こんばんは、東京・杉並区の外れでbarをやっている阿部と申します。この連載では、普段ウイスキーをあまり召し上がらないという貴女を、めくるめくウイスキーの世界に誘わせていただきます。
ウイスキーはウンチク好きの男のお酒、と敬遠しがちな貴女のためにウイスキーの魅力をイメージでお伝えしていきましょう。本日、ご紹介したいのはウイスキー界の「おそ松さん」とでも呼びたい、「ジョニーウォーカー」シリーズです。

「シングルモルト」って何?

ウイスキーとひと言にいってもいろいろな種類があります。前回おすすめした「グレンフィディック12Y」はシングルモルトという種類でした。シングルモルトとは、「ひとつの蒸留所で」「麦を原料に」したウイスキーのみで造られたものを指します。

ウイスキー界の「おそ松さん」こと、「ジョニーウォーカー」シリーズはブレンデットウイスキーという種類です。ブレンデットウイスキーとは、複数の蒸留所で造られたウイスキーを混ぜ合わせてひとつの商品にしたもの。

この「ブレンディング」を始めたのが、「ジョニーウォーカー」の創業者であるジョン・ウォーカー。実はウォーカーさん、なかなかすごい人物なんです。

14歳の少年が始めた食料雑貨店

「ジョニーウォーカー」というブランドの起源は、1820年に彼がスコットランドのキルマーノックで小さな食料雑貨店を始めたことにさかのぼります。この時、なんと弱冠14歳。

というのも、父親が他界してしまったため、引き継いだ農場を売却し、それを元手に開業したのです。原稿用紙からウイスキーまで扱っていた彼の店は大成功。すると、ウォーカー青年は、「安定した品質の商品を提供したい」と考えるようになり、紅茶のブレンディングをヒントにウイスキーのブレンディングを始めたのです。

その後、息子、孫、そしてマスターブレンダーと呼ばれる職人たちが彼の意志を受け継ぎ、現在200以上の国で年間1億2000万本も売れている「ジョニーウォーカー」というブランドができあがったのです。

村上春樹の小説にも登場

ちなみにこのウイスキー、村上春樹さんの小説にも登場します。『海辺のカフカ』のジョニーウォーカーなる人物がまさにそう。

赤いジャケットに蝶ネクタイというファッションで、ブーツを履きステッキを携える彼は、「ジョニーウォーカー」のシンボルであるストライディングマン(闊歩する紳士)そのものなんですよね。

そんな「ジョニーウォーカー」シリーズですが、レッド、ブラック、ダブルブラック、ゴールド、プラチナ、ブルーと6色のラベルが存在します(正確には他にもあるのですが、今回は一般的なものだけ)。

魅力溢れるジョニーウォーカー6兄弟

この6本を兄弟に例えると……。

ブルーは、大人の雰囲気全開のエリート長男

プラチナは、長男を目標に頑張る優秀な次男

ゴールドは、甘いマスクで気配りのできる三男

ブラックとダブルブラックは、双子かなぁ。ブラックは何事もそつなくこなすタイプ、ダブルブラックはちょっとヤンチャなタイプ

レッドは、若々しくて元気な末っ子

といった感じでしょうか。

エリートの長男から元気いっぱいの末っ子まで、年齢差のある名家の6人兄弟。

ストレートで飲みたい次男、ソーダ割りもOKな弟

その時々の気分によって、選べるのは嬉しいですね。

高級感のあるプラチナと一番普及しているブラックの2本だけ、味の方もサクッとご紹介しておきましょう。

まずはプラチナ。これは、18年以上の熟成からくるリッチな味わい。フルーツ煮やキャラメルのような甘味とアーモンドやバニラのニュアンスが溶け合います。そこにスコットランドのウイスキー特有のスモーキーさも多少加わり、複雑なとろみを感じさせます。やはり、ストレートやロックでゆっくり楽しみたいですね。

対してブラックは、オレンジなどの柑橘系フルーツとキャラメルのようなニュアンス。そこに滑らかなスモーキーさと、しっかりとしたスパイスが合わさり、ちょうどいい飲みごたえになります。ブラックはソーダ割りにも適しています。

「さすが、名門の兄弟」と納得できる共通点もありながら、一人ひとりのキャラはしっかり立っていて、なかなか楽しい6兄弟ですよ。

貴女はどの「ジョニーウォーカー」に興味を持たれましたか?

暑さで疲れた心身を、こんなウイスキーで癒してみてはいかがでしょう?

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(阿部政孝)

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