東北大学病院漢方内科の高山真准教授らのグループは、日本老年医学会が作成した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」の中の漢方薬治療の章をまとめ、2016年7月1日に発表した。

高齢者向けの漢方薬ガイドラインの作成は世界で初めてという。この内容は、国際老年医学誌「Geriatrics & Gerontology International」の6月7日号にも発表された。

「抑肝散」は認知症の徘徊には効くが、うつには効かない

東北大学の発表によると、古代中国を起源とする漢方はこれまで「経験医学」といわれ、西洋医学に比べ、診療効果の科学的根拠が乏しいと解釈されてきた。ところが近年、信頼性の高いランダム化比較試験による臨床研究が進み、多くの治療効果の成果が明らかになっている。

そこで今回、初めて科学的根拠に基づいた診療ガイドラインを作成するために、高山准教授らは漢方薬を取り上げた503件の論文の中から64件の論文を選び、研究内容を詳細に調べた。これに厚生労働省が出している「使用上の注意」と最新の薬理学の研究成果も加え、値段や薬剤のバランスも考慮し、高齢者に有用な漢方薬のリストを作った。

ガイドラインでは、各生薬について、次のように効能や注意すべき薬害を示している。

(1)抑肝散(よくかくさん)は、認知症に伴う幻覚、妄想、暴力、徘徊などには有効である。ただし、意欲減退、うつ、引きこもり、食欲不振、悲哀などには無効である。
(2)麻子仁丸(ましにんがん)は、高齢者の便秘に有効である。
(3)甘草(かんそう)は、低カリウム血症を生じうる。
(4)付子(ふし)は、不整脈、血圧低下、呼吸困難を引き起こす毒性があるため、適切に修治加工されたものを用いる。