普段口にしているものの、ビールについて知らないことも案外多い。一大ビールトレンドの今、昔からのビール派としては理解を深めたいところだ。そこで、“ビールの達人”藤原ヒロユキさんに、その基本を、ご教授いただいた!


Q-温度って味わいに影響しますか?

A-もちろん。温度にまで気を配れれば、最高です。

日本ではキンキンに冷えたビールが好まれがちだが、全スタイルには当てはまらない。それぞれに適温はあるのだ。香りが高く、ハイアルコール、フルボディほど高い温度が適し、シャープで低アルコール、ライトボディほど冷やすほうがいい。適温レンジの広い低温発酵エールのケルシュもあるが、冷やす一辺倒をやめてみるだけでも味わいは深まる。



Q-日本のビールって1種類だけって本当?
A-そんな時代もありましたが、今は多様なスタイルが流通しています。

かつて日本で流通するビールは、淡色ラガーでほとんどがピルスナー1種という時代も。明治時代の中期から一般的になったスタイルだ。現在は、輸入ビールや地ビール、クラフトビールと種類も増加、上面発酵のエールを大手が作るようにも。選択肢が豊富なうれしい時代に。



Q-クラフトビールと普通のビールと違いは?

A-違いは生産規模。アメリカから日本に上陸した文化です。

1965年サンフランシスコにて、フィリッツ・メイタグによるアンカー社の復興をきっかけに、’80年代にアメリカンドリームを追った者たちによる小規模醸造ベンチャーブームが起こる。

結果、自家製造の多彩な地ビールが増加した。日本では1995年の酒税法改正施行をきっかけにクラフトビールの流行が起こり、現在日本でも小規模醸造家が激増している。


一足先に知っておきたい国産マイクロブルワリー


Q-日本のクラフトビールも、今また増えてますよね。
A-注目の国産マイクロブルワリーをご紹介します

日本では、1994年に酒税法が改正されて規制が緩和。その結果、小規模醸造のメーカーが増加、それまで大手メーカーの寡占状態から状況が変化した。

その後訪れた地ビールブームは一旦落ち着いたものの、アメリカからのクラフトビールブームを受けて、今また日本でも元気な小規模醸造家=マイクロブルワリーが増加中。それぞれ優れたレシピを、巧みな醸造技術で仕上げた完成度の高さが魅力。そんな醸造所のタップを常設する店もじわじわと増えている。



外国人醸造家が目指す“日本のビール”『京都醸造』

ウェールズ人、カナダ人、アメリカ人と国籍の異なる3人が、「自分たちが飲みたいビール」を作るべくスタート。日本らしい職人技をビールで再現しようと京都を選んだ。アメリカとベルギーの長所をハイブリッドさせた新たな試みが人気を呼んでいる。

HP:kyotobrewing.com



クラフトビール本場の味を日本で『デビルクラフトブルワリー』

アメリカ人3人組のオーナーが、「日本でも本場の味を」と東京に進出。日本では珍しいシカゴピザと各地のクラフトビールも提供する店も運営し、その魅力を日本でも普及する。今年、クラフトビールの栄誉、ワールドビアカップ金賞を受賞!

HP:www.devilcraft.jp



ビールの楽しさを名古屋から『Yマーケット』

名古屋駅のほど近く、名前の由来でもある柳橋市場に位置する名古屋市内唯一のクラフトビール醸造所。2階にはできたてビールと食事を提供するキッチンも併設。ブルワーが追い求めるバラエティに富んだスタイルが、ビールファンの心をつかんでいる。

HP:craftbeer.nagoya



小規模醸造の醍醐味を具現化『うしとらブルワリー』

下北沢のビアバーが、自らのビールを極めんと栃木県下野市に立ち上げたマイクロブルワリー。定番商品を置かずに、小規模醸造ならではのフットワークの軽さで、アメリカンスタイルを中心に面白みのある多彩なビールを製造する。

HP:www.facebook.com/ushitorabrewery



Q-ビール大国の主要銘柄や特徴を教えて!
A-特徴を知ると楽しみも増えますよ。

紀元前から親しまれていたという人類の英知、それがビール。ゆえに生まれる土地が異なれば、原料や製法も異なる。となれば、当然国や地域の特色が色濃く出るわけで、そうした違いを楽しむのもビールの醍醐味といえるだろう。ヨーロッパを中心にビール大国の特徴をご紹介。これらを頭に入れておけば、ブルワリーでの会話も弾むこと間違いなしだ。



【ビール文化の中心地/ドイツ】
消費量世界第3位。上面発酵のヴァイスビールや下面発酵のジャーマンピルスナーなど、ビール文化が発達している国らしく、バランスよく混在している。近年は新興勢力も増加中



【ピルスナーの元祖/チェコ】
チェコの都市、プルゼニ(=ピルゼン)で生まれたビールこそ、世界有数のラガービール、ピルスナーの元祖。20年近く国民1人あたりの消費量世界一を誇るビール大国



【ペールエール大国/イギリス】
特有のパブ文化が生んだペールエールの国。常温で楽しむ香り豊かなエール文化はこの国が発祥。流行のIPAが生まれた国らしく多彩なペールエールを味わうことができる



