6日、米国は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を含む政権幹部や政府機関などに対する資産凍結、入国禁止などの制裁措置を発表した。写真は北朝鮮の反米関連のイラスト。

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7月6日、米国は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を含む政権幹部や政府機関などに対する資産凍結、入国禁止などの制裁措置を発表した。金委員長への指定は初めてであるが、今回の制裁は実質的にはあまり効果を期待したものではなく、単にけじめをつけただけと言われる。これまでもミサイル発射や核実験を行う度に、国連では「北朝鮮経済制裁」が決議されるものの、思ったほどの効果が表れていない。この原因は中国が真剣に北朝鮮経済制裁に取り組んでいないからだとの批判も聞かれる。

その中国であるが、確かに以前は「国連決議」に反対を唱えたりした時もあり、それほど熱心でなかったこともあった。しかし、金正恩体制となり、北朝鮮が中国の意見を無視、時には中国のメンツを潰すことが度重なり、中朝関係が悪化するようになってからは中国政府や中共中央(中国共産党中央委員会)も西側諸国と歩調を併せるように“真面目に”「経済制裁」に取り組み始めたのは事実であろう。

日本では、一部の懸念国や企業など向けに軍事転用可能貨物や技術の輸出などを禁止、規制を行う「安全保障貿易管理」制度を比較的厳格に施行運用管理している。特に北朝鮮向けに限っては、上記国際的取り決め以上に厳しい取り扱いを行っている。そんな順法精神の比較的高い日本でも、時折北朝鮮の軍事関連機械などで日本製部品が発見されることがある。

北朝鮮経済制裁の実効性に疑問符がつくのは、やはりいずれかの国の貿易管理が甘いわけであるが、密輸によるもの、北朝鮮との直接取引ではなく故意あるいは輸出者の知らぬところで第三国経由北朝鮮に渡っているいわゆる迂回ルートによる輸出入によるものも少なくない。

北朝鮮の対外貿易は、中国が圧倒的に多く7割以上、それに開城工業団地経由での韓国を併せ9割近くがこの2国との取引である。中国東北部には百数十万人程の朝鮮族が居住しており、制裁の鍵はやはり中国にあると言えよう。

実は中国の北朝鮮との貿易取引には、軍が少なからず関与し、結構大きな影響力を持っている。人民解放軍は今年2月「五大戦区」に改組されたが、それまでは「七大軍区」に分かれ独立採算制がとられ、そのため費用はある種独自に調達することになっていたと言われる。1998年、軍による商業活動が禁止されたものの、完全には徹底されていないようである。北朝鮮との貿易に関しては瀋陽軍区が深く関与し、この既得権益は容易に手放すはずもなく、結果として、国連決議も有名無実となっていたと言われている。一方、世界のリーダーを目指し、国連安保常任理事国としての自覚を求められ、国際社会を意識する習近平氏としては国連決議をできる限り尊重したいところであろう。

この意味では、北朝鮮経済制裁問題を中国政府、中共中央即ち習近平氏が思惑次第で自由にコントロールできるようになるか否かは、習近平氏の軍の掌握次第と言えるかも知れない。逆に言えば、国連決議に基づく中国の北朝鮮制裁の度合いが習近平氏の軍掌握度をはかる目安の一つである、と言えば言い過ぎであろうか。

■筆者プロフィール:岡田郁富
長年日本の大手総合商社にて中国ビジネスに携わり、機械、プラント類の輸出をはじめ中国現法の責任者として数多くの対中投資案件を手掛け、商社退職後は主として中小企業向けに中国ビジネスアドバイザーを務める。ビジネスでの往来や長期滞在等を含め50年程に渡り中国関連に係り、豊富な経験を持つ。