女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちの体験談。

今回お話を伺ったのは、大沢香織さん(仮名・37歳)。彼女は地方国立大学卒業後、元大手旅行代理店で正社員として勤務していました。しかし今は無職に近い状態。実家からの仕送り2万円と、週3で通っている友達のバーの手伝いの収入が月7万円程度、足りない分は貯金を食いつぶしているとか。

彼女の腕には無数のリストカット跡。袖口から赤茶けた線が何本も見えています。身長は160cm程度でほっそり体型。服は真夏日にも関わらずタートルネックの長袖カットソーにロングのデニムスカート。いずれも量産品のようです。トートバッグはプリントが有名なイタリアブランドの模造品。

顔立ちは美人の部類に入り、目がかなりぱっちりしていて、タレントの紗栄子さんにどこか似ています。顔と表情の変化をよく見ると、何かギクシャクしている感じがあり、不思議なアンバランスさが彼女を妖艶に見せています。おそらく、目を美容整形しているのでしょう。ぷっくりした唇にメンソールのタバコをはさみ、当然のように火をつけて、おいしそうに吸っています。

「今、ホントにお金がなくって。ちょっと貸してほしいくらいなんです(笑)。東京で暮らすには家賃、光熱費、食費、交際費など最低でも25万円は必要じゃないですか。私、もう実家の関西には帰りたくないんですよね。どうしても東京で自由に暮らしたい。これからどうすればいいんでしょうか。ここ1週間くらい食パンしか食べていないし」

そう言いながらも2本目のタバコに火をつける香織さん。彼女の転職経験は、新卒採用時から15年間で8回。就職氷河期女子の典型的なジョブホッパー(転職を繰り返す人)だと自虐的に笑います。

「私たちが採用された時代は、企業は“採用してやってるんだ”的な感じでしたから、仕事内容が超ブラックなところが大半だったんじゃないかな。私が勤務していた旅行代理店は先輩たちも疲弊していて、仕事を私たちに覚えさせたりフォローしたりする余裕がなかった。だから、お客さんからもクレームがガンガン入っていましたよ。それに、仕事内容も超ブラック。私は法人営業だったのですが、ビルの上から飛び込み営業して名刺を配ったり、1日60件ノルマでテレアポをさせられたりして、最初の1年は地獄でした。それでも手取りの給料は14万円。アホかって話ですよ。年間で億近くのノルマが課せられていたので、親戚にもツアーを売ったりして……。でも、仕事ってそんなもんかな〜と思っていたので、ガマンしていました。でも、同期の半数近くがメンタルをやられて辞めていきましたね」

香織さんが会社を辞めたのは、まさかの寿退社だった。

しかし、香織さんは3年間その会社で頑張れた。それにはあることをしていたからだと言います。

「私、年上の男性に甘えるのが上手なんです。男性はエリートであればあるほど、年下で明るくて弱くて、ちょっぴりバカな女のコが好き。そういう女を演じれば、下心含みで助けてくれるし守ってくれる。でもこのテクが使えるのは部長クラスまでなんですよね。その上の役職の人にお酒の席で、そういうことをしようとしたんですよ。すると、軽く受け流されて終わるだけでなく、私に夢中になっていた課長に“大沢の素行に気を付けろ”とクギを刺されてしまい、それからいろんな人間関係が表に出てしまったんです。すると、今までかわいがってくれていた男性たちの態度が激変。仕事がやりにくくなるどころか、会社にいづらくなっちゃって」

最初の会社で深い仲になった男性は15人を超えたといいます。

「お客さんも含めると、もっといたかもしれませんよ。だって向うから誘ってくるし、私もさみしいし。会社を辞めたのは、仕事がきつくてつまらなくなっただけでなく、25歳のときに結婚したからなんです。元夫はお客さんに紹介されて知り会った東京の超大金持ち。10歳年上の超キモイ男で無職のひきこもりです。私は基本的に誰とでもOKなのですが、元夫は見ただけで吐きそうになるくらいのキモさだったんですよね。ガリガリで色が真っ白で、頭髪が薄いのに縮れていて。おまけに体毛が濃くて、いつも汗臭い。ヒゲの範囲が広くて、顔は蛇に似ているんですよ。最悪ですよね。でも金持ちだからとプロポーズを受け、盛大な結婚式をしました。あのときが一番輝いていたかな。交際期間がたった10日なのは“結婚まではしたくない”と言って結婚と入籍を急がせたから。莫大な財産が自分のものになると舞い上がりました」

その結婚生活は26歳のときに、たった1年間で終わる。原因は新婚旅行のときに、夫がDV夫に豹変してしまったから。

「スリランカへの新婚旅行までスキンシップは避けていたのですが、やはり旅先では同じベッドで眠らなければならず、あまりの気持ち悪さに吐いちゃったんですよ。そしたら元夫が“バカにするんじゃない”と殴ってきたんですよね。DVって癖になるんですよ。それ以降は毎晩叩かれたり殴られたりして、私は心を病みました。中学時代から止めていたリストカットをやり始めたのもこの頃です」

やってもやっても終わらない仕事に頭痛が止まらない日々もあったとか。

1年の結婚生活の後に待っていた悲惨すぎる人生とは?〜その2〜へ続きます