『ジャパンビーチバレーボールツアー2016』第4戦マイナビシリーズ(7月1日〜3日)が東京・お台場で行なわれた。

 注目の坂口佳穂(20歳)&鈴木悠佳子(28歳)ペアは、今季ツアー3大会目の出場。今回初の決勝トーナメント進出が期待されたが、過去2大会同様、惜しくも予選プールで敗退した。

 予選プール第1試合は、順調なゲーム運びだった。序盤はややもたついたものの、今大会の課題に掲げていたサーブを効果的に決めて試合の主導権を握った。相手チームのミスに助けられた面もあったが、坂口のスパイクでポイントを重ねて2セットを連取(21ー15、21−17)。このペアとしては、初めてセットを落とすことなく勝利を飾った。

 勝てば決勝トーナメント進出が決まる予選プール第2試合、相手は田中姿子(40歳)&藤井桜子(25歳)ペアだった。ともに日本代表の経験を持ち、技術、戦術的にも格上の実力ペア。今年のツアーでこれまで戦ってきたチームの中でも、最も手強い相手となる。それでも、成長を続ける坂口&鈴木ペアの、現在の力量を測るうえでは、絶好の相手とも言える。

 第1セットは、その強豪の前にあっさりと屈した。サーブで鈴木が狙われて、スパイクもコースを読まれてことごとく止められた。これまでの大会では、経験の浅い坂口が狙われ、鈴木がカバーにまわることがほとんどだったが、この試合では逆の形となった。そんな思わぬ展開には、「さすがに慣れておらず、戸惑った」と鈴木は振り返る。

 田中&藤井ペアは日頃から一緒に練習をこなしている相手。その分、坂口も鈴木も対戦前には、「(相手の長所も短所も)よく知っている」と難敵攻略に手応えを見せていたが、裏を返せば、それは相手も同じこと。手の内を知られている田中&藤井ペアに細かな対策を立てられ、その戦術にはまってしまったのだ。

 さらに、田中&藤井ペアが仕掛けてきたテンポの速い展開についていけず、焦りが生まれた。坂口&鈴木ペアはそのまま流れをまったくつかめずに、16−21で第1セットを落とした。坂口が言う。

「(田中&藤井ペアは)トスが低くて速い攻撃が多い。警戒していたけど、それに対応し切れなかった」

 第1セットの結果を受けて、ふたりはセット間に話し合い、第2セットではサーブ、スパイクのコースに変化をつける作戦に出た。これが奏功し、攻撃のリズムをつかむ。序盤からリードを許す状況にありながら、鈴木のサーブ、スパイクが効果を発揮してから、得点差をじわじわつめていった。そして終盤、ついに追いついて逆転。セットカウント23−21で奪って、1−1のイーブンに戻した。

 第2セットの勢いのまま、最終セットも坂口&鈴木ペアが先行。待望の決勝トーナメント進出がいよいよ見えてきた。が、その現実味が増したことで逆に硬くなったのか、徐々にサーブが甘くなって、ミスも目立ち始める。中盤以降は守勢に回り、セットカウント10−15で敗戦。予選プール突破はまたも果たせずに終わった。

「決めなくてはいけないところで決められなかった」

 試合後、坂口はそう語り、肩を落とした。

 これで、今季ツアー6試合を消化して2勝4敗という坂口&鈴木ペア。その戦績からは、目標達成にはまだ時間がかかりそうに見えるが、負けた4試合はすべてフルセットまでもつれ込んでいる。今回、田中&藤井の元日本代表ペアにも接戦を演じたことから、決勝トーナメントの舞台まであと一歩であることは間違いない。

 坂口が語る。

「(決勝トーナメント進出まであと少しとはいえ)フルセットで負けているのは、大きな課題。パス、トスの緻密さがもっと必要だし、精神的な部分も......。でも、ここを乗り越えたら、成長した証になると思う」

 また、坂口は今回、劣勢の中でもオーバーハンドトスを繰り出した。オーバーハンドトスはアンダーハンドトスよりトスの精度は上がるものの、反則を取られやすいプレー。世界レベルでは当たり前であっても、勝負どころで行なうには、技術と精神的な強さが要求される難易度の高いプレーだ

 しかし坂口は、「アンダーハンドに逃げるのではなく、オーバーハンドを粘り強くやり続けることが大切」と、そのプレーの重要性を理解し、果敢にチャレンジし続けていた。その姿勢からは、今後に向けての可能性を大いに感じる。

 今大会の前週には、リオデジャネイロ五輪のアジア予選がオーストラリアで行なわれたが、残念ながら、日本は男女とも出場権を逃した。これで女子は、2大会連続で五輪のコートには立てないことになるが、次の2020年東京五輪では開催国枠で最低1チームは出場できる。

 坂口の五輪出場を語るのはまだ早いかもしれないが、一歩一歩進んでいく先にその夢舞台は待っている。「トスには自信がある」と言い、オーバーハンドトスにこだわる勝気な面を持ち合わせる坂口。これからの4年、彼女がどんな成長を見せてくれるのか、その過程をしっかりと見届けたい。

小崎仁久●文 text by Kosaki Yoshihisa