7日、英国のEU離脱国民投票を取材した梅原季哉朝日新聞編成局長補佐(前欧州総局長=写真右)と鶴原徹也読売新聞編集委員(元欧州総局長)が日本記者クラブで「英離脱とEUの将来」と題して講演した。

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2016年7月7日、英国のEU離脱国民投票を取材した梅原季哉朝日新聞編成局長補佐(前欧州総局長)と鶴原徹也読売新聞編集委員(元欧州総局長)が日本記者クラブで「英離脱とEUの将来」と題して講演した。両氏とも、大英帝国の伝統から離脱してもそんなに大ごとにはならないという意識を英国民が持っていた、と指摘。英国の離脱時期について、鶴原氏は来年の仏大統領選挙終了後までは交渉が始まらず、「19年ぐらいに関係がどうなるか見えてくる」との見通しを明らかにした。その上で「何もなかったような状態が続けばいいなあと思う人々が英国内にも欧州にも増えている」と述べ、次に英国総選挙が予定される2020年ごろまで“宙ぶらりん”の状態が続く可能性を示唆した。

<梅原氏>
英国の離脱派の「熱量」は明らかに残留派を上回り、「信仰」に近いものがあった。ところが勝利の目標を達成したものの、寄り合い所帯なので、EUとの交渉に際しての考えもなく混乱している。

一方、英国では大英博物館館長がドイツ人、イングランド銀行総裁はカナダ人と、もともと国際化されている。残留派は離脱の経済的なデメリットを強調するだけで、戦術的に甘さもあった。メディアの論調も偏っており、特に離脱派のタブロイド大衆紙は読者の感情に訴える扇情的な内容が目立った。大英帝国はグローバル化の本家という意識が国民の間に強く、かつての栄光へのノスタルジアから「英国を取り戻す」との主張に共鳴した人も多かった。

<鶴原氏>
英国が正式に「離脱」するまではずっとEUに加盟している状態が続く。離脱を通告してから2年以内に決定されるというのが条約上の規定。9月に選出される新しい首相に通告時期は委ねられるが、新首相はすぐには離脱を通告しないだろう。というのも、ジャック・アタリ氏(仏経済学者)は「これで離脱したら容赦しない」ときつく言っていたが、フランスも欧州議会も同じ考えだ。逃げて行く英国にいい顔をすると、大したことがないと見て国民は離脱してもいいという気分になる。フランスなどには離脱派が多いので各国にいる仏国民戦線など反EU派が勢いづいてしまう。

一方、来年春に仏大統領選挙がある。フランスは交渉が大統領選前に始まれば、フランス政府は(反EU派を利さないよう)意地悪をするといわれる。英国に良い条件で離脱されることを封じる戦術だ。一方で、交渉術に長けている英国は、離脱通知は期日の規定がないので、仏大統領選までは通知しないだろう。しかもドイツ、オランダの選挙も来年に実施される。次の英国選挙は2020年。17年ぐらいに交渉がスタートし19年ぐらいに関係がどうなるか見えてくると見る人が多い。日本メディアも大騒ぎしたがそんなにドラスティックには動かない。今、何もなかったような(宙ぶらりんの)状態が続けばいいなあと思う人々が英国内にも欧州にも増えている。(八牧浩行)