総務省は「若者が自らの将来を決める」とPR

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映画監督の森達也さん(60)が、政治に無関心な若者を憂慮し、そんな人は投票を棄権すべきだと週刊誌のインタビューで発言して、ネット上で論議になっている。

森達也さんは、作曲家を演じて騒動になった佐村河内守さんを追ったドキュメンタリー映画「FAKE」などの作品で知られる。

「日本は同調圧力が強く、若者が多数派に流されている」

今回の発言は、週刊プレイボーイの2016年6月27日発売号の企画「18・19歳 新有権者へのメッセージ」に掲載され、ウェブ版でも7月6日に同様な記事がアップされている。

記事では、10日の参院選で初めて18、19歳が国政選挙で投票することを受けて、森さんが自身の考え方を披露した。それによると、明治大学の特任教授をしている森さんが、明大生20人ほどにアンケートしたところ、9割ぐらいが自民党支持だった。

ところが、半数以上は、憲法改正はしなくていいと答えていた。自民党は自主憲法制定を掲げていることから、森さんが学生にそのことを聞くと、回答の「ねじれ」についてよく分かっていない反応だったという。

森さんは、日本では、同調圧力が強く、若者が多数派に流れる傾向があるとし、学生も周りが自民と言えば自民と考えているのではないかと指摘する。そして、次のような挑発的なコメントをした。

「選挙に行くことは、この国のグランドデザインを考えること。それを考えられない人は棄権していい。将来を考えると、『へたに投票しないでくれ』とも思います」

ただ、森さんは、言われて悔しかったら、もっと政治に興味を持ってほしいとも呼びかけている。アメリカでは、日本のような同調圧力はなく、若者が政治に関心を持っているとし、もし日本の若者もそういう意識を持てば、ぜひ投票に行くようにともしている。

総務省「棄権すれば、若者の声が政治に届きにくくなる」

森達也さんの発言は、ネット上で反響を呼び、賛否両論が書き込まれている。否定的な意見としては、次のような内容が目立った。

「18、19歳の若者は、選挙が初めてだから深く考えていないのは当たり前で、投票行動に移すことによって政治に関心を持つのでは」
「若者の多く支持している政党が分かった後で、思い通りの結果にならないから棄権しろと言っているようにも聞こえる」
「自民党は支持するが憲法改正は反対という考え方は、必ずしもおかしくはない。与党が3分の2以上を獲っても、国民投票で反対すればいいだけ」

このほか、「若者は反体制であるべきというのは思い込みだ」「考えた末に与党に投票してもダメなのか」といった意見があった。

一方、森さんに理解を示す向きもあり、「こう言いたくなる程、今の若者が何も知らず何も考えていないのも確かだ」「へたに投票するなってのは自分でよく考えて投票しろってことだよ」といった書き込みもみられる。

18歳選挙の啓発などをしている総務省の管理課にJ-CASTニュースが取材すると、選挙で棄権や白票を呼びかけることは、公選法などには抵触しないという。森さんの発言については、「それぞれの考え方ですので、個人の主義主張に総務省が何かコメントする立場にはないです」と答えた。

ただ、総務省としては、当然、ぜひ投票に行ってもらいたいと明かし、「投票は国民の権利であり、選挙に参加することで社会の方向性を決めることができます。もし棄権や白票になれば、若者の声が政治に届きにくくなります」としている。