。

さらに、Exitについてはここ5年で、205ものスケールアップ企業が既存企業から買収されたが、その大部分(79社)がスウェーデンで生まれた。これらの買収の買い手の40パーセントは、米国拠点の企業だった。そして驚くべきことに、スカンジナヴィアの企業が買い手である割合も、同じ40パーセントであった。北欧の企業が、スタートアップ企業の潜在能力を理解し、それを自らのものにしようとしている証拠だ。

レポートで調査が行われた430のスケールアップ企業の60パーセントが2010年以降に活動を開始したことを考えると、この結果はさらに興味深く思える。スカンジナヴィアのエコシステムは若いが、すでに市場の注意を惹きつける力をもっているということだ。

スタートアップが成長しやすい土壌

ここまでは単なる結果だった。では、この結果を生んだ条件とは、どのようなものだろうか? 

「答えは時間です」と、オネッティは言う。「スカンジナヴィアには、フィンランドやスウェーデン、デンマークのように、何年も前に正しい方法でイノヴェイションへの取り組みを始めた国があります。いま彼らは、この取り組みの果実を収穫しているのです」

イギリスやフランス、ドイツでは、2010年以降に誕生したスケールアップ企業は、全体のわずか半分に過ぎない。「南欧では、その割合はもっと高くなります。つまり、数字はこれからやって来るということです。一方、北欧ではすでにまいた種の収穫が始まっています」

「また、そこにはしっかり機能するシステムがあります。それは例えば政策についてもそうで、ポスト・ノキアがどのように運営されたかを見ればわかるでしょう。スカンジナヴィアは最も代表的な巨大企業の凋落を前にして、スピンオフ企業を経営し、新しい企業の創業や、大学との一体化の支援政策を行うことにより、崩壊をポジティヴな状況へと回避させることができました」

これが、スカンジナヴィアをヨーロッパのシリコンヴァレーへと変貌されたレシピの材料なのだ。