【スタウトといえばココ/アイルランド】
濃色エールのスタウトを生んだのが、アイルランドだ。その代表は、日本でもおなじみのギネス。ほか、アイリッシュレッドエールなど、深いコクを持つものが多く存在する



【味もスタイルも多彩で豊富/ベルギー】
日本でも人気のベルジャンスタイル。ホワイトエールは筆頭だが、ほかに修道院で作られた歴史を持つトラピストビールや、野生酵母で作るランビックなど、種類は非常に豊富だ



【クラフトビール百花繚乱/アメリカ】
1960年代から始まった小規模醸造家によるクラフトビールがブームの今、世界的な潮流を生んでいる。自由な作風で、ラベルにも遊び心をもたせたものも数多く出回っている



【暑い国のライトなビール/メキシコ】
メキシコといえば、ライムを飲み口に刺すコロナビールがその筆頭。暑い国らしく、キレのある淡色ビールが特徴。オーストリア風のヴィエナ・ラガーも人気を集めている



【ハイネケンの国/オランダ】
ドイツ、ベルギーの両ビール大国に隣接し、もちろんビール製造は盛ん。代表銘柄として世界企業のラガー、ハイネケンが有名だが、ほかグロールシュなどの銘柄もよく知られる



【生産量は世界一位/中国】
玉石混交ながらもビール生産量は世界一。ドイツの租借地であったことから、青島のビール作りは盛んで、中国の三大ビールのひとつ。近年はプレミアムタイプも作られている


旨いブルワリーの見分け方


Q-旨い生が飲めるブルワリーの見分け方は?
A-TAP数を厳選しているかが重要です

大樽の生ビールはやみくもにTAP数を並べればいいわけではない。鮮度を保ちつつ店舗を回すには、濃淡交えて厳選した5TAPで十分バリエーションを出せるのだ。国内外の大小ブルワリーから、しっかりと個性がありつつ高いクオリティのTAPを揃えていれば完璧。以下の銘柄が藤原先生厳選の5TAPだ。

1:【LIGHT】ビールの旨さを日本で広めた大立者「ザ・プレミアム モルツ/サントリー」
日本におけるビールの発展に欠かせない大手メーカーにも敬意を表して、“プレミアムビール”を日本に浸透させたこちらを。厳選した素材、手間暇をかけた製法、徹底した品質管理で、深いコク・旨味と華やかな香りを堪能できる

2:【LIGHT】注目ブルワリーから人気のIPAを「一意専心/京都醸造」
前述した京都発の注目マイクロブルワリーより、定番で作っているIPAスタイルがこちら。醸造大国ベルギーの特徴と創意工夫のアメリカの技術を融合、柑橘系のホップの味わいとスパイシーな酵母の滋味を組み合わせており、じっくりと味わいたい

3:【MEDIUM】苦味を効かせた赤いビール「帝国IPA/ベアード」
ベアードは、2000年に静岡に誕生した小規模醸造界では古株のひとつ。醸造家の個性を突き詰めたビールは、長きにわたり支持を集めている。こちらは、IPAのなかでもアメリカンスタイル。適度に立つ苦味が、香りを引き立てている

4:【MEDIUM】WBC常連による日本では希少な傑作「ヘラー・ヴァイツェンボック/プランク」
ドイツのバイエルン州に構えるプランク醸造所は、栄えあるワールド・ビア・カップ(WBC)の受賞常連ブルワリー。小麦を使用したヘラー・ヴァイツェンボックもまた受賞暦豊富な銘柄だ。アルコールは7.8度と高めながら、香りが高くて飲みやすい

5:【DARK】リアルエールの名門が作る深い味わい「スタウト/箕面ビール」
自然の豊かな大阪・箕面で作られる、無ろ過・非熱処理のビール。酵母が残るため、より豊かな味わいが得られる。このスタウトは、さらにコーヒーやビターチョコを彷彿とさせるロースト感とドライな後味で、やみつきなること請け合い



〜今さら聞けないビール用語〜

【ボディ】
口に入れ、飲み込む時の抵抗感の表現。軽いものはライトボディ、中間のミディアムボディ、最も重いものをフルボディと呼ぶ。甘さ、アルコール度数、タンパク質が含まれる度合いによって決まる。

【IBU】
ビールの苦味を示す単位。1ℓ中に含まれる苦味成分、アルファ酸の含有量で示す。多いほど苦味は強い。一方、モルトやアルコールによる甘み成分が多くなるにつれ、IBU値が高くても、苦味を感じにくくなる。

【TAP=タップ】
厳密にはビールサーバの注ぎ手を示す言葉だが、転じて生樽で提供するビールそのものを指すようになった。最近トレンドとなっているタップルームとは、数多いTAPを揃えたビアバー形態の店のこと。なかには、タップルーム自体がブルワリーとして醸造をしているところもある。




●教えてくれた人

藤原ヒロユキさん≪ビアジャーナリスト協会代表≫

小規模醸造の解禁から地ビールの魅力にハマり、ビアジャーナリストとして活動開始。2010年にビアジャーナリスト協会を設立し、日々ビールの魅力を伝えている。著書多数。実はプロのイラストレーターでもある