マリナーズ時代のイチロー【写真:田口有史】

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「成功するか疑問視されていた」イチローが「並外れたプレーヤー」に

 マーリンズでメジャー16年目のシーズンを送っているイチロー外野手。今季は打率.337、出塁率.411、得点圏打率.435と好調を維持。海を渡ってから積み上げてきた安打数は2990本となり、3000安打の金字塔まで「10」と迫っている。

 米スポーツ専門サイト「スポーツ・オン・アース」は、メジャーにおけるイチローの功績を分析する記事を掲載。「並外れたプレーヤー」である背番号51は、異なる打撃スタイルでアメリカの野球文化に大きな影響を与えた存在だとしている。

 記事ではまず、「イチロー・スズキが鳴り物入りで2001年に(メジャーに)やって来た際、彼が成功するかは疑問視されていた。アメリカで活躍した日本人スター打者はいなかったのだ」と指摘。当時、イチローに対しては懐疑的な見方もあり、その独特の打撃スタイルも未知数のものと見られていた。

 だが、イチローは結果で周囲を黙らせてきた。初年度にリーグトップの打率.350、242安打、56盗塁をマーク。メジャー史上2人目となるリーグMVP&新人王のダブル受賞を果たした。その年、マリナーズはメジャー最多タイ記録となるシーズン116勝をマーク。イチローは、その先頭に立っていた。

「彼は並外れたプレイヤーであるだけでなく、全く異なった点で抜きん出ていた」

 04年には262安打のシーズン最多安打記録を樹立し、2010年まで10年連続シーズン200安打をマーク。パワー全盛のメジャーにおいて、ヒットを量産スタイルで新たな風を吹かせた。スピードを生かした内野安打は、メジャーの内野手にとって脅威となった。

「異なったスポーツ文化が他のスポーツ文化にどのような影響を与えるのか、イチローは良い例になるだろう。彼は全く異なったタイプの選手だった。彼は長打を狙う選手ではなく、安打を稼ぐ選手だ。また普段、三振もしなかった。四球を選ぶためにボールを選ぶこともしなかった。優れた走者であり野手。彼は並外れたプレイヤーであるだけでなく、全く異なった点で抜きん出ていた」

 イチローはあえて自分のスタイルを貫き、アメリカの野球文化に影響を与えたと特集では分析。イチローが打撃練習で柵越えを連発することは有名な話だが、試合では長打を狙うことはなく、ヒットを積み重ねることでチームに貢献し、地位を確立してきた。

「1920、30年代にはただヒットを狙って打つ選手は多くいた。ロイド・ワーナーやサム・ライスは高打率を誇った選手であり、四球を選ばず長打狙いの打撃をすることはなかった」

「もし高校を出てマイナーリーグのキャンプに行く若者が(スタン・)ミュージアルのようなスイングをしていたら、コーチたちはそのおかしなスイングを変えようと押しかけてくるだろう」

「2001年までホームランが全てであり、三振は恥ずべきことではなかった」

 記事では、同じように独特のスタイルでメジャー史に残る偉人となったワーナー、ライス、ミュージアルら過去の名選手も例に挙げ、イチローの偉大さを強調。そして、ホームランが重視されていた近代野球に、日本が生んだ安打製造機が一石を投じたと指摘している。

「活躍できる打ち方を身につけなければならないと多くの人々が言う。かつて偉大な打者が異なった打撃スタイルで成功する方法を見せてくれた。2001年までホームランが全てであり、三振は恥ずべきことではなかった」

イチローは例外的な選手として見られていた。恐らくそうだっただろう。2004年のイチローのように、メジャーで.372を打てるものは多くない。だが、シングルをヒット狙った打撃スタイルを採用すれば、より多くの若手選手は.300打てるのではないだろうか?」

 今季は日米通算安打数でピート・ローズを超え、メジャー通算3000安打にも迫っているイチロー。有資格1年目での米国野球殿堂入りも確実とされている。その実績が偉大なものになるほど、メジャー史の中で欠かすことのできない、重要な存在となるのだろう。