キングジム「暮らしのキロク」は発売1年で18万冊の売れ行き

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 付箋(ふせん)といえば、ちょっとしたメモ書きを一時的に書籍や手帳、机などに貼りつけておく小さな紙のことを指す。1970年代に米化学メーカー・3M社の開発者が、たまたま粘着力の弱い接着剤を作り出したことから生まれた“副産物”だった。

 その付箋が、時を経て主役級のブームを巻き起こしている──。

『1冊の「ふせんノート」で人生は、はかどる』(フォレスト出版)、『すべてがうまくいく毎日が楽しくなる魔法のフセン術』(秀和システム)といった付箋の有効活用を紹介した書籍も多く出版されている。

 ビジネス、勉強、スケジュール調整、料理レシピ、お金の管理など、あらゆる用途で見直されているほか、豊富なカラーバリエーション、オシャレな形にアレンジされた付箋の数々は、日本人のみならず外国人にも人気だ。100円均一ショップでは、「自国にはこんなカワイイ付箋は売っていないから」と、外国人が爆買いしているという。

 7月6日〜8日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された文具・紙製品の商談展でも、機能性やデザイン性に優れた付箋の新商品が多数出品された。会場を回っていた文具の卸売業者が、「今年は付箋だけを探しにきた」と目を輝かせるほど注目度は高い。

 では、実際にどんな商品が人気で、どういった使われ方をしているのか。

 クラスタージャパンが発売している「付箋ノートが作りやすいふせん」は、色や大きさの違う数種類の付箋を、一般的なA罫(7mm幅)のノートやルーズリーフに貼りつけていくという、極めてシンプルな商品だが、同社の担当者によれば売り上げは年々倍増しているという。

「主に高校生や大学生などがテスト対策に使っているようです。ノートには直接書かずに、付箋に書いた内容を色ごとに整理したり、テストに出る重要度を分けたりしながらペタペタと貼っていくやり方です。

 パソコンやスマホに慣れている今の若者たちにとって、ノートは見やすさ重視で、情報は捨てるのが当たり前。まるでスマホのフォルダを入れ替えるのと同じように付箋を入れ替え、そのノートとスマホだけを片手に持って学校に行く人も多いようです」(担当者)

 そうして出来上がったノートはインスタグラムなどのSNSを使って情報交換しているというから驚きだ。同社は見栄えを気にする学生のために、ノートの罫線間隔と同じサイズの付箋を設計。細かい工夫が売れ行きに結び付いているようだ。

 ビバリーの「ココサス」は、書籍のページ上部にブックマークしてもどの箇所を見直したいか忘れてしまった……という“あるある”な悩みを解消すべく、切り離して貼れる付箋を発売。大事な情報が一目で分かると好評だ。

 また、同社は7月下旬に名刺に貼るタブ付きの透明付箋を発売予定。「もらった名刺に直接メモしたくないという人は意外に多いので、これなら貼ったままファイルに保存することもできます」(担当者)。ありそうでなかったアイデアを次々と付箋で結実させている。

 名刺の管理では、「デジタル名刺ホルダー」が売れているKING JIM。シンプルなデジタル文具に定評がある同社にもアナログの付箋はある。

 読書、映画、スポーツ、ショッピングなど全28種類に及ぶ日常の生活を記録できる付箋メモ「暮らしのキロク」は、昨年の発売からすでに18万冊を売り上げる大ヒット商品になっている。前出の付箋ノートと同じく、書き込んで手帳に貼ったページをインスタグラムで公開する女性が増えているという。

「秘密の日記などは別にして、可愛く書けた手帳を他人に見せたがる女性は多い。男性にはなかなか理解できないと思いますが、『暮らしのキロク』は、いわば“見せる手帳を作るためのツール”として人気を呼んでいます」(キングジム商品開発部の担当者)

 その他、商談展では、ボトルガムの捨て紙に採用されるなど環境に優しい水溶性粘着剤を使った付箋や、ひな人形やクリスマスツリーといった立体的な紙の飾りに付箋をつけたユニークな商品まで、バラエティーに富んだ商品がズラリ。

「付箋は世界中で普及しているが、日本のユーザーの要望や提案が最もうるさい」(文具メーカー)

 徹底したマーケティングで、どんなアナログ商品でも時代や用途に合わせて進化させてしまう日本メーカーの凄さ。それが小さな付箋紙1枚にも表れている。