南シナ海の領有権問題でフィリピンが申し立てた常設仲裁裁判所による判断が、12日に示される。広範な領有権を主張する中国に不利な判断が予想され、その場合、中国がどう出るかが最大の焦点になっている。資料写真。

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2016年7月8日、南シナ海の領有権をめぐる常設仲裁裁判所(PCA、オランダ・ハーグ)の判断が12日に下される。中国と対立するフィリピンの申し立てを受けたもので、南シナ海に関する国際的な司法判断は初めてだ。PCAの関与に反発する中国は審理に不参加。中国に不利な判断が予想され、中国の出方が最大の焦点だ。

比がPCAに国連海洋法条約に基づく仲裁を申し立てたのは13年1月。南シナ海の「スカボロー礁(中国名・黄岩島)が中国の実効支配下に入った直後だった。

欧米メディアなどによると、比側はPCAに5000ページにも上る書面を提出。主張は多岐にわたるが、争点は(1)中国が領有の根拠とする「九段線」の違法性の有無(2)南沙(英語名・スプラトリー)諸島で中国が造成する人工島の法的地位―に絞られる。

このうち、「九段線」に関してPCAは判断するかどうかを明らかにしていない。日本メディアの中には、明確な判断を留保する可能性もあるとの見方もある。

一方の人工島についてPCAは昨年10月、「審理の対象になる」と明示。人工島の基盤となる岩礁は満潮時に海面に沈む「低潮高地」か「岩」で、領海のなどの権利は生じないとする比側の主張が認められる公算が大きくなっている。

これに対し、南シナ海問題の「関係国の協議による解決」と唱える中国は仲裁裁判の申し立て当初から、「受け入れも参加もしない」との立場を繰り返し表明。中国外交部は6月29日の談話でも、「PCAには管轄権がなく、審理を進行すべきでなく、判決を出すべきではない」と非難し、「中国は領土問題と海域境界の紛争において、第三者による解決方式を受け入れない」として、どのような判決が出ても拒否する方針を改めて示した。

中国共産党の習近平(シー・ジンピン)国家主席は1日、北京・人民大会堂で開かれた党創立95周年の祝賀大会で演説し、「中国はわれわれの正当な権益を決して放棄しない。どの国もわれわれが核心的利益を差し出すと期待してはならない」と強調。PCAの判決を念頭に、国際社会に対し一歩も引かない強硬姿勢を鮮明にした。

さらに、中国共産党系の環球時報は5日、中国政府は南シナ海での「軍事衝突」に備えなければならないとする社説を掲載。「短期的には米軍の軍事力に後れを取るかもしれないが、米国が南シナ海での争いに武力で介入してきたら、耐え難いほどの代償を払わせることはできるはずだ」と力説した。

中国の出方に関してNHKは6月末、「中国の海洋政策を管轄する国家海洋局や外交部の幹部らが、自国に不利な判断が出る場合に備えて具体的な対応策を検討していた」と報道。この中で「南シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定る」「南沙諸島で比側が実効支配しているセカンド・トーマス礁を奪い取る」などの強硬論も飛び出したと伝えた。

こうした中、中国軍はベトナムなどと領有権を争う南シナ海の西沙(英語名・パラセル)諸島の周辺海域で軍事演習を繰り広げている。武力によって実効支配を誇示する狙いとみられ、演習はPCAの判決が出る前日の11日まで続く予定という。(編集/日向